22日に最終回を迎えたフジテレビ系木曜ドラマ『silent』(毎週木曜 後10:00)が大きな話題となっている。民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」では、第1話で443万再生、第2話では489万再生と、単話での配信後1週間の見逃し配信再生数の記録を大きく塗り替えると、さらに第4話で582万再生と大幅に更新。“世帯視聴率”という指標とは違う評価で作品の存在価値を示している。TVer初完全オリジナル番組『最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜』では『silent』のプロデューサーである村瀬健氏が講師として登場し、誕生秘話や裏話なども前編後編を通じ余すことなく語られた。そんな快進撃の秘密「チームの総合力の勝利」について話を聞いた。
■目黒くんは「お芝居をしっかりやりたい人なんだろうな」と思った
ドラマ『silent』は、主人公・青羽紬(川口春奈)が、突然別れを告げられた高校時代の恋人・佐倉想(目黒蓮)と、音のない世界で出会い直すラブストーリー。脚本を昨年のフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞したばかりの新人・生方美久が務め、演出を『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』や『うきわ ―友達以上、不倫未満―』などの風間太樹監督が担当している。
――新人の脚本家起用、音のない世界の表現など、とてもチャレンジングな試みが多い作品。演じる俳優さんたちも難易度の高いように感じましたが、川口春奈さんや目黒蓮さんを本作に起用した理由を教えてください。
村瀬氏:「冬のラブストーリーを作る」という企画と、「川口春奈さんと目黒蓮さんでラブストーリーをやりたい」という思いが別途で同時に浮かんでいて、それを合わせて生まれたのが『silent』でした。あの2人でしかできないもの、いかに2人の良さというものを引き出せるかという形で、生方さんと脚本を作っていきました。だから、2人とも“ありのまま”でやっていただければ良かったんですが、実際は僕の想像を軽々と超えてくれました。
――どういった部分が素晴らしかったと感じましたか?
村瀬氏:演技力や表現力はもちろんですが、たたずまいですね。立っているだけで、『silent』の世界観を表現できる役者だなと思いました。
――川口さんは作品の経験も多く、さまざまなキャラクターを演じていますが、「目黒さんでドラマをやりたい」と感じたきっかけはあったのでしょうか?
村瀬氏:起用のきっかけとしては、何かの作品を観て「この演技がいいな」と思ったわけではないんです。まずひとつはSnow Manというアイドルグループにいながら、目黒くんはアイドルっぽくないというか、朴訥(ぼくとつ)とした感じが役者としてとても魅力に感じたんです。
――なるほど。
村瀬氏:もうひとつは、フジテレビで放送された『教場II』や『消えた初恋』での演技を観て、勝手ながら「この人はお芝居が好きなんだろうな」と感じていました。この人だったら、今回の難しい役でも、チャレンジしてしっかり向き合ってくれるだろうなという直感がありました。お会いしてみて語り合う中で、想像していた通り芝居に対して熱を持っていることがわかって。あまりにもこちらの意図することと符号するので、僕は初対面で泣いちゃったんですよ(笑)。
■新しいドラマの価値基準を作った『silent』
――キャスティグは感覚でされることが多いんですか?
村瀬氏:そうですね。『キャラクター』という映画のプロデューサーを務めたとき、SEKAI NO OWARIのFukaseくんに殺人鬼の役をやってもらったんですね。あれも彼を見ていてピンときて、すぐお話をさせていただきました。ドラマにおけるプロデューサーの一番大きな仕事は、“企画”と“キャスティング”だと思っているので、いつも「いい人いないかな」というアンテナを張っています。タクシーのCMとかでも、気になる俳優さんがいたらすぐに検索して調べるようにしていますよ。
――川口さん目黒さんはもちろん、戸川湊斗役の鈴鹿央士さん、桃野奈々役の夏帆さん、春尾正輝役の風間俊介さんら、素敵なキャストたちが盛りだくさんですよね。
村瀬氏:本当に奇跡だと思います。『silent』って総合力の勝利だと思っていて。脚本がよくて、演出がよくて、照明がよくて、音楽がよくて主題歌がいい。そしてキャストももちろん素晴らしい。そのなかでも渾身だったのが、想の母親・律子役の篠原涼子さんですね。数々の作品で主演を務める大スターなのですが、快く作品の船に乗っていただけた。みなさんが作品を愛してくれているからこそ起きた奇跡だと思います。
――放送終了後には、毎回Twitterでトレンド1位になるなど、SNSとの親和性も高い作品ですね。企画する際、SNSというものは意識されていたのですか?
