主演でも助演でも変幻自在なキャラクターを体現するのん、門脇麦、大島優子が三姉妹役で出演する映画『天間荘の三姉妹』。観ている人を不思議な世界に誘う作品だ。次女・かなえを演じた門脇、三女・たまえを演じたのんがそれぞれ「すごく楽しかった」と話す撮影現場を振り返るとともに、それぞれが“いま”感じていることを聞いた。
■ついていきたい!と思える門脇麦と大島優子の背中(のん)
――天界と地上の間にある街・三ツ瀬が舞台の物語ですが、台本を読んでどんな印象を持ちましたか?
門脇:台本を読んだ段階では、三ツ瀬が天界と地上の間にある場所だという認識もなく、普通のお話だと思っていたんです。そのあと、北村龍平監督とお話しするなかで、作品について伺って「そうなんだ」と(笑)。でも私が演じた“かなえ”という役は、あまり天間荘に関与していない人間だったので、作品の世界観にとらわれず、普通にイルカのトレーナーという部分を意識しようと思いました。
のん:私は最初原作を読んで、シビアな題材を、ファンタジーに落とし込んで描いていることが素敵だなと思いましたし、希望が見えるストーリーにグッときました。
――それぞれの役柄について、どんなアプローチをされましたか?
のん:劇中で“たまえ”は、寺島しのぶさん演じる母親に「あんたは嘘をついている」と指摘されるのですが、それが手掛かりだなと思いました。普段は“普通”を装っていますが、心のなかにすごく大きなコンプレックスを抱えていて、警戒心が強い女の子。だからこそ、自分が天間荘で存在する意味を持たせるために、一生懸命になっている…という部分を意識しました。
門脇:たとえばトレーナーとかギタリストみたいな役を演じるとき、どうしても嘘っぱちになってしまうのは、わかっているんです。“プロ”を演じているのに、プロの技術を持ち合わせていないので、やっていて恥ずかしい気持ちになってしまうこともあって。かなえは一日の半分をイルカと接している人なので、見ている方に違和感を与えないように、イルカのインストラクターさんのエッセンスをいただきながら役を作っていった感じです。
――三姉妹の独特の距離感、関係性も物語にとっては大切な要素に感じました。
のん:台本を読み込んで役を構築してから現場に行きます。その役を以て、現場に行ってキャストの方と演技を交わします。今回麦さんや大島さんとご一緒したとき、とても柔らかい空気を感じました。たまえを尊重して受け止めてくれる大島さんの頼りがいや、麦さん演じるかなえの、自由に見えるけれどとても優しいところなど「一緒にいたい」とたまえが思う魅力を感じました。
門脇:顔合わせで「自分の立ち位置ここ!」とすぐに感じるときと、すぐにはしっくりこない場合などまちまちなのですが、今回はのんちゃんと優子ちゃんの声を聴いて、多分ここだろうなというのを早い段階で感じることができました。
――悩まずスムーズに役に入れたんですね。
門脇:そうですね。2人だけではなく、イルカやトレーナーさんたちにも助けられました。ほかにも海が見えるロケーションもすごく良かったです。いろいろなエッセンスによって、かなえという役になれた気がします。なんの違和感もなく過ごせたという意味で、すごくすごく幸せな現場でした。
のん:私もすごく楽しかったです。笑ってばっかりで、素敵な“家族”でした。
■先輩方の表現するモチベーションに興味「いまは迷走期です」(門脇)
――母親役の寺島しのぶさんや、財前玲子役の三田佳子さんなど、ベテラン女優さんの存在感もすごかったですね。
門脇:寺島さんは、お酒を飲んでマッサージ機に座っているシーンがすごく強烈で。そこが印象に残るということが、お母ちゃんをリアルに演じているということに他ならない。すごい方だなと改めて思いました。それでいて、ラストのシーンでの姿が格好良すぎて…。圧巻でした。
のん:本当に寺島さんは格好良かったですね。私は三田さんともご一緒するシーンが多かったのですが、とてもチャーミングで優しい方でした。驚いたのが、三田さんが現れると曇っていた空が急に晴れるんです。本当に何回もそういうことがあって、ご本人に「三田さんがいらっしゃると雲がなくなりますね」と話しかけると「そうなの、いつもそうなのよ」とさらりとおっしゃって。もう常識を超えている方だなと(笑)。
門脇:本当に不思議だったよね(笑)。
――大先輩のハツラツとした姿には刺激を受けたのではないでしょうか?
