今年4月クールで放送された『大豆田とわ子と三人の元夫』。坂元裕二が脚本を手がけた本作は、松たか子演じる大豆田とわ子が3人の元夫に振り回されながらも奮闘するロマンティックコメディだ。多彩で個性的な登場人物たちの織り成す、先を読ませないストーリーは、コロナ禍の緊張感をしばし和らげ、わくわく感を与えてくれた。この味わい深いドラマはいかにして生まれたのか。そして、11月に発売される、渾身のパッケージ内容について、同ドラマのプロデューサー・佐野亜裕美氏(関西テレビ放送制作局東京制作部)に話を聞いた。
■毎週楽しみに観てもらうために、キャラクターを掘り下げていく作業に注力
――『大豆田とわ子と三人の元夫』は、多彩で個性的な人物たちと、複雑味のあるつながりが描かれた、味わい深い“コク”のあるドラマでした。あの“コク”はどのように作り上げていかれたのでしょうか。
コロナ禍でのドラマ制作ということで、脚本の坂元裕二さんとは、「わかりやすく、明るく楽しく観ることのできるドラマにしよう」ということで意見が一致していました。そこで、視聴者に観てもらいやすいように1話完結の形にしたんです。また、連続ドラマの強みとして、縦軸の大きなうねり、例えば事件モノだと、主人公が大きな問題や秘密を抱えていて、それが全話のストーリーを貫くといった作り方があると思いますが、今回はそういうものは背負わせないようにしようと決めました。そのうえで、どうやって毎週楽しみに観てもらおうかと考えに考え、キャラクターを愛してもらうしかないと思い至ったんです。
――キャラクターを愛してもらうための工夫とは?
キャラクターを掘り下げていく作業に注力しました。坂元さんが作ったキャラクターの履歴書があるので、それに基づいて主人公の大豆田とわ子(松たか子)の住む場所や、会社の所在地、通勤の方法や、どういうものを食べるのかなど、衣食住にまつわるシーンは、1つひとつ設定を話し合って決めていきました。例えば、マーボー豆腐を作るときに、とわ子はひき肉を冷凍庫に入れておくタイプじゃないから、バラ肉を叩いて粗目のひき肉にして作ろうとか、リビングではパジャマで過ごさないとか、メインキャラクターの美意識みたいなものを確認していったんです。そういうふうに、話し合えるスタッフィングにしたことが人物に深みを与え、おっしゃるような“コク”につながったのかもしれません。
――ドラマの人物像の設定はそういう話し合いで作り上げていくものなのですか。
アプローチは人それぞれですし、原作モノだとまたやり方は異なると思うのですが、オリジナル脚本の場合、私はかなり話し合いますね。作家さんの中にあるものを引き出したいし、それと視聴者との架け橋を作るのがプロデューサーである私の役目だと思っていますから。また、今回の制作チームは連ドラを主に作っているスタッフではなく、若い人も多かったので、“連ドラってこういうもの”という既成概念に囚われていなかったことも良かったと思っています。私も周囲の目をあまり気にせず、やりたいことをやろう、そんな気持ちで臨みました。
――今回のドラマの制作はいつ頃から始まったのでしょうか。
17年の『カルテット』以降、坂元さんとは時々食事をしたり、イベントに一緒に登壇したりと交流は続いていて、常々また一緒にやろうと話していました。ドラマ作りが本格化したのは、コロナが流行り始めた昨年の1〜2月頃だったと思います。今の会社への転職が見えてきたあたりから、1発目は坂元さんと一緒にやりたいとLINEやメールでやり取りしているうちに、コロナ感染拡大でひどい状況になっていって…。世の中の雰囲気が暗く閉塞感もあったので、人生を楽しんでいる人の話にしよう、つらい出来事があっても、あまり重くしすぎないようにしよう、といった方針をスタート時点で決めました。そういう意味で、このドラマはコロナ禍だからこそ生まれたドラマとも言えますね。40歳前後の東京で生きる女性の話は、坂元さんとの雑談の中から生まれていったというのはあると思います。
■登場人物の人間性が立ち上ってくる坂元裕二脚本の凄み
――ドラマは今の世の中の雰囲気を映しだすのが魅力です。そういった中でファンタジーとリアリティのバランスのとり方が重要だと思いますが、その点に関してどのようにお考えですか。