村瀬氏:ドラマプロデューサーとしては、いち早くドラマとTwitterの相関関係みたいなものに注目して、早い段階からやってきた自負があります。2016年に放送された『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)というドラマのプロデュースもしていたのですが、いまだに『いつ恋』のTwitterはフォロワー10万人以上いるんですよ。あの時の体感が今回の『silent』に生きていると思います。
――今はみなさんスマホ片手にドラマを観るのが当たり前ですもんね。
村瀬氏:昔はプロデューサーとして、スマホを持ちながらテレビを観られるということに抵抗があったんです。でもいまは逆で、それが前提だと思っているから、いかに連動するかも大切な施策なのかなと。
――これまでは“世帯視聴率”でドラマのヒットが語られることが多かったですが、判断価値が変わってきたなと感じることはありますか?
村瀬氏:今回のそれは大きく感じましたし、『silent』の一番の功績はそこではないかと思っています。今年1月に放送された月9の『ミステリと言う勿れ』の見逃し再生回数がすごかったときに、社内でもしっかりと評価されたんです。でもあのドラマは視聴率も良かったんですよね。『silent』は、いわゆる世帯視聴率は振るわないのですが、個人やコア視聴率はしっかり取ったということで、しっかりと話題になっている。その意味で『silent』が、今後のドラマ作りの大きな可能性になった気がします。再生回数という基準で、民放地上波のドラマを作れる可能性が出てきたということなんですよね。
――大きな希望ですね。
村瀬氏:僕も大好きなドラマのひとつなんですけど、宮藤官九郎さんが脚本を手掛けた『木更津キャッツアイ』や、植田博樹プロデューサーの『SPEC』など、視聴率という指標にとどまらず、DVDがめちゃくちゃ売れて、映画もヒットしましたよね。今回それと似たことが再生回数という概念でも起こっているのかなと。もちろんテレビに携わる人間ですので、視聴率を取らなきゃいけないし、数字を見ると悔しい気持ちもありますが。
――最終回も終わり、ロスになるファンも多そうです。
村瀬氏:僕にとっての一番いいドラマって、登場人物たちが視聴者の心にずっと生きているものなんですよね。たとえば『北の国から』の純と蛍は僕の中でずっと生きているし、木更津に行けば、ぶっさんがいるんじゃないかと思ってしまう。最終回の後も、みんなの心のなかで『silent』のワールドがずっと残り続けてくれたらうれしいなと思います。
――どちらのドラマも“富良野”“木更津”と、地名がしっかり出てきますね。『silent』も“世田谷代田”が舞台ですが、意識されていましたか?
村瀬氏:そこは強くこだわった部分です。世田谷代田に来たら、紬と想を思い出してくれたら良いなと。
■TVer初のオリジナル番組出演は「ご褒美かな」
――TVer初の完全オリジナル番組『最強の時間割 〜若者に本気で伝えたい授業〜』で講師を務められましたね。
村瀬氏:「本当に僕でいいの?」という思いもありつつですが、「TVerに貢献しているご褒美かな」と、出演させていただきました。
――プロデューサーや映像の世界を目指す若い人たちに向けて講義をされていましたが、どんな人に観てもらいたいですか?