のん:そうですね。すごく刺激を受けました。こちらも気合を入れなければ! という気持ちになりました。
門脇:しのぶさんが空き時間にお子さんに電話をしていたんですよ。たとえば私に子どもができたとして、そのときこの仕事を続けていけるメンタルは今のところないと思うんです。先輩方を見ていると、力の源がなんなのか、いつも聞いてみたい気持ちになります。生活のためとか、そういうことではなく、“表現”の炎を燃やし続ける燃料がなんなのか、とても興味があります。
――現時点での門脇さんのモチベーションは?
門脇:いい作品を作りたいというのは変わらずあるのですが、昔明確だなと思っていたものが、実は不明確だったんだと気づいてからは、迷走期に入っていますね。だから、のんちゃんがモノ作りへのガッツや魂を燃やしている姿や、先輩たちの姿を見ると、熱量を持ち続けて作品に向き合っているところに憧れます。
■先輩の姿に学んだ心構え「今の自分に満足できないのは当たり前」(のん)
――のんさんは表現するモチベーションというのはどんなものなのですか?
のん:シンプルに仕事がおもしろいです! あとは自分を過信することですかね。今回の現場も、寺島しのぶさんや三田佳子さん、永瀬正敏さんたち素敵な俳優さんとご一緒できてうれしくて、自分もそのレベルで演技ができていると思い込んで演技をするんです。でも実際はそこに達していなくてがっかりする(笑)。だからこそ「次こそは!」と闘志が沸いてくるんです。
――うまくできないと落ち込むことはありますか?
のん:オーディションに落ちまくっていたときも「自分はいい役者なんだ」って根拠もなく信じていたんです。だからあまり落ち込むことはないです。以前、宮本信子さんと尾美としのりさんに「自分が感じたよりも、実際できていない。満足できない」と相談したことがあるのですが、お2人とも「満足できないからここまで続けてきた」とおっしゃっていて。あれだけの方々が満足できないのだから、私がそう感じることなんて当たり前なんだなと。
門脇:その考えおもしろいね。すごいと思う。
のん:でも偉そうに自信があるって感じではないんですよ。
門脇:うん、わかる。すごくのんちゃんらしくて、素敵だと思う。
――劇中には「走馬灯」なる機械が出てきます。自分の最後の瞬間に走馬灯として、どんな景色が浮かびそうですか?
門脇:たとえばいつの日かわからない、ご飯を食べているシーンとかの気がします。私たちはインタビューで「ターニングポイントになった出来事は?」と聞かれることが多いんです。そこで答えることによって、いつの間にか脳内の記憶としてその“答え”が定着してしまっているんですよね。ある意味で歴史的な出来事のように記憶されていて、どこか他人事なんです。だから、本当に最後に走馬灯として浮かび上がってくるのは、深層心理に記憶されているような何気ないものなのかなと。
のん:私はディズニーランドに行った記憶かな。これまで仕事で行ったことはあったのですが、今年初めてプライベートで行ったんです。ディズニーシーでヴェネツィアンゴンドラに乗ったりして。知らない人に「チャオ!」って言うんですよ。でもちょっと相手と距離が遠かったりして、ためらっていると、「チャオ!」って言ってくれて。その時一緒にゴンドラに乗っていた大学生ぐらいの人たちと一緒に記念撮影したり…それがとても楽しかったんです。いままで自分のこと、知らない人と馴染めるようなキャラじゃないと思っていたので、すごく大きな出来事なんだなと実感しました。それが走馬灯として蘇ってきそうです!
――最後に、本作に出演して得たこと、これから活かせるなと感じたことを教えてください。
のん:私は麦さんの現場での佇まいがすごく格好いいなと思って見ていました。麦さん、とてもマイペースなのですが、周囲にも気を使ってくださる。しかも演技に入るとスッとかなえさんになる。精度の高い瞬発力で相手をくすぐる姿は、すごく参考になるし憧れます。
門脇:そんな風に思ってくれていたなんて、うれしいですね。今回いろいろな地域でロケを行ったのですが、その土地のパワーをもらいながら撮影ができたんです。ロケってやっぱりいいなと思えたことが大きな収穫でした。
取材・文/磯部正和
写真/MitsuruYamazaki
■ついていきたい!と思える門脇麦と大島優子の背中(のん)
――天界と地上の間にある街・三ツ瀬が舞台の物語ですが、台本を読んでどんな印象を持ちましたか?