コロナ禍だったので、まずドラマの中でコロナを扱うかどうかが最初の選択肢となります。今回は“ロマンティックコメディ”をやりたかったので、リアルなコロナ禍を描くなかでコメディをやるのは難しいことや、恋愛を扱うので身体的接触が描きにくいのは厳しいと判断しました。リアルとファンタジーの塩梅について、そう深く考えたわけではありませんが、例えば『エミリー、パリへ行く』(Netflix配信中)の主人公のエミリーはすごくファッショナブルです。(赴任先のフランスに向かう際の)スーツケースの中に何着の洋服が入っているんだろう、あの服の量だと1つじゃ済まないよな、なんて思ったりもしますが、素敵なエミリーを観ていたらそんなことは気にならなくなる。このドラマも同じで、とにかく素敵な世界を作って、ヒロイン・とわ子を魅力的に見せたいと考えました。最初に全スタッフが集まって打合せした際に伝えたのは、このポイントでした。
――とわ子の言動の1つひとつに妙に納得感があったのは、人物像がしっかりスタッフに共有されていたからなんですね。
坂元さんの脚本は登場人物の語尾はもちろん、一人称の“俺”なのか“僕”なのか、ちょっとしたことまできめ細かく描かれていて、そこから人間性が立ち上ってきます。そういう意味では、台本が指示書なんです。それを読んだスタッフが、それぞれに考えてくれたので、人物像がブレなかったのだと思います。そして、松さんがとわ子を演じてさらに肉付けし、育てていってくれました。
――ドラマでは元妻であり、母であり、友人であり、社長であるとわ子の多様な表情を楽しめましたし、典型的なわかりやすいつながりではない関係性も描かれていて、気づきも多かったです。
“〇〇ってこうだよね”と一言で言い表せないもの、わかりやすく規定されたものからはみ出た何かを10話をかけて描いていくのが坂元さんの脚本だと思います。『それでも生きていく』(11年)や『最高の離婚』(13年)もそうでした。人間関係にはグラデーションがあって、簡単に規定できるものではありません。とわ子は “シングルマザー”ですが、その言葉から想起するある種のイメージ像には当てはまらない。だから、物語の中でシングルマザーという言葉は使われていません。そういった坂元さんの人の描き方に私も共感するところが多いです。私も他者に自分を規定されたくありませんから。そういう価値観を共有できることが、坂元さんとは一緒に楽しくドラマ制作ができている理由の1つなのだと思っています。
――とくに最終回の、とわ子が、自分の母と関係のあった人の元を娘と一緒に訪れるシーンは、とても印象的で余韻を残しました。
あのシーンは賛否両論ありましたが、議論になるということは、社会の価値観が、あまり好きな言葉ではないけれど“アップデートされている”ことの表れだと感じました。そういう意味でも、今回のドラマは学びが多かったです。視聴者の方たちが真剣に観てくださっているからこそ、いろんな意見が出てくるのだろうし。いろんな海外ドラマを観る機会も増えて、視聴者のリテラシーが上がっていることも感じます。それは作り手にとって励みになりますし、私自身もっともっと学んで頑張らなきゃいけないと思いますね。
■価格に見合う内容にしなければならないという使命感 パッケージは特典映像満載
――日本のドラマは1クール10話完結が一般的ですが、その枠組みから解き放たれて、もっと長いドラマを作りたいと思うことはないですか。
20話かけて作りたいというテーマがあれば考えますが、コロナ禍の撮影は本当に大変だったので、今は「やり切った」気持ちでいっぱいです。なにせ、撮影日のほとんどが、「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の最中で、かなり緊張を強いられましたから。テーマに合わせて話数を自由に決められたらいいなとは思いますが、全10話でドラマを作り続けてきてもう15年になるので、さらに話数を伸ばすというイメージが湧かないですね。それに私は飽きっぽいほうなので、3ヶ月みっちり撮影をやったらそれでいっぱいいっぱい。できれば、次は少ない話数のドラマを作ってみたいと思います。
――ドラマ以外の映像制作に興味は湧きませんか。