村瀬氏:つい心を許して“言っちゃいけない『silent』の裏話”などもしゃべってしまったので、“『silent』ロス”になっちゃってる人に是非観てほしいですね。先ほども話しましたが『silent』って、新しい評価基準の物差しを作ったことに意義があると思っているんです。
――なるほど。
村瀬氏:数字や結果はついてくるものでしかないのですが、『silent』の制作チームを結成するにあたって、いきなり新人の生方さんを抜擢したり、無理やりフジテレビにこのチーム編成で通したりと、いろいろなことを経て、こうしていろいろな人たちと共によい作品を作ることができました。僕みたいな人間でも仲間たちと一緒になにかができる……いろんな方に観ていただいて楽しい内容となっていると思いますが、とくに社会に出ることに不安を持っている人に観ていただいて「自分でも何かができるんだ」と思っていただけたらうれしいですね。
取材・文:磯部正和
TVer初の完全オリジナル番組『最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜』 https://tver.jp/series/sr89h78de9
■目黒くんは「お芝居をしっかりやりたい人なんだろうな」と思った
ドラマ『silent』は、主人公・青羽紬(川口春奈)が、突然別れを告げられた高校時代の恋人・佐倉想(目黒蓮)と、音のない世界で出会い直すラブストーリー。脚本を昨年のフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞したばかりの新人・生方美久が務め、演出を『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』や『うきわ ―友達以上、不倫未満―』などの風間太樹監督が担当している。
――新人の脚本家起用、音のない世界の表現など、とてもチャレンジングな試みが多い作品。演じる俳優さんたちも難易度の高いように感じましたが、川口春奈さんや目黒蓮さんを本作に起用した理由を教えてください。
村瀬氏:「冬のラブストーリーを作る」という企画と、「川口春奈さんと目黒蓮さんでラブストーリーをやりたい」という思いが別途で同時に浮かんでいて、それを合わせて生まれたのが『silent』でした。あの2人でしかできないもの、いかに2人の良さというものを引き出せるかという形で、生方さんと脚本を作っていきました。だから、2人とも“ありのまま”でやっていただければ良かったんですが、実際は僕の想像を軽々と超えてくれました。
――どういった部分が素晴らしかったと感じましたか?
村瀬氏:演技力や表現力はもちろんですが、たたずまいですね。立っているだけで、『silent』の世界観を表現できる役者だなと思いました。
――川口さんは作品の経験も多く、さまざまなキャラクターを演じていますが、「目黒さんでドラマをやりたい」と感じたきっかけはあったのでしょうか?
村瀬氏:起用のきっかけとしては、何かの作品を観て「この演技がいいな」と思ったわけではないんです。まずひとつはSnow Manというアイドルグループにいながら、目黒くんはアイドルっぽくないというか、朴訥(ぼくとつ)とした感じが役者としてとても魅力に感じたんです。
――なるほど。
村瀬氏:もうひとつは、フジテレビで放送された『教場II』や『消えた初恋』での演技を観て、勝手ながら「この人はお芝居が好きなんだろうな」と感じていました。この人だったら、今回の難しい役でも、チャレンジしてしっかり向き合ってくれるだろうなという直感がありました。お会いしてみて語り合う中で、想像していた通り芝居に対して熱を持っていることがわかって。あまりにもこちらの意図することと符号するので、僕は初対面で泣いちゃったんですよ(笑)。
■新しいドラマの価値基準を作った『silent』
村瀬氏:そうですね。『キャラクター』という映画のプロデューサーを務めたとき、SEKAI NO OWARIのFukaseくんに殺人鬼の役をやってもらったんですね。あれも彼を見ていてピンときて、すぐお話をさせていただきました。ドラマにおけるプロデューサーの一番大きな仕事は、“企画”と“キャスティング”だと思っているので、いつも「いい人いないかな」というアンテナを張っています。タクシーのCMとかでも、気になる俳優さんがいたらすぐに検索して調べるようにしていますよ。
――川口さん目黒さんはもちろん、戸川湊斗役の鈴鹿央士さん、桃野奈々役の夏帆さん、春尾正輝役の風間俊介さんら、素敵なキャストたちが盛りだくさんですよね。
村瀬氏:本当に奇跡だと思います。『silent』って総合力の勝利だと思っていて。脚本がよくて、演出がよくて、照明がよくて、音楽がよくて主題歌がいい。そしてキャストももちろん素晴らしい。そのなかでも渾身だったのが、想の母親・律子役の篠原涼子さんですね。数々の作品で主演を務める大スターなのですが、快く作品の船に乗っていただけた。みなさんが作品を愛してくれているからこそ起きた奇跡だと思います。
――放送終了後には、毎回Twitterでトレンド1位になるなど、SNSとの親和性も高い作品ですね。企画する際、SNSというものは意識されていたのですか?