門脇:台本を読んだ段階では、三ツ瀬が天界と地上の間にある場所だという認識もなく、普通のお話だと思っていたんです。そのあと、北村龍平監督とお話しするなかで、作品について伺って「そうなんだ」と(笑)。でも私が演じた“かなえ”という役は、あまり天間荘に関与していない人間だったので、作品の世界観にとらわれず、普通にイルカのトレーナーという部分を意識しようと思いました。
のん:私は最初原作を読んで、シビアな題材を、ファンタジーに落とし込んで描いていることが素敵だなと思いましたし、希望が見えるストーリーにグッときました。
のん:劇中で“たまえ”は、寺島しのぶさん演じる母親に「あんたは嘘をついている」と指摘されるのですが、それが手掛かりだなと思いました。普段は“普通”を装っていますが、心のなかにすごく大きなコンプレックスを抱えていて、警戒心が強い女の子。だからこそ、自分が天間荘で存在する意味を持たせるために、一生懸命になっている…という部分を意識しました。
門脇:たとえばトレーナーとかギタリストみたいな役を演じるとき、どうしても嘘っぱちになってしまうのは、わかっているんです。“プロ”を演じているのに、プロの技術を持ち合わせていないので、やっていて恥ずかしい気持ちになってしまうこともあって。かなえは一日の半分をイルカと接している人なので、見ている方に違和感を与えないように、イルカのインストラクターさんのエッセンスをいただきながら役を作っていった感じです。
――三姉妹の独特の距離感、関係性も物語にとっては大切な要素に感じました。
のん:台本を読み込んで役を構築してから現場に行きます。その役を以て、現場に行ってキャストの方と演技を交わします。今回麦さんや大島さんとご一緒したとき、とても柔らかい空気を感じました。たまえを尊重して受け止めてくれる大島さんの頼りがいや、麦さん演じるかなえの、自由に見えるけれどとても優しいところなど「一緒にいたい」とたまえが思う魅力を感じました。
門脇:顔合わせで「自分の立ち位置ここ!」とすぐに感じるときと、すぐにはしっくりこない場合などまちまちなのですが、今回はのんちゃんと優子ちゃんの声を聴いて、多分ここだろうなというのを早い段階で感じることができました。
――悩まずスムーズに役に入れたんですね。
門脇:そうですね。2人だけではなく、イルカやトレーナーさんたちにも助けられました。ほかにも海が見えるロケーションもすごく良かったです。いろいろなエッセンスによって、かなえという役になれた気がします。なんの違和感もなく過ごせたという意味で、すごくすごく幸せな現場でした。
のん:私もすごく楽しかったです。笑ってばっかりで、素敵な“家族”でした。
■先輩方の表現するモチベーションに興味「いまは迷走期です」(門脇)
――母親役の寺島しのぶさんや、財前玲子役の三田佳子さんなど、ベテラン女優さんの存在感もすごかったですね。
門脇:寺島さんは、お酒を飲んでマッサージ機に座っているシーンがすごく強烈で。そこが印象に残るということが、お母ちゃんをリアルに演じているということに他ならない。すごい方だなと改めて思いました。それでいて、ラストのシーンでの姿が格好良すぎて…。圧巻でした。
のん:本当に寺島さんは格好良かったですね。私は三田さんともご一緒するシーンが多かったのですが、とてもチャーミングで優しい方でした。驚いたのが、三田さんが現れると曇っていた空が急に晴れるんです。本当に何回もそういうことがあって、ご本人に「三田さんがいらっしゃると雲がなくなりますね」と話しかけると「そうなの、いつもそうなのよ」とさらりとおっしゃって。もう常識を超えている方だなと(笑)。
門脇:本当に不思議だったよね(笑)。
――大先輩のハツラツとした姿には刺激を受けたのではないでしょうか?
