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瀬々敬久監督、釜山国際映画祭で佐藤健を激賞「一番クレバー」

 「このミステリーがすごい!」受賞作家・中山七里氏の同名小説を瀬々敬久監督が映画化した『護られなかった者たちへ』(公開中)。連続殺人事件の容疑者として追われる主人公・利根役を佐藤健、彼を追う刑事・笘篠役を阿部寛が演じ、そのほか、清原果耶林遣都永山瑛太緒形直人吉岡秀隆倍賞美津子らが出演する同作が、「第26回釜山国際映画祭」A Window on Asian Cinema部門にて上映され、上映後のティーチインイベントに瀬々監督がオンラインで参加した。

映画『護られなかった者たちへ』が上映された第26回釜山国際映画祭のティーチインイベントにオンラインで参加した瀬々敬久監督(現地の写真)

映画『護られなかった者たちへ』が上映された第26回釜山国際映画祭のティーチインイベントにオンラインで参加した瀬々敬久監督(現地の写真)

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 この日のチケットは完売しており、多くの観客が見つめる中、監督とのオンラインQ&Aも大いに盛り上がった様子を伝えるオフィシャルレポートが到着した。

 「楽しんでいますか?」という瀬々監督の呼びかけに、映画を観終わった現地の観客からは拍手が上がった。瀬々監督は「僕自身若い頃から韓国映画をよく観ていて、影響も受けています。釜山国際映画祭は大好きな映画祭ですし、『菊とギロチン』ではAPM(アジアン・プロジェクト・マーケット。資金調達が完了していない長編フィクション映画をアジアから選出し、釜山国際映画祭の開催期間中に賞金授与やポストプロダクション支援など、さまざまなサポートを提供する、アジア最大のプロジェクトマーケット)で支援を得ることができました。本当に釜山国際映画祭を応援していますし、この映画祭が無事に終わることを願っています」と、縁が深い釜山国際映画祭への思いを明かした。

 「原作を読んだ時一番注目した点は?」というMCからの質問に対して、監督は「まずはタイトルにひかれました。強い意味のあるタイトルだし、最後にそのタイトルがメッセージとして表現されるところに魅力を感じました。そして、この映画では二つの不条理を描こうとしました。ひとつは社会制度の不条理、そしてもうひとつは人間が立ち向かうことのできない天災・震災、この2つの不条理。最終的には、その不条理に立ち向かう人間が愛する人たちと一緒に暮らしていこうとする姿、そうして未来を信じようとする姿を描こうと思い、この作品を撮影しました。コロナで大変な状況ですが、そういう状況もこの映画と似ているところもあると思います」と答えた。

 続いて現地の観客からの質問に答えるコーナーに。佐藤演じる主人公・利根がある人物に会うために公園を訪れるシーンで、その一角で踊る女性の演出意図を尋ねられると、「佐藤さん(演じる利根)の『死んでいい人なんていないんだ』というせりふを、より記憶してたいだけるように特徴的なシーンとしてを印象付ける意図がありました。また、大災害に対する祈りのようなイメージとして捉えてもらえないかなとも思いました。日本でも、あのシーンの意図を聞かれますが、映画というのは謎があった方が面白いと思います」と監督。

■佐藤健は「良い人をやるのは、実はつらい」と言っていた

 さらに、涙を流しながら作品を観たという観客から「作品に込めたメッセージ」を尋ねられると、「ひとつは震災の避難所で利根、けいさん、カンちゃんという3人が出会って、疑似家族を築きます。どんな状況においても、人間は人間らしく生きようとする、前向きなメッセージを伝えようとしました。ただ、そういう人達を助けてあげることのできない社会制度、そういうものに対して声をあげることの大切さ、人と人がつながって生きていくことの大切さも訴えようと思って作った作品です」と、監督は丁寧に答える。

 次に佐藤の起用理由と、撮影してみての感想を尋ねられると、「以前『8年越しの花嫁 奇跡の実話』という作品で佐藤さんに出てもらったことがありますが、その時の役は好青年で、その時に佐藤さんが『良い人をやるのは、実はつらいんです』と言っていたことを覚えています。その後佐藤さんは『ひとよ』で少しだけ悪い役を演じていて、“彼はこういう役もできるのか”と思い、今回お願いしました。佐藤さんは、僕が知っている日本の若手の俳優の中で一番クレバーだと思っています。映画の本質をキャッチして、その中で自分がどういう人物を演じればいいかを判断できます。脚本の段階からいろいろな話をして、一緒に映画を作ることができる素晴らしい俳優です。何より役を演じることにすごく熱心で、休憩中もこの利根という登場人物であろうとしていました」と佐藤を絶賛した。

 また、ラストシーンへの思いを尋ねられると、「あのラストシーンの場所の付近に住んでいる方は、高い防潮堤ができて、海を見ることができなくなりました。ある人たちにとっては、海は見たくないものかもしれません。ただ、映画の最後で“海を見る”ということで、劇中の事件を違った角度で見ることができたのではないかと思います。憎しみの海ではなくて、“海の向こうに愛する人がいる“そんな海に見えたかもしれません。そこでの『ありがとう』というせりふが重要な意味を持っていると思います。和解して、未来に向かって生きようとする姿だと思って、このラストシーンをつくりました」と思いを明かした。

 そして「英語タイトル『In the Wake』に込められた意味は?」という質問には「 “wake”には余波という意味と、死者を見送るという意味があり、このタイトルにしました」と答えた。

 最後に、「僕も韓国映画をたくさん観て、勉強して、いま映画を撮ることができています。これからも日本と韓国、映画を通して、お互いに新しい未来に向かって進んでいければと思います。今日はありがとうございました」と現地の観客にメッセージを送り、大きな拍手に包まれながらイベントは幕を閉じた。

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  • パソコンに向かって質問に答える瀬々監督
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