映画を観るのは好きなのですが、2時間の尺に収めるのは難しいと思いますし、さらに1900円払ってもらって、決まった時間にスクリーンの前に足を運ばせるほどの強度を持つ作品を作るって、本当に大変なことだと思うんですよ。その点、TVはタダで観ることのできる良さ、気楽さがありますよね。意図せずに観てしまう偶然性や、いきなり目に飛び込んでくる暴力性もありますが、そういう複雑な機能を持つTVを信じているところもあって、私にできることもあるんじゃないかと思っています。
――そんなタダで観れるTVドラマですが、11月5日には、Blu-ray&DVD-BOXが発売されます。特典映像にはキャストと坂元さんによる座談会や約80分に及ぶロングメイキング集、スタッフインタビューなど、これでもかと言わんばかりの盛りだくさんの内容です。
自分で言うのもなんですが、今回はかなり頑張りました。ストーリーを追うのであればいろんな視聴方法があるなかで、敢えてパッケージを購入してくださる方たちがいるわけです。その価格に見合う内容にしなければならないという使命感のような思いがすごくあります(笑)。キャストやスタッフが作品に愛着を感じてくださっていたので、とても協力的で助かりました。坂元さんも「僕にできることは何でも言って」と言ってくださって、驚くと同時に嬉しかったですね。どんな特典が欲しいのか、Twitterで視聴者の方たちにリクエストを募り、できることは応えたいと考えました。
――パッケージのイラストは、佐野さんのアイデアだそうですね。
ドラマのポスターは撮影に入る前に宣伝用に撮るものなんです。撮影が進むにつれ、役者さんの顔つきも変わっていくので、できればポスターを使いたくなかったというのがあります。ずっとこういうイラストのパッケージを作ってみたかったので、今回はわがままを通していただけて感謝していますし、サヌキさんがとても素敵なイラストを描いてくださり嬉しいです。
『大豆田とわ子と三人の元夫』では、演者たちの衣装を紹介するInstagramアカウントを開設したことでも話題を呼んだ。「洋服をきちんと見せて、いい洋服をブランド側から借りられるシステムを作るのが目的」だったということだが、こうした新たな試みも、柔軟な発想で組まれたスタッフィングによるものだ。手探りで突き進んだことが、結果、今作のエネルギーにつながったと、佐野プロデューサーは振り返る。現在は、来年放送予定のドラマを2本、同時進行で制作中だ。「これまで1本に集中するスタイルだったので大変ですが、自分の殻を破って次のステージに行くチャンス」と、自身を叱咤激励しているという。果たして次作では、どんな型破りな内容で楽しませてくれるのか、楽しみに待ちたい。
文・カツラギヒロコ
■佐野亜裕美氏 プロフィール
1982年静岡県生まれ。東京大学卒業後、06年にTBSテレビ入社。『王様のブランチ』を経て09年にドラマ制作に異動し、『渡る世間は鬼ばかり』のADに。『潜入探偵トカゲ』『刑事のまなざし』『ウロボロス この愛こそ、正義。』『おかしの家』『99.9 刑事専門弁護士』『カルテット』『この世界の片隅に』などをプロデュース。20年6月に関西テレビに転職し、『大豆田とわ子と三人の元夫』を担当した。
『大豆田とわ子と三人の元夫』
[Blu-ray BOX]
価格:31,680円(税込)
発売日:2021年11月5日(金)
収録:本編+チェインストーリー+特典映像
DISC:4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)
[DVD-BOX]
価格:25,740円(税込)
発売日:2021年11月5日(金)
収録:本編+チェインストーリー+特典映像
DISC:7枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク2枚)
■毎週楽しみに観てもらうために、キャラクターを掘り下げていく作業に注力
――『大豆田とわ子と三人の元夫』は、多彩で個性的な人物たちと、複雑味のあるつながりが描かれた、味わい深い“コク”のあるドラマでした。あの“コク”はどのように作り上げていかれたのでしょうか。
――キャラクターを愛してもらうための工夫とは?
