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「住みたい街」が“憧れ”から“現実”へ移り変わる背景 ステータスよりも“賃料&利便性”重視へ

 メディアでもすっかりおなじみになった各社が展開する“住みたい街ランキング”。人々の生活に寄り添った世相を映す鏡として毎年注目されているなか、LIFULL HOME’Sの2023年版『みんなが探した!住みたい街ランキング』が発表され、借りて住みたい街として「本厚木」が3年連続1位を獲得した。かつては白金や恵比寿など“憧れ”の街が上位にランクインしていたが、近年は賃料や生活利便性などの“実利”が重視される傾向がある。その背景を探る。

LIFULL HOME’Sの『住みたい街ランキング』で1位の本厚木LIFULL HOME’Sの『住みたい街ランキング』で1位の本厚木

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◆賃料水準と生活利便性を重視…「借りて住みたい街」で“本厚木”が3年連続1位の背景

 いくつかの住宅メーカーや不動産会社からリリースされている「住みたい街ランキング」。そのなかでもLIFULL HOME’Sによる「借りて住みたい街」「買って住みたい街」ランキングは、アンケート調査ではなく、問い合わせ数を駅ごとに集計することで、現実的なユーザーの意識を反映するデータとして注目されている。2021年度では、それまであまり知名度が高くなかった「本厚木」が1位になったことも話題になった。

 その最新版となる2023年度「借りて住みたい街」では、「本厚木」が3年連続1位となった。僅差で「大宮」「八王子」「柏」が続いた。今回も郊外エリアが上位を占め、TOP10で23区内は6位の「葛西」のみ。コロナ前まで4年連続1位だった「池袋」は、3年連続で順位を落とし、今回は12位。それでも都心のターミナル駅としては最上位になった。

 ここ数年、上位にランクインする街の共通点をLIFULL HOME’S総研チーフアナリストの中山登志朗さんは「東京都心のターミナル駅まで乗換なしのダイレクトアクセスが可能であり、駅周辺に繁華性の高いエリアが広く、飲食や衣料、雑貨など生活利便店がたくさんあることで、駅前で大体の用事は済む。言い換えるとリモートワークに向いている街です」と解説する。

 加えて、郊外エリアの人気の街には、都心と変わらないクオリティで生活ができる上に、都心と比較して賃料水準が低いことがある。平均賃料で「本厚木」は「池袋」の半額ほどになり、生活コストが大きく落とせて、生活利便性には大きな変わりがない。そういったエリアで快適に住むことが、街を選ぶ際に優先される傾向が、この数年続いている。

◆憧れ要素が強かった“街ありきの家探し”構造が消滅 現実的に住めるか否か?

 もちろんその背景には、いまの社会情勢がある。コロナ禍でリモートワークやオンライン授業が一般的になり、行動制限がある 都心を脱出したいと考える人が増えた 月に数回会社や学校に行くほどになり、賃料が高い都心に住む理由が少ない。社会情勢も収入も不安定になるなか、倹約したい特に若い世代は、郊外の安いエリアに生活拠点を移そうとした。中山さんは「都心人気が相対的に下がって、郊外エリアが上がったのが、コロナ禍の賃貸市場の大きな流れ」と語る。コロナ禍で住みたい街への意識が、大きく変わったことがうかがえる。

 では、コロナ共存社会の今後はどうなるのか。中山さんは、この先しばらく大きくは変わらないと予測する。

「コロナ禍とは別の理由があります。円安やサプライチェーンの逼迫によって、消費者物価が上昇し、生活が苦しくなっていると実感する人が増えています。そうなると、生活費のなかで負担割合が大きい賃料を下げることで、生活費を捻出するようになる。この先も円安傾向は長期的に見ると変わらず、消費者物価も上昇していく可能性が高い。それであれば生活拠点を郊外に置くほうが当面はよい。リモートワークを継続前提にすると都心に戻る理由は少ない。次回以降の傾向としても、当面は上位に郊外エリアが残る可能性が高いでしょう」

