2007年に放送されたフジテレビ月9ドラマ『ガリレオ』のテーマソング制作のために結成された福山雅治と柴咲コウによる音楽ユニット・KOH+が、シリーズ最新作映画『沈黙のパレード』にて主題歌「ヒトツボシ」をリリースする。2013年の楽曲「恋の魔力」以来、9年ぶりに復活。演者として、アーティストとして、シリーズを支える福山と柴咲が、楽曲に込めた思い、互いの人としての魅力、創作活動への思いなどを語った。
■誰か一人のために書いた曲こそが、多くの人に共感してもらえるものになる
――本作の主題歌「ヒトツボシ」はどのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
福山雅治(以下、福山):2008年に公開された『容疑者xの献身』のエンディングソングとしてKOH+が書き下ろした「最愛」という楽曲があるのですが、それは劇中に登場する天才数学者・石神哲哉(堤真一)の報われない魂を救済するために作ったレクイエムだったんです。今回の「ヒトツボシ」もコンセプトは同様です。『沈黙のパレード』では、ひとりの登場人物が悲劇的に亡くなったことから、その周囲の人たちの人生の歯車が狂ってゆく。なくなった彼女本人、そして周りの人たちの魂の救済になればという思いで作ったのが「ヒトツボシ」です。
――柴咲さんは「ヒトツボシ」という楽曲をレコーディングした際、どんな思いが想起させられましたか?
柴咲コウ(以下、柴咲):「最愛」は、ひとつの作品に沿った内容の歌なのですが、どこか自分の人生に当てはめることができる曲だなという思いがあったんです。それは自分自身が年を重ね、経験を積んでいくたびに、より強くなっていき、どんどんふくよかな曲になっていったんです。「ヒトツボシ」も、作品の中の登場人物の思いに当てはめて歌っているのですが、きっと時を重ねると、どんどん変化して自分事になっていくんだろうなという予感がします。改めて「福山さんはそこまで考えて楽曲づくりをしているんだな」と感嘆しました。
――柴咲さんがおっしゃるように、登場人物の鎮魂歌という意味を持ちながらも、多くの人が共感できるところまで膨らんでいくことを想定して作られたのでしょうか?
福山:どんな表現にも共通することだと思うのですが、メッセージというのは、それを作った人間が、それを誰に届けたいのか?が明確にわかる作品が良い作品だと思っています。端的に言うと“ただひとりのために作られたものが多くの人の共感を得る”と。
――たしかに、そのほうがよりリアルな作品になりそうですね。
福山:『容疑者xの献身』の試写を観終わったあと、堤さんから「石神の魂がこれで救われました。ありがとうございます」とメールをいただいたんです。そこでひとつ、この“最愛”と言う楽曲の命題はクリアされたと感じました。聴いた人たちがそれぞれ「これは自分の歌なんだ。自分のことを歌ってるんだ」と感じていただければ、それは楽曲において最も幸せな着地点と言えると思います。
――具体的なある人に向けて作られたはずなのに、自分に響く楽曲って、たしかに理想的かもしれません。
福山:やっぱり定型文って響かないですよね。定型文で書かれている文章って読む気がしないけれど、自分に当てた手紙のような書かれ方していたら、それが説明書だとしても、一語一句見逃さないと言う気持ちで読むような気がするんですよね。
■生き様が表現に現れているから信頼できる
――2007年のドラマ「ガリレオ」で結成されてから15年という歳月が流れましたが、改めてアーティストとしてのそれぞれの魅力を教えてください。
福山:柴咲さんは出会ったときから変わらず、何をやっても柴咲コウという人間が滲み出てくる方。それはお芝居が柴咲コウに見えるということではなく、生き様がまず前にある方なので、見ていて気持ちがいい。その分大変なことも多いとは思いますが、強いメッセージを楽曲に乗せても耐え得る存在というか、巨大なエンジンを載せてバリバリ走る車のような安心感があります。もちろん技術はあるのですが、いい意味で技巧派ではなく、心で歌っている。その歌声の正直さや芯の強さがとても信頼できるんです。
柴咲:福山さんは魂に品があると思っています。とても利他的な考え方で、支えてくれる身近な人や、ファンの思いをしっかりと作品に落とし込む方だなと。もちろんこのプロジェクトでは、プロデューサー視点で見てくださっているのですが、くまなく状況を把握しているので安心感があります。私は結構その時の気分で左右されてしまいがちなので(笑)。
――お互い必要としている部分が合致しているんですね。
福山:そうですね。仕事をしていくうえで尊敬の念を持てるポイントがあるかはとても大切です。それがないと続けられない。長く一緒に続けていくためには、やっぱり相手への敬意は大事ですね。
――前作から9年ぶりとなりますが、湯川学というキャラクターにはすんなり戻れるものなのですか?
