2022年、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源頼朝の娘・大姫の許嫁となる木曽義仲の嫡男・義高を演じた歌舞伎俳優の市川染五郎(17)。その儚さと凛とした力強さの共存が大きな反響を呼んだ。続けて話題を呼びそうなのが映画『レジェンド&バタフライ』への出演。木村拓哉が織田信長役として主演を務める本作では、信長の小姓・森蘭丸に扮した。歌舞伎俳優として伝統芸能に向き合う染五郎にとって、映像の仕事とはどんな位置づけなのだろうか――。
■木村拓哉主演映画への出演は「とても大きな縁を感じています」
『コンフィデンスマンJP』シリーズや、現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』などの脚本家・古沢良太が書き下ろした織田信長と正室・濃姫との30年に渡る物語である『レジェンド&バタフライ』。染五郎は、本能寺の変で信長が倒れる最期まで行動を共にしたと言われている小姓・森蘭丸を演じた。
「蘭丸は10代で命を散らしてしまう人物。演じられる年齢も限られていると思うので、10代のうちに演じられたらな…と思っていた役だったので、お話を聞いたときはとてもうれしかったです」。
劇中での蘭丸は、信長とともにするシーンがほとんどであり、当然のことながら木村と現場をともにする時間がもっとも長かった。
「木村さんは、祖父(二代目松本白鸚)や父(十代目松本幸四郎)、特に叔母(松たか子)がたくさん共演させていただいている方。今回木村さん主演の作品でお話をいただいたというのは、とても大きな縁を感じています。父から、木村さんは常に現場でいろいろなところを見て、気にかけ、作品全体のことを考えている方だと聞いていたのですが、ご一緒させていただき同じ印象を持ちました。現場を引っ張るとはこういうことかと、とても勉強になりました」。
■歌舞伎のなかに日常があるという感覚
歌舞伎俳優として作品を積み重ねていくなか、2022年は大河ドラマ、2023年は時代劇大作映画と、映像作品への出演が続く。
「舞台と映像を経験させていただき、全然違うものだなと感じています。どちらも魅力がありますが、自分のなかでは自然と分けて考えているような気がします」。
一方で、相乗効果があるという実感も持った。
「たとえばあるシーンの台本を読んだとき、映像と舞台だったらそれぞれどう演じるのかを考えることで、表現の幅が広がると思うことはあります。映像だと自分の顔がアップになったりしますよね。それは舞台にはないことなのですが、全身で表現できる分、(舞台では)違った見せ方ができるな、とか」。
映像には映像の、舞台には舞台のおもしろさがあるという染五郎。「まったく別のもの」という認識は持ちつつも「映像作品に出ているときでも、100%歌舞伎と切り離して考えることは無理だなと感じています。どこか歌舞伎のことを考えてしまっているんですよね」と語る。
「それは僕だけではなく、歌舞伎俳優の先輩方も皆さんそうかと思うのです。歌舞伎以外の時間が日常というのではなく、歌舞伎のなかに日常があるという感覚です。もちろん、プライベートな時間の中でYouTubeを見たり、妹とゲームしたり、犬と遊んでいたりする時は、歌舞伎のことを考えない時間だと思いますが、それでも僕にとってはやっぱり歌舞伎俳優でいること自体が日常なのだと思います」。
■美しいという評価にも「なんでだろう、不思議だな」
作品自体を俯瞰でみることも意識しているという。
「普段の生活のなかでも『こういう部分は舞台の演出に取り入れたらおもしろいのではないか』ということを常に考えています。お客様が驚いたり、喜んだりする姿を見ることはとてもうれしいので。いつかは舞台を作ってみたいという思いもあります」。
幼少期からこうした視点を持っていたという染五郎。それは歌舞伎という世界ならではのことのようだ――。
「古典の作品には演出家がいないので、基本的に主役をされる方が作品全体を見て作っていくのです。そうなるためには、ただ自分の役を演じるだけではなく、やっぱり先輩方の芸を観て、真似て……というところから始まって、作品自体の解釈を自分のものにしていかなければいけない。その意味で、しっかりと舞台全体を見るということは自然と意識していることかもしれません」。
現場で対峙した木村の背後には炎が出ているような強いオーラがあったと話していた染五郎。自身も『鎌倉殿の13人』での源義高、そして本作の蘭丸と、17歳ながらも美しく儚い、妖艶なオーラを醸し出していた。
「自分ではそういう部分は意識したことはないんです。そういうお声をいただくことはあって、うれしいのですが、そのたびに『なんでだろう、不思議だな』と感じてしまいますね。観てくださった方の評価がなんとも腑に落ちないです(笑)」。
歌舞伎俳優という軸を持ちつつも、さまざまなジャンルで役柄の幅が広がってきている。
