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カンヌ最高賞受賞、50代で人生大逆転のフィリピン俳優ドリー・デ・レオン

 「第75回カンヌ国際映画祭」でパルムドールを受賞し、「第95回アカデミー賞」にも作品賞をはじめ、監督賞、脚本賞の主要3部門でノミネートされている映画『逆転のトライアングル』が本日(23日)より劇場公開。本作では、サバイバル能力抜群の清掃婦を演じたフィリピンの俳優ドリー・デ・レオンが注目を集めているが、キャスティング時には、日本の故・樹木希林さんの名前も候補に挙がっていたという。

映画『逆転のトライアングル』(公開中) Fredrik Wenzel (C) Plattform Produktion

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 監督のリューベン・オストルンドは、『フレンチアルプスで起きたこと』(2014年)で「第67回カンヌ国際映画祭」ある視点部門審査員賞、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(17年)で「第70回カンヌ国際映画祭」最高賞であるパルムドールを受賞しており、カンヌ史上3人目の2作品連続パルムドール受賞という快挙を果たしたスウェーデンの奇才。

 驚くべき人間観察眼とセンス抜群のブラックユーモアで、毎度観客を絶妙に気まずい気分にさせる監督が選んだ次なる標的は、“ファッション業界とルッキズム、そして現代階級社会”。問題を痛烈に炙り出す手腕も健在だ。

 主演は、『キングスマン:ファースト・エージェント』(21年)のハリス・ディキンソンと、残念ながら本作が遺作となってしまったモデル出身のチャールビ・ディーン。名優ウディ・ハレルソンも参加し、無人島で弱肉強食のサバイバルが繰り広げられる。

 物語は、モデルで人気インフルエンサーのヤヤと、若干落ち目の男性モデルカールの美男美女カップルが、豪華客船クルーズの旅に出かけることから始まる。リッチでクセモノだらけの乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。しかしある夜、船が難破。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な、船のトイレの清掃婦だった。

 難破した豪華客船の乗客たちがたどりついた無人島でのあるシーンでは、無人島に漂着して一夜を過ごしたあと、避難ボートに常備されていたスナックと水を発見したセレブリティ一行がしばしの休憩をとる中、船の清掃婦として働いていた外国人労働者のアビゲイル(ドリー・デ・レオン)が、黙々と優れたサバイバル能力を発揮。

 ひとたび海に潜ったかと思えば素手でタコを捕らえた彼女を前に、陸のセレブたちは「ブラヴォー!」「手づかみで?」「すげえ女だ」と暢気な感想を口にしながら、ただスナックをボリボリと頬張るだけ。火もおこせず、タコの下処理すらできない彼らに、この後待ち受ける試練とは?

「第75回カンヌ国際映画祭」でパルムドールを受賞した時の様子。左から2人目がドリー・デ・レオン(C) Doreen Kennedy

「第75回カンヌ国際映画祭」でパルムドールを受賞した時の様子。左から2人目がドリー・デ・レオン(C) Doreen Kennedy

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 陰の主人公ともいえるアビゲイルを演じたドリー・デ・レオンは、19年公開のブリランテ・メンドーサ監督の『評決』でフィリピンアカデミー賞助演女優賞を受賞した実力を持ち、国際的デビュー作となった本作でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされ、本人もまた人生の大逆転を果たすこととなった。

 50代のドリーだが、本作のオーディションから正式に出演が決まるまでの2年もの間、体力が必要とされるアビゲイルを演じることを想定し、ルームランナーで体を鍛えていたと明かしている。素潜りのシーンでは、カメラに映らないように長時間潜っている必要があったため、ポケットに石を入れて泳ぎ続けなければならなかったそう。

 また役作りについて、彼女自身でアビゲイルの人物像を創造したと語っており、「アビゲイルは少し悲しい過去を持っていると思う。貧しい家庭に生まれて、母国のフィリピンを離れ、海外で長いこと暮らしながら外国人たちの世話をしてきた。海沿いの田舎町で育ったから、魚の取り方も火のおこし方も知っている。そしてそんな生活の中、内に秘めてきた怒りが、映画終盤での彼女の行動につながる。『奉仕されて当然』と思っている人たちを許せない彼女は、彼らへの復讐に乗り出すの」と、キャラクターと行動を分析している。

 映画後半、アビゲイルはサバイバル能力を駆使してヒエラルキーの頂点に立つことになるが、カンヌ映画祭の上映会では、その見事な逆転劇に客席から「ブラヴォー!」と歓声と拍手が沸き起こり、さながらアメフトの試合のような盛り上がりを見せていたそう。日本の劇場からも喝采が聴こえてきそうだ。

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