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SDGsのその先は? “義務”や“ファッション”では続かない、「未利用資源ハンター」が冷凍食品最大手と手を組んだ理由

 昨今、さまざまな企業がSDGsに取り組んでいる。だが消費者側としてみれば、いまだ敷居が高いと感じることも多いだろうし、企業側からも「社会的信用のため」「印象がいいから」と、義務的な雰囲気も見え隠れする。発酵により廃棄物などを活用する技術を持つ会社・ファーメンステーションの“未利用資源ハンター”酒井里奈さんは、そんな風潮に「事業性と社会性は両立できる」と語る。今回、誰にも馴染み深い冷凍焼おにぎりの規格外ごはんからウエットティッシュを作った意図、そしてSDGsの“その先”を聞いた。

『焼おにぎり10個入』の規格外ごはんから作った『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』

『焼おにぎり10個入』の規格外ごはんから作った『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』

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■「ここ1〜2年で空気が変わった」、理解得られなかった未利用資源の活用

 持続可能な社会の実現を目指す世界共通の目標「SDGs」というワードが浸透し、「SDGs推進」を掲げる企業もますます増えている。先ごろ発表された『持続可能な開発リポート2022』も話題になったが、日本のSDGsの進捗具合にはまだまだ課題が残る結果となった。

 SDGsへの参画は、企業のイメージ向上に繋がるなどメリットが大きい。しかしイメージをアピールする以上に、その活動が消費者に喜ばれ、ひいては企業に利益をもたらすものにならなければ、それこそ“持続可能な”企業活動にはなり得ない。

 「“事業性”と“社会性”を両立したビジネスは実現可能」と語るのは、株式会社ファーメンステーション代表取締役の酒井里奈さん。独自の発酵技術で数々の企業の未利用資源(廃棄物、副産物など)をアップサイクルし、注目を集めている研究開発型のスタートアップ企業だ。

 「アップサイクル」とは従来は捨てられてきたモノを、さまざまなアイデアや手法によって新しい製品にアップグレードすること。リサイクル(再循環)やリユース(再利用)とは異なり、元の状態よりも価値の高いプロダクトに転換されることから昨今の世界的な潮流となっている。

 同社は、JR東日本グループが作るお酒シードルの製造過程で出る「りんごの絞りかす」をルームスプレーなどのアロマグッズや除菌ウエットティッシュに生まれ変わらせたほか、ANAグループが輸入するバナナの「規格外品」や、象印の炊飯ジャー開発過程で出る「試食ご飯」など、これまでは企業にとって「コストをかけて処分してきたゴミ」を次々と「価値あるプロダクト」にアップサイクルしてきた。

 「ここ1〜2年で一気に世の中の空気が変わったのを感じます。弊社は2009年設立。休耕田を再生し栽培したお米をバイオエタノールに転換する技術から始まった会社ですが、当初は未利用資源を提供していただこうと企業にアプローチしても、なかなか理解していただけなかった。今は多くの企業が『SDGs推進室』といった部署を設置しているため、やりとりもだいぶスムーズになりました」(酒井さん)

(左から)ファーメンステーション・酒井里奈さん、ニチレイフーズ・吉野達也さん

(左から)ファーメンステーション・酒井里奈さん、ニチレイフーズ・吉野達也さん

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 そんな同社が新たにコラボレーションしたのが、冷凍食品メーカー最大手のニチレイフーズ。発売30年以上のロングセラー商品『焼おにぎり10個入』の規格外ごはんから作った『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』が製品化される。

 今回のアップサイクルの提案は、2011年から同社が取り組んできた「ハミダス」活動から上がったものだったという。

 「ハミダス」活動とは、ニチレイフーズの全社員が自分の担当領域を超えて、自発的に取り組む活動のこと。もともとは社内風土改革の一環だったが、「もっと思いやりを持って」「もっとチャレンジして」「もっと楽しく」のキーワードに当てはまればどんな企画でも声を上げられるように活動領域が拡大しているそうだ。

 そんな「ハミダス」活動の推進と社内浸透を図る、その名も「ハミダス推進部」で部長をつとめる吉野達也さんによると、「もともと食品工場から出る規格外品や残渣(ざんさ)は、『転売リスクがある』『リサイクルにも手間やお金がかかる』などの理由から、以前は廃棄していました。ですが、『フードロスがこれだけ問題になっているのに、それでいいの?』という声が、『ハミダス』活動で上がるようになったんです」とのこと。

 「ハミダス」活動が起点となり、すでに食べられるものはフードバンクなどに寄付、食べられないものは飼料や肥料に活用と、規格外品や残渣をほぼ100%有効活用できる仕組みが確立されている。