「この1〜2年、自分が想像もしていなかったような経験をたくさんさせていただきました。これからもどんな経験が待っているのか、いまは本当に想像できないのですが、ひとつひとつ丁寧に、目の前にあることにしっかりと向き合っていきたいなと思っています」。
(取材・文:磯部正和)
■木村拓哉主演映画への出演は「とても大きな縁を感じています」
『コンフィデンスマンJP』シリーズや、現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』などの脚本家・古沢良太が書き下ろした織田信長と正室・濃姫との30年に渡る物語である『レジェンド&バタフライ』。染五郎は、本能寺の変で信長が倒れる最期まで行動を共にしたと言われている小姓・森蘭丸を演じた。
「蘭丸は10代で命を散らしてしまう人物。演じられる年齢も限られていると思うので、10代のうちに演じられたらな…と思っていた役だったので、お話を聞いたときはとてもうれしかったです」。
劇中での蘭丸は、信長とともにするシーンがほとんどであり、当然のことながら木村と現場をともにする時間がもっとも長かった。
「木村さんは、祖父(二代目松本白鸚)や父(十代目松本幸四郎)、特に叔母(松たか子)がたくさん共演させていただいている方。今回木村さん主演の作品でお話をいただいたというのは、とても大きな縁を感じています。父から、木村さんは常に現場でいろいろなところを見て、気にかけ、作品全体のことを考えている方だと聞いていたのですが、ご一緒させていただき同じ印象を持ちました。現場を引っ張るとはこういうことかと、とても勉強になりました」。
■歌舞伎のなかに日常があるという感覚
歌舞伎俳優として作品を積み重ねていくなか、2022年は大河ドラマ、2023年は時代劇大作映画と、映像作品への出演が続く。
「舞台と映像を経験させていただき、全然違うものだなと感じています。どちらも魅力がありますが、自分のなかでは自然と分けて考えているような気がします」。
一方で、相乗効果があるという実感も持った。
「たとえばあるシーンの台本を読んだとき、映像と舞台だったらそれぞれどう演じるのかを考えることで、表現の幅が広がると思うことはあります。映像だと自分の顔がアップになったりしますよね。それは舞台にはないことなのですが、全身で表現できる分、(舞台では)違った見せ方ができるな、とか」。
映像には映像の、舞台には舞台のおもしろさがあるという染五郎。「まったく別のもの」という認識は持ちつつも「映像作品に出ているときでも、100%歌舞伎と切り離して考えることは無理だなと感じています。どこか歌舞伎のことを考えてしまっているんですよね」と語る。
「それは僕だけではなく、歌舞伎俳優の先輩方も皆さんそうかと思うのです。歌舞伎以外の時間が日常というのではなく、歌舞伎のなかに日常があるという感覚です。もちろん、プライベートな時間の中でYouTubeを見たり、妹とゲームしたり、犬と遊んでいたりする時は、歌舞伎のことを考えない時間だと思いますが、それでも僕にとってはやっぱり歌舞伎俳優でいること自体が日常なのだと思います」。
■美しいという評価にも「なんでだろう、不思議だな」
作品自体を俯瞰でみることも意識しているという。
「普段の生活のなかでも『こういう部分は舞台の演出に取り入れたらおもしろいのではないか』ということを常に考えています。お客様が驚いたり、喜んだりする姿を見ることはとてもうれしいので。いつかは舞台を作ってみたいという思いもあります」。
幼少期からこうした視点を持っていたという染五郎。それは歌舞伎という世界ならではのことのようだ――。
「古典の作品には演出家がいないので、基本的に主役をされる方が作品全体を見て作っていくのです。そうなるためには、ただ自分の役を演じるだけではなく、やっぱり先輩方の芸を観て、真似て……というところから始まって、作品自体の解釈を自分のものにしていかなければいけない。その意味で、しっかりと舞台全体を見るということは自然と意識していることかもしれません」。
現場で対峙した木村の背後には炎が出ているような強いオーラがあったと話していた染五郎。自身も『鎌倉殿の13人』での源義高、そして本作の蘭丸と、17歳ながらも美しく儚い、妖艶なオーラを醸し出していた。
「自分ではそういう部分は意識したことはないんです。そういうお声をいただくことはあって、うれしいのですが、そのたびに『なんでだろう、不思議だな』と感じてしまいますね。観てくださった方の評価がなんとも腑に落ちないです(笑)」。
歌舞伎俳優という軸を持ちつつも、さまざまなジャンルで役柄の幅が広がってきている。
「この1〜2年、自分が想像もしていなかったような経験をたくさんさせていただきました。これからもどんな経験が待っているのか、いまは本当に想像できないのですが、ひとつひとつ丁寧に、目の前にあることにしっかりと向き合っていきたいなと思っています」。
(取材・文:磯部正和)
2023/01/30