のん:そうですね。すごく刺激を受けました。こちらも気合を入れなければ! という気持ちになりました。
門脇:しのぶさんが空き時間にお子さんに電話をしていたんですよ。たとえば私に子どもができたとして、そのときこの仕事を続けていけるメンタルは今のところないと思うんです。先輩方を見ていると、力の源がなんなのか、いつも聞いてみたい気持ちになります。生活のためとか、そういうことではなく、“表現”の炎を燃やし続ける燃料がなんなのか、とても興味があります。
――現時点での門脇さんのモチベーションは?
門脇:いい作品を作りたいというのは変わらずあるのですが、昔明確だなと思っていたものが、実は不明確だったんだと気づいてからは、迷走期に入っていますね。だから、のんちゃんがモノ作りへのガッツや魂を燃やしている姿や、先輩たちの姿を見ると、熱量を持ち続けて作品に向き合っているところに憧れます。
■先輩の姿に学んだ心構え「今の自分に満足できないのは当たり前」(のん)
――のんさんは表現するモチベーションというのはどんなものなのですか?
のん:シンプルに仕事がおもしろいです! あとは自分を過信することですかね。今回の現場も、寺島しのぶさんや三田佳子さん、永瀬正敏さんたち素敵な俳優さんとご一緒できてうれしくて、自分もそのレベルで演技ができていると思い込んで演技をするんです。でも実際はそこに達していなくてがっかりする(笑)。だからこそ「次こそは!」と闘志が沸いてくるんです。
――うまくできないと落ち込むことはありますか?
のん:オーディションに落ちまくっていたときも「自分はいい役者なんだ」って根拠もなく信じていたんです。だからあまり落ち込むことはないです。以前、宮本信子さんと尾美としのりさんに「自分が感じたよりも、実際できていない。満足できない」と相談したことがあるのですが、お2人とも「満足できないからここまで続けてきた」とおっしゃっていて。あれだけの方々が満足できないのだから、私がそう感じることなんて当たり前なんだなと。
門脇:その考えおもしろいね。すごいと思う。
のん:でも偉そうに自信があるって感じではないんですよ。
門脇:うん、わかる。すごくのんちゃんらしくて、素敵だと思う。
――劇中には「走馬灯」なる機械が出てきます。自分の最後の瞬間に走馬灯として、どんな景色が浮かびそうですか?
門脇:たとえばいつの日かわからない、ご飯を食べているシーンとかの気がします。私たちはインタビューで「ターニングポイントになった出来事は?」と聞かれることが多いんです。そこで答えることによって、いつの間にか脳内の記憶としてその“答え”が定着してしまっているんですよね。ある意味で歴史的な出来事のように記憶されていて、どこか他人事なんです。だから、本当に最後に走馬灯として浮かび上がってくるのは、深層心理に記憶されているような何気ないものなのかなと。
のん:私はディズニーランドに行った記憶かな。これまで仕事で行ったことはあったのですが、今年初めてプライベートで行ったんです。ディズニーシーでヴェネツィアンゴンドラに乗ったりして。知らない人に「チャオ!」って言うんですよ。でもちょっと相手と距離が遠かったりして、ためらっていると、「チャオ!」って言ってくれて。その時一緒にゴンドラに乗っていた大学生ぐらいの人たちと一緒に記念撮影したり…それがとても楽しかったんです。いままで自分のこと、知らない人と馴染めるようなキャラじゃないと思っていたので、すごく大きな出来事なんだなと実感しました。それが走馬灯として蘇ってきそうです!
――最後に、本作に出演して得たこと、これから活かせるなと感じたことを教えてください。
のん:私は麦さんの現場での佇まいがすごく格好いいなと思って見ていました。麦さん、とてもマイペースなのですが、周囲にも気を使ってくださる。しかも演技に入るとスッとかなえさんになる。精度の高い瞬発力で相手をくすぐる姿は、すごく参考になるし憧れます。
門脇:そんな風に思ってくれていたなんて、うれしいですね。今回いろいろな地域でロケを行ったのですが、その土地のパワーをもらいながら撮影ができたんです。ロケってやっぱりいいなと思えたことが大きな収穫でした。
取材・文/磯部正和
写真/MitsuruYamazaki
2022/10/26