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【おかえりモネ】物語の最後は“希望” 脚本・安達奈緒子が込めた思い

 女優の清原果耶がヒロインを務める、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(月〜土 前8:00 総合/前 7:30 BS4K・BSプレミアム※土曜日は1週間の振り返り)。29日に最終回を迎える本作は、放送も残すところ2週となり、第23週「大人たちの決着」(18日〜22日)の前に、脚本を担当した安達奈緒子氏のコメントが16日、到着した。

『おかえりモネ』でヒロイン・永浦百音を演じた清原果耶(C)NHK

『おかえりモネ』でヒロイン・永浦百音を演じた清原果耶(C)NHK

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 安達氏といえば、清原がドラマ初主演を果たした『透明なゆりかご』や、本作にも出演する内野聖陽西島秀俊が共演する『きのう何食べた?』や『劇場版コード・ブルー −ドクターヘリ緊急救命−』(2018年)など、数々のヒット作を生み出してきた。そして、2年以上『おかえりモネ』という作品に向き合い、いま感じる気持ち、再びタッグを組むことになった清原の魅力を語ってくれた。

――全話を書き終えた今の気持ちは?

2年以上、『おかえりモネ』という作品と向き合ってきたので、多少は解放感のようなものを味わえるのではと想像していましたが、書き終えた今のほうが、時間ができたぶん四六時中このドラマのことばかり考えてしまって、「終わった」という感覚は今のところまだありません。そんな中で、この作品に携わってくださった方々への敬服のような気持ちがよりいっそう募ってきています。書いている最中は無我夢中ということもあり、物語に没入していましたが、これまでの過程を振り返るようになると、取材でお話をうかがったり、協力をお願いしたりした宮城の方々のお力はもちろんのこと、現場のスタッフや俳優の皆さまをはじめ、たくさんの人がこの作品にかかわり力を貸してくださったことで、なんとかかんとか作り上げることができたのだと改めて強く感じています。

皆が限界まで何ができるかを考え、表現してくださった跡が画面にありありと現れていて、ほんとうにみんなすごい、と、わたしが今いちばん、この作品のすごみに気圧されているような状態です。自分も考え得る限り考え、現時点で提示できるものはこれだ、というものを書いてきたつもりですが、それが携わってくださった方々の「思い」や「力」に見合うものだったのかどうか、冷静に考えられるようになるのは、放送が終わってしばらく経ってからだろうと思います。

――ヒロインを演じた清原についての感想は?

ヒロインの百音は、清原さんを信じ切って書いていました。そしてやはり演じていただけて本当に良かったと思っています 。

百音は10代にして「当事者でありながら、当事者ではない」という難しい立場に立たされた女性です。たった15歳で強烈に抱いてしまった罪悪感を胸に刻みつつ生きねばならない若者の、しかも19歳から24歳という短い期間を演じることは 容易ではなかったと思います。大人として成長していく、いちばん瑞々しくまぶしいくらいに輝いている年頃を「痛み」を伴いながら生きる。しかもその「痛み」は他者から見てわかりやすいものではないので、自分の中に抑えこんでしまったりする。それでも出会った人たちと自身を照らし合わせていくことで、「痛み」と向き合い昇華させていくさまを、清原さんが緻密に、繊細に表現してくださいました。

物語の中で、まるで実際に5年間を経たかのように、百音の顔が19歳と24歳でまったく違います。どうしたらこんなふうに顔が変わるように演じられるのだろうと思わず画面を見つめてしまいます。わたしはもちろんですが、視聴者の皆さまにとっても、これからもずっと目が離せない存在になっていくだろうと思います。『おかえりモネ』は清原果耶さんがいてくれたからこそ表現できた物語です。

――東日本大震災を背景としたドラマを描く上で、どのようなことを考えたのか。

東日本大震災を背景にドラマを描く、ということについては、おそらくこれから先もずっと考え続けると思います。正解は見つけられないと思いますし、正解を見つけようとすること自体が違うのではないかとの考えもあります。ですが「その人の苦しみは、その人でなければ絶対に理解できない」という大前提から始めて、話を聞き、考えて得た震災に対する「伝えたい思い」は提示すべきだろうと。チームにそれをお話しして、それぞれのお考えも聞きました。

現場は最後の最後まで力を尽くしてくださいました。当然のことながら提示したものが、すべての人に受け入れられるとは考えていません。ご協力いただいている宮城の皆さまの思いもうかがいました。その上で、自然との共生や「痛み」について描いてきたこの物語の帰結をどのように表現するかを決めました。百音と未知(蒔田彩珠)が出した答え、耕治さん(内野聖陽)と新次さん(浅野忠信)が出した答えに、それを託しています。


――朝ドラという半年近くにわたって放送するドラマを書いた感想は?

「ゆっくり」「時間をかけて」表現してよい場は、今あまり残されていないように思います。一見して魅力的だと感じてもらえないと切られてしまうし、長いと最後までつきあってもいただけない。でもこの『朝ドラ』というものは、半年近く、なんとなくでもたくさんの方の目の端に入る可能性が高い。学校のクラスにはいるけど、あまり話したこともないし、なんか変な人っぽい、みたいな感じでずっとそばにいられたらいいなと思っていました。

「ゆっくり」「時間をかけて」接してみたら案外味があるところもあって、一緒にいる時間が今は楽しい、そんなふうに最後は思ってもらえたらうれしいですし、やっぱり変なヤツだったし好きにはなれないけど、まあ、あの人の人生だしそれはそれでいいや、みたいに思ってもらえても、それもありがたいと思います。視聴者の方々とドラマの中で生きる人たちが、「ゆっくり」「時間をかけて」 関係性を