キャラクターを掘り下げていく作業に注力しました。坂元さんが作ったキャラクターの履歴書があるので、それに基づいて主人公の大豆田とわ子(松たか子)の住む場所や、会社の所在地、通勤の方法や、どういうものを食べるのかなど、衣食住にまつわるシーンは、1つひとつ設定を話し合って決めていきました。例えば、マーボー豆腐を作るときに、とわ子はひき肉を冷凍庫に入れておくタイプじゃないから、バラ肉を叩いて粗目のひき肉にして作ろうとか、リビングではパジャマで過ごさないとか、メインキャラクターの美意識みたいなものを確認していったんです。そういうふうに、話し合えるスタッフィングにしたことが人物に深みを与え、おっしゃるような“コク”につながったのかもしれません。
――ドラマの人物像の設定はそういう話し合いで作り上げていくものなのですか。
アプローチは人それぞれですし、原作モノだとまたやり方は異なると思うのですが、オリジナル脚本の場合、私はかなり話し合いますね。作家さんの中にあるものを引き出したいし、それと視聴者との架け橋を作るのがプロデューサーである私の役目だと思っていますから。また、今回の制作チームは連ドラを主に作っているスタッフではなく、若い人も多かったので、“連ドラってこういうもの”という既成概念に囚われていなかったことも良かったと思っています。私も周囲の目をあまり気にせず、やりたいことをやろう、そんな気持ちで臨みました。
――今回のドラマの制作はいつ頃から始まったのでしょうか。
17年の『カルテット』以降、坂元さんとは時々食事をしたり、イベントに一緒に登壇したりと交流は続いていて、常々また一緒にやろうと話していました。ドラマ作りが本格化したのは、コロナが流行り始めた昨年の1〜2月頃だったと思います。今の会社への転職が見えてきたあたりから、1発目は坂元さんと一緒にやりたいとLINEやメールでやり取りしているうちに、コロナ感染拡大でひどい状況になっていって…。世の中の雰囲気が暗く閉塞感もあったので、人生を楽しんでいる人の話にしよう、つらい出来事があっても、あまり重くしすぎないようにしよう、といった方針をスタート時点で決めました。そういう意味で、このドラマはコロナ禍だからこそ生まれたドラマとも言えますね。40歳前後の東京で生きる女性の話は、坂元さんとの雑談の中から生まれていったというのはあると思います。
■登場人物の人間性が立ち上ってくる坂元裕二脚本の凄み
――ドラマは今の世の中の雰囲気を映しだすのが魅力です。そういった中でファンタジーとリアリティのバランスのとり方が重要だと思いますが、その点に関してどのようにお考えですか。
コロナ禍だったので、まずドラマの中でコロナを扱うかどうかが最初の選択肢となります。今回は“ロマンティックコメディ”をやりたかったので、リアルなコロナ禍を描くなかでコメディをやるのは難しいことや、恋愛を扱うので身体的接触が描きにくいのは厳しいと判断しました。リアルとファンタジーの塩梅について、そう深く考えたわけではありませんが、例えば『エミリー、パリへ行く』(Netflix配信中)の主人公のエミリーはすごくファッショナブルです。(赴任先のフランスに向かう際の)スーツケースの中に何着の洋服が入っているんだろう、あの服の量だと1つじゃ済まないよな、なんて思ったりもしますが、素敵なエミリーを観ていたらそんなことは気にならなくなる。このドラマも同じで、とにかく素敵な世界を作って、ヒロイン・とわ子を魅力的に見せたいと考えました。最初に全スタッフが集まって打合せした際に伝えたのは、このポイントでした。
――とわ子の言動の1つひとつに妙に納得感があったのは、人物像がしっかりスタッフに共有されていたからなんですね。
坂元さんの脚本は登場人物の語尾はもちろん、一人称の“俺”なのか“僕”なのか、ちょっとしたことまできめ細かく描かれていて、そこから人間性が立ち上ってきます。そういう意味では、台本が指示書なんです。それを読んだスタッフが、それぞれに考えてくれたので、人物像がブレなかったのだと思います。そして、松さんがとわ子を演じてさらに肉付けし、育てていってくれました。
――ドラマでは元妻であり、母であり、友人であり、社長であるとわ子の多様な表情を楽しめましたし、典型的なわかりやすいつながりではない関係性も描かれていて、気づきも多かったです。
“〇〇ってこうだよね”と一言で言い表せないもの、わかりやすく規定されたものからはみ出た何かを10話をかけて描いていくのが坂元さんの脚本だと思います。『それでも生きていく』(11年)や『最高の離婚』(13年)もそうでした。人間関係にはグラデーションがあって、簡単に規定できるものではありません。とわ子は “シングルマザー”ですが、その言葉から想起するある種のイメージ像には当てはまらない。だから、物語の中でシングルマザーという言葉は使われていません。そういった坂元さんの人の描き方に私も共感するところが多いです。私も他者に自分を規定されたくありませんから。そういう価値観を共有できることが、坂元さんとは一緒に楽しくドラマ制作ができている理由の1つなのだと思っています。
――とくに最終回の、とわ子が、自分の母と関係のあった人の元を娘と一緒に訪れるシーンは、とても印象的で余韻を残しました。