福山:湯川さん、は白衣やスリーピースのスーツ、メガネ、声のトーンなどしっかりとした型があるので演じていて楽しいです。撮影の前に衣装合わせと言う作業があるのですが、僕はそこが一番大事だと思っていて。僕だけの力ではなく、スタイリストさんやヘアメイクさんと湯川学を作っていくのですが、その衣装合わせのときに全スタッフさんたちに「湯川さんが帰ってきた!」と思ってもらえれば先ずは合格だと思える。そこを目指して作っていきました。
――内海薫はどうですか?
柴咲:テレビドラマのときはまだ薫は新人刑事で、湯川先生に対しても周囲に対しても若さゆえのガサツさがあったのですが、『容疑者xの献身』のときに、物語の進行役としてしっかりしないといけないという立場になり、一段階役割が上がったかなというのはありました。そこから空白があったのですが、薫はきっと海外に行ってまた日本に戻ってきて、男性社会のなかで負けずに生きて……みたいな描かれていない部分も想像しやすかったので、難なく入ることができました。
■心にぽっかりとあいた穴の埋め方は?
――本シリーズには、喪失感というキーワードが常にあるような気がします。お2人は大切なものを失って心に穴があいてしまったときはどうやって埋めるのでしょうか?
福山:僕がいままで生きていた感覚で言うと、心にぽっかりとあいてしまった穴は、塞がることがないと思っています。心持ちとしては「あーあいているな」ぐらいに思って、今後またほかにも穴はあいていくのだろうから、あまり大きな穴にならないように注意して生きて行こうと。だから、だんだん臆病になりますよね。まあこういうと絶望的な話になってしまいますが(笑)。でもだからこそ表現する作業を続けられるんだろうなと。表現するためには、いい穴なんだと良い風に解釈しています。
柴咲:私の場合はその穴を考えないようにするのではなく、ひたすら考えて追いかけていくうちに、少しずつその穴は小さくなっていっているような気はします。「愛さなければこんなに苦しくなかった」とか「出会わなければよかった」みたいな表現がありますが、過去には戻れないし、そういうことを考えるのは無駄だとわかっていて。でも、あえてぐるぐると考えることで、少しずつ治癒しているのかなと思っています。
――ファンの多いシリーズの待望の新作です。ずっと続いてほしいというファンの願いについてはどう感じていますか?
柴咲:湯川さん、おじいちゃんになってもやるしかないですね(笑)。
福山:今回は准教授から教授になりましたけれど、最後は『学長・湯川学』ですかね(笑)。
柴咲:なんかそれだと違うエッセンスになりそうですね。
福山:『島耕作』シリーズのような成長の仕方は僕は好きですが(笑)。
取材・文/磯部正和
写真/MitsuruYamazaki
●映画情報●『沈黙のパレード』 9月16日公開 ●リリース情報● KOH+『ヒトツボシ 〜ガリレオ Collection 2007-2022〜』 9月14日発売
■誰か一人のために書いた曲こそが、多くの人に共感してもらえるものになる
――本作の主題歌「ヒトツボシ」はどのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
福山雅治(以下、福山):2008年に公開された『容疑者xの献身』のエンディングソングとしてKOH+が書き下ろした「最愛」という楽曲があるのですが、それは劇中に登場する天才数学者・石神哲哉(堤真一)の報われない魂を救済するために作ったレクイエムだったんです。今回の「ヒトツボシ」もコンセプトは同様です。『沈黙のパレード』では、ひとりの登場人物が悲劇的に亡くなったことから、その周囲の人たちの人生の歯車が狂ってゆく。なくなった彼女本人、そして周りの人たちの魂の救済になればという思いで作ったのが「ヒトツボシ」です。
柴咲コウ(以下、柴咲):「最愛」は、ひとつの作品に沿った内容の歌なのですが、どこか自分の人生に当てはめることができる曲だなという思いがあったんです。それは自分自身が年を重ね、経験を積んでいくたびに、より強くなっていき、どんどんふくよかな曲になっていったんです。「ヒトツボシ」も、作品の中の登場人物の思いに当てはめて歌っているのですが、きっと時を重ねると、どんどん変化して自分事になっていくんだろうなという予感がします。改めて「福山さんはそこまで考えて楽曲づくりをしているんだな」と感嘆しました。
――柴咲さんがおっしゃるように、登場人物の鎮魂歌という意味を持ちながらも、多くの人が共感できるところまで膨らんでいくことを想定して作られたのでしょうか?