村瀬氏:ドラマプロデューサーとしては、いち早くドラマとTwitterの相関関係みたいなものに注目して、早い段階からやってきた自負があります。2016年に放送された『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)というドラマのプロデュースもしていたのですが、いまだに『いつ恋』のTwitterはフォロワー10万人以上いるんですよ。あの時の体感が今回の『silent』に生きていると思います。
――今はみなさんスマホ片手にドラマを観るのが当たり前ですもんね。
村瀬氏:昔はプロデューサーとして、スマホを持ちながらテレビを観られるということに抵抗があったんです。でもいまは逆で、それが前提だと思っているから、いかに連動するかも大切な施策なのかなと。
――これまでは“世帯視聴率”でドラマのヒットが語られることが多かったですが、判断価値が変わってきたなと感じることはありますか?
村瀬氏:今回のそれは大きく感じましたし、『silent』の一番の功績はそこではないかと思っています。今年1月に放送された月9の『ミステリと言う勿れ』の見逃し再生回数がすごかったときに、社内でもしっかりと評価されたんです。でもあのドラマは視聴率も良かったんですよね。『silent』は、いわゆる世帯視聴率は振るわないのですが、個人やコア視聴率はしっかり取ったということで、しっかりと話題になっている。その意味で『silent』が、今後のドラマ作りの大きな可能性になった気がします。再生回数という基準で、民放地上波のドラマを作れる可能性が出てきたということなんですよね。
――大きな希望ですね。
村瀬氏:僕も大好きなドラマのひとつなんですけど、宮藤官九郎さんが脚本を手掛けた『木更津キャッツアイ』や、植田博樹プロデューサーの『SPEC』など、視聴率という指標にとどまらず、DVDがめちゃくちゃ売れて、映画もヒットしましたよね。今回それと似たことが再生回数という概念でも起こっているのかなと。もちろんテレビに携わる人間ですので、視聴率を取らなきゃいけないし、数字を見ると悔しい気持ちもありますが。
――最終回も終わり、ロスになるファンも多そうです。
村瀬氏:僕にとっての一番いいドラマって、登場人物たちが視聴者の心にずっと生きているものなんですよね。たとえば『北の国から』の純と蛍は僕の中でずっと生きているし、木更津に行けば、ぶっさんがいるんじゃないかと思ってしまう。最終回の後も、みんなの心のなかで『silent』のワールドがずっと残り続けてくれたらうれしいなと思います。
――どちらのドラマも“富良野”“木更津”と、地名がしっかり出てきますね。『silent』も“世田谷代田”が舞台ですが、意識されていましたか?
村瀬氏:そこは強くこだわった部分です。世田谷代田に来たら、紬と想を思い出してくれたら良いなと。
■TVer初のオリジナル番組出演は「ご褒美かな」
――TVer初の完全オリジナル番組『最強の時間割 〜若者に本気で伝えたい授業〜』で講師を務められましたね。
村瀬氏:「本当に僕でいいの?」という思いもありつつですが、「TVerに貢献しているご褒美かな」と、出演させていただきました。
――プロデューサーや映像の世界を目指す若い人たちに向けて講義をされていましたが、どんな人に観てもらいたいですか?
村瀬氏:つい心を許して“言っちゃいけない『silent』の裏話”などもしゃべってしまったので、“『silent』ロス”になっちゃってる人に是非観てほしいですね。先ほども話しましたが『silent』って、新しい評価基準の物差しを作ったことに意義があると思っているんです。
――なるほど。
村瀬氏:数字や結果はついてくるものでしかないのですが、『silent』の制作チームを結成するにあたって、いきなり新人の生方さんを抜擢したり、無理やりフジテレビにこのチーム編成で通したりと、いろいろなことを経て、こうしていろいろな人たちと共によい作品を作ることができました。僕みたいな人間でも仲間たちと一緒になにかができる……いろんな方に観ていただいて楽しい内容となっていると思いますが、とくに社会に出ることに不安を持っている人に観ていただいて「自分でも何かができるんだ」と思っていただけたらうれしいですね。
取材・文:磯部正和
TVer初の完全オリジナル番組『最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜』 https://tver.jp/series/sr89h78de9
2022/12/23