あのシーンは賛否両論ありましたが、議論になるということは、社会の価値観が、あまり好きな言葉ではないけれど“アップデートされている”ことの表れだと感じました。そういう意味でも、今回のドラマは学びが多かったです。視聴者の方たちが真剣に観てくださっているからこそ、いろんな意見が出てくるのだろうし。いろんな海外ドラマを観る機会も増えて、視聴者のリテラシーが上がっていることも感じます。それは作り手にとって励みになりますし、私自身もっともっと学んで頑張らなきゃいけないと思いますね。
■価格に見合う内容にしなければならないという使命感 パッケージは特典映像満載
――日本のドラマは1クール10話完結が一般的ですが、その枠組みから解き放たれて、もっと長いドラマを作りたいと思うことはないですか。
20話かけて作りたいというテーマがあれば考えますが、コロナ禍の撮影は本当に大変だったので、今は「やり切った」気持ちでいっぱいです。なにせ、撮影日のほとんどが、「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の最中で、かなり緊張を強いられましたから。テーマに合わせて話数を自由に決められたらいいなとは思いますが、全10話でドラマを作り続けてきてもう15年になるので、さらに話数を伸ばすというイメージが湧かないですね。それに私は飽きっぽいほうなので、3ヶ月みっちり撮影をやったらそれでいっぱいいっぱい。できれば、次は少ない話数のドラマを作ってみたいと思います。
――ドラマ以外の映像制作に興味は湧きませんか。
映画を観るのは好きなのですが、2時間の尺に収めるのは難しいと思いますし、さらに1900円払ってもらって、決まった時間にスクリーンの前に足を運ばせるほどの強度を持つ作品を作るって、本当に大変なことだと思うんですよ。その点、TVはタダで観ることのできる良さ、気楽さがありますよね。意図せずに観てしまう偶然性や、いきなり目に飛び込んでくる暴力性もありますが、そういう複雑な機能を持つTVを信じているところもあって、私にできることもあるんじゃないかと思っています。
――そんなタダで観れるTVドラマですが、11月5日には、Blu-ray&DVD-BOXが発売されます。特典映像にはキャストと坂元さんによる座談会や約80分に及ぶロングメイキング集、スタッフインタビューなど、これでもかと言わんばかりの盛りだくさんの内容です。
自分で言うのもなんですが、今回はかなり頑張りました。ストーリーを追うのであればいろんな視聴方法があるなかで、敢えてパッケージを購入してくださる方たちがいるわけです。その価格に見合う内容にしなければならないという使命感のような思いがすごくあります(笑)。キャストやスタッフが作品に愛着を感じてくださっていたので、とても協力的で助かりました。坂元さんも「僕にできることは何でも言って」と言ってくださって、驚くと同時に嬉しかったですね。どんな特典が欲しいのか、Twitterで視聴者の方たちにリクエストを募り、できることは応えたいと考えました。
――パッケージのイラストは、佐野さんのアイデアだそうですね。
ドラマのポスターは撮影に入る前に宣伝用に撮るものなんです。撮影が進むにつれ、役者さんの顔つきも変わっていくので、できればポスターを使いたくなかったというのがあります。ずっとこういうイラストのパッケージを作ってみたかったので、今回はわがままを通していただけて感謝していますし、サヌキさんがとても素敵なイラストを描いてくださり嬉しいです。
『大豆田とわ子と三人の元夫』では、演者たちの衣装を紹介するInstagramアカウントを開設したことでも話題を呼んだ。「洋服をきちんと見せて、いい洋服をブランド側から借りられるシステムを作るのが目的」だったということだが、こうした新たな試みも、柔軟な発想で組まれたスタッフィングによるものだ。手探りで突き進んだことが、結果、今作のエネルギーにつながったと、佐野プロデューサーは振り返る。現在は、来年放送予定のドラマを2本、同時進行で制作中だ。「これまで1本に集中するスタイルだったので大変ですが、自分の殻を破って次のステージに行くチャンス」と、自身を叱咤激励しているという。果たして次作では、どんな型破りな内容で楽しませてくれるのか、楽しみに待ちたい。
文・カツラギヒロコ
■佐野亜裕美氏 プロフィール
1982年静岡県生まれ。東京大学卒業後、06年にTBSテレビ入社。『王様のブランチ』を経て09年にドラマ制作に異動し、『渡る世間は鬼ばかり』のADに。『潜入探偵トカゲ』『刑事のまなざし』『ウロボロス この愛こそ、正義。』『おかしの家』『99.9 刑事専門弁護士』『カルテット』『この世界の片隅に』などをプロデュース。20年6月に関西テレビに転職し、『大豆田とわ子と三人の元夫』を担当した。
『大豆田とわ子と三人の元夫』
[Blu-ray BOX]
価格:31,680円(税込)
発売日:2021年11月5日(金)
収録:本編+チェインストーリー+特典映像
DISC:4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)
[DVD-BOX]
価格:25,740円(税込)
発売日:2021年11月5日(金)
収録:本編+チェインストーリー+特典映像
DISC:7枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク2枚)
2021/11/05