福山:どんな表現にも共通することだと思うのですが、メッセージというのは、それを作った人間が、それを誰に届けたいのか?が明確にわかる作品が良い作品だと思っています。端的に言うと“ただひとりのために作られたものが多くの人の共感を得る”と。
――たしかに、そのほうがよりリアルな作品になりそうですね。
福山:『容疑者xの献身』の試写を観終わったあと、堤さんから「石神の魂がこれで救われました。ありがとうございます」とメールをいただいたんです。そこでひとつ、この“最愛”と言う楽曲の命題はクリアされたと感じました。聴いた人たちがそれぞれ「これは自分の歌なんだ。自分のことを歌ってるんだ」と感じていただければ、それは楽曲において最も幸せな着地点と言えると思います。
――具体的なある人に向けて作られたはずなのに、自分に響く楽曲って、たしかに理想的かもしれません。
福山:やっぱり定型文って響かないですよね。定型文で書かれている文章って読む気がしないけれど、自分に当てた手紙のような書かれ方していたら、それが説明書だとしても、一語一句見逃さないと言う気持ちで読むような気がするんですよね。
■生き様が表現に現れているから信頼できる
――2007年のドラマ「ガリレオ」で結成されてから15年という歳月が流れましたが、改めてアーティストとしてのそれぞれの魅力を教えてください。
福山:柴咲さんは出会ったときから変わらず、何をやっても柴咲コウという人間が滲み出てくる方。それはお芝居が柴咲コウに見えるということではなく、生き様がまず前にある方なので、見ていて気持ちがいい。その分大変なことも多いとは思いますが、強いメッセージを楽曲に乗せても耐え得る存在というか、巨大なエンジンを載せてバリバリ走る車のような安心感があります。もちろん技術はあるのですが、いい意味で技巧派ではなく、心で歌っている。その歌声の正直さや芯の強さがとても信頼できるんです。
柴咲:福山さんは魂に品があると思っています。とても利他的な考え方で、支えてくれる身近な人や、ファンの思いをしっかりと作品に落とし込む方だなと。もちろんこのプロジェクトでは、プロデューサー視点で見てくださっているのですが、くまなく状況を把握しているので安心感があります。私は結構その時の気分で左右されてしまいがちなので(笑)。
――お互い必要としている部分が合致しているんですね。
福山:そうですね。仕事をしていくうえで尊敬の念を持てるポイントがあるかはとても大切です。それがないと続けられない。長く一緒に続けていくためには、やっぱり相手への敬意は大事ですね。
――前作から9年ぶりとなりますが、湯川学というキャラクターにはすんなり戻れるものなのですか?
福山:湯川さん、は白衣やスリーピースのスーツ、メガネ、声のトーンなどしっかりとした型があるので演じていて楽しいです。撮影の前に衣装合わせと言う作業があるのですが、僕はそこが一番大事だと思っていて。僕だけの力ではなく、スタイリストさんやヘアメイクさんと湯川学を作っていくのですが、その衣装合わせのときに全スタッフさんたちに「湯川さんが帰ってきた!」と思ってもらえれば先ずは合格だと思える。そこを目指して作っていきました。
――内海薫はどうですか?
柴咲:テレビドラマのときはまだ薫は新人刑事で、湯川先生に対しても周囲に対しても若さゆえのガサツさがあったのですが、『容疑者xの献身』のときに、物語の進行役としてしっかりしないといけないという立場になり、一段階役割が上がったかなというのはありました。そこから空白があったのですが、薫はきっと海外に行ってまた日本に戻ってきて、男性社会のなかで負けずに生きて……みたいな描かれていない部分も想像しやすかったので、難なく入ることができました。
■心にぽっかりとあいた穴の埋め方は?
――本シリーズには、喪失感というキーワードが常にあるような気がします。お2人は大切なものを失って心に穴があいてしまったときはどうやって埋めるのでしょうか?
福山:僕がいままで生きていた感覚で言うと、心にぽっかりとあいてしまった穴は、塞がることがないと思っています。心持ちとしては「あーあいているな」ぐらいに思って、今後またほかにも穴はあいていくのだろうから、あまり大きな穴にならないように注意して生きて行こうと。だから、だんだん臆病になりますよね。まあこういうと絶望的な話になってしまいますが(笑)。でもだからこそ表現する作業を続けられるんだろうなと。表現するためには、いい穴なんだと良い風に解釈しています。
柴咲:私の場合はその穴を考えないようにするのではなく、ひたすら考えて追いかけていくうちに、少しずつその穴は小さくなっていっているような気はします。「愛さなければこんなに苦しくなかった」とか「出会わなければよかった」みたいな表現がありますが、過去には戻れないし、そういうことを考えるのは無駄だとわかっていて。でも、あえてぐるぐると考えることで、少しずつ治癒しているのかなと思っています。
――ファンの多いシリーズの待望の新作です。ずっと続いてほしいというファンの願いについてはどう感じていますか?
柴咲:湯川さん、おじいちゃんになってもやるしかないですね(笑)。
福山:今回は准教授から教授になりましたけれど、最後は『学長・湯川学』ですかね(笑)。
柴咲:なんかそれだと違うエッセンスになりそうですね。
福山:『島耕作』シリーズのような成長の仕方は僕は好きですが(笑)。
取材・文/磯部正和
写真/MitsuruYamazaki
●映画情報●『沈黙のパレード』 9月16日公開 ●リリース情報● KOH+『ヒトツボシ 〜ガリレオ Collection 2007-2022〜』 9月14日発売
2022/09/15