 「そうした社会貢献活動を超えて、経済的価値と社会的価値を共存させるアイデアとして上がったのが、アップサイクルでした。とはいえ、私たちは食品メーカーなので“食”というアウトプットのイメージしかありませんでした。ファーメンステーションさんの活動を知り、初めて『食じゃなくてもいいんじゃないか』という発想が生まれたんです」(吉野さん)

 一方の酒井さんも、「実は私もニチレイさんにはずっと注目していたんです」とニヤリ。

 「もともと私は、ゴミとなっていても実は価値があるものに興味があったので、“未利用資源ハンター”ではないですが(笑)、どこにどんなお宝が眠っているか、常に目を光らせていました。私たちは循環型社会の構築を目指す会社ですが、世の中にインパクトを与えるには企業としては小さすぎる。多くの生活者にリーチするためにも、大手の食品メーカーさんとはぜひご一緒したいと考えていました」(酒井さん)

『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』

『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』

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 アップサイクルの第一弾の材料として『焼おにぎり10個入』がチョイスされたのは、油分や具材などが入っていないシンプルな商品だったから。またワンハンドで食べる商品であり、ウエットティッシュとの相性もいい。

 工場のラインからこぼれたごはんや形が崩れた規格外のおにぎりを、ファーメンステーションの発酵技術でエタノールに精製。それを使用して除菌ウエットティッシュが作られる。さらに、発酵粕はニワトリの飼料へと余すことなく活用される。


 「個人的に一番こだわったのは、『焼おにぎり10個入』をそのまま流用したパッケージです。大上段に『SDGsです!』とアピールするよりも、面白いパッケージにすることで親しみをもっていただけるのではないかなと。ファーメンステーションさんのプロダクトはナチュラルでオシャレなパッケージが多いので、酒井さんに怒られないかと心配だったのですが(笑)」(吉野さん)

 一方の酒井さんも「最高です!」と、出来栄えに自信を覗かせる。

 「面白さとSDGsのストーリーを両立できたパッケージだと思います。重要なのは、お客さまに選んでいただくことです。アップサイクル商品は、どうしても敷居が高いイメージがあるのも課題の一つ。面白さ、共感といった要素はとても大切だと思います」(酒井さん)

 酒井さんが言うように、SDGsの取り組みを阻む課題はまだまだ多い。その理由の一つに、こうした商品を取り扱う店が少なく、消費者にとっては価格が高いイメージもある。

 「価格が高くなってしまうのは、市場がないから。そして市場を作るためには、より多くの企業が参入する必要があります。今は多くの企業が『SDGs推進室』などを設置していますが、本来の事業とSDGsの取り組みが完全に分かれている印象があります。しかし、真に持続可能な活動にするためには、事業のすべての意思決定の根本にSDGsの観点を取り入れたほうがいいはず。そうすることで、事業性をより高める企画やアイデアも生まれやすくなるのではないでしょうか」(酒井さん)

■企業同士のマッチングと手の届きやすさ、“継続的な” SDGs活動目指して

 企業にとって、利益を追求するのは当然のこと。一方で、社会貢献活動は「企業の社会的責任」として、ややもすると“義務”に駆られていたところも否めない。しかし、ようやく始まった歩みが、今後はさらに進みそうな明るい兆しも見られるという。

 「最近は『うちの会社に未利用資源があるのだが、活用できないか』と相談してくださる企業が増えています。一方で『未利用資源から商品を作りたい』という企業も増えていますので、今後はファーメンステーションがハブとなって企業同士をマッチングする活動もしていきたい。そして、やがては未利用資源からアップサイクルされた商品が生活の中にごく当たり前に存在する、そんな社会の姿を目指していきたいですね」(酒井さん)

 SDGsへの取り組みを流行やファッションで終わらせないためには、企業による事業としても成立し、消費者が魅力的だと感じる商品として届けることが重要だ。

 今回の『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』は、環境配慮型商品の品揃えを強化する、生活雑貨店ロフトの23店舗(渋谷ロフト、銀座ロフトほか)にて、7月19日(火)より先行限定販売予定だそうだ。企業にも消費者にも価値のある“継続的な”SDGs活動が、これからさらに増えることを望みたい。

(文:児玉澄子)
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  • 『焼おにぎり10個入』の規格外ごはんから作った『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』
  • 『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』アップサイクルの仕組み
  • 『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』
  • (左から)ファーメンステーション・酒井里奈さん、ニチレイフーズ・吉野達也さん

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