 そうした社会情勢から顕著に現れているのが、住みたい街への意識の変化だ。かつてはシロガネーゼ(東京都港区白金)という言葉もあったが、閑静な住宅街でありオシャレなイメージのある都心の白金や恵比寿、三軒茶屋などは、憧れの街であるとともに住みたい街としても人気を博した。しかし、現状のランキングを見ると「住みたい街=憧れの街」という意識はなくなっているように見える。昨今の住む家を探す際の“憧れ”要素について、中山さんは「だいぶその意識は薄れてきています」と語る。

 駅名として名が通った街や、オシャレな飲食店や服飾店がたくさんある街は、それが街の知名度や魅力といったカラーとしてあり、そこに住むことでオシャレな生活が送れる、憧れのライフスタイルを楽しめるという意識があった。そういった街に住むことを前提に家を探すのがかつての“家探し”であり、それを中山さんは「その街に住みたいからそこの物件を探す、“街ありきの家探し”というわかりやすい構造になっていました」と振り返る。それがコロナ禍以降は一変する。

「いまも家探しに憧れ要素が全くなくなったわけではありません。住みたい街を選ぶ上で、どこに住むことで便利になるのか、この街に住んでいることでステータスを持てるか、ということはひとつのポイントになります」とする。その一方で、「ところがコロナ禍以降は、そういった街に住むことの自負やステータス性よりも、利便性や生活の効率を最優先にする“実利を選ぶ”傾向が強まっています。また、コロナ禍で家で過ごす時間が増え、娯楽時間も含めた家にいる時間の快適さや生活の豊かさを求めて、郊外志向になることもあります」と分析する。かつてのような憧れ要素は後退し、現実的に住むことを前提とした価値基準へと変化している。

◆“風呂なし物件”若者人気の背景には、商店街などの地域コミュニティへのニーズの増加が寄与

 そんな家探し事情のなかで興味深い傾向もある。ファッションや雑貨などでは昭和レトロがブームになっているが、若者たちの間では“風呂なし物件”をあえて探す人が増えているという。若年層の貧困は現在社会のひとつの社会課題としても取り上げられているが、中山さんはそのニーズは賃料や生活コストを抑えることから生じているだけではなく、ライフスタイルの嗜好によるものもあるとする。

「風呂なし物件に住むことがネタになるとおもしろがっている人もいると耳にしました。実際に友人が住んでいることや、メディアで話題になっていることから影響される連鎖が起きているようです。古い物件が圧倒的多数を占めていることから、風呂なし物件の専門サイトで集まった人たちが建物をリフォームするイベントを行ったり、仲間になって楽しんでいて、趣味に近いところがあります」

 一方、コミュニティを求める人たちもいるという。コロナ前は、会社や学校といったコミュニティに属していることで、家に帰ってからは1人で良いという若者が多かった。しかし、コロナ禍で身近な居場所のつながりが薄れたり、当たり前だったコミュニケーションが失われるなか、その代わりとなったのが地域コミュニティのようだ。

「地域コミュニティに参加したいと考える人が増えてきました。その中心になるのが、商店街や居酒屋、カフェ、銭湯など。そのために繁華性の高い商店街の近くのアパートを探す人もいます。それまでに接したことのない高齢者や、年代や属性の異なる人たちのコミュニティのおもしろさを楽しむ若い人が、コロナ禍で増えている印象があります」

 こうして見ると、コロナが時代の断層になり、人々が住みたい街も志向するライフスタイルも多様化していることがわかる。アフターコロナに向かいつつあるなか、住みたい街への意識はどうなのか。中山さんは、コロナ以前は上位常連であり、いちど順位を落としてからいち早くじわじわと戻している「川崎」に注目する。特有の立地条件が、前述のようなニーズの変化と合致している部分があるようだ。3年連続1位の“本厚木”に変わる新たな街が登場し、話題を巻き起こすことにも期待したい。

(文/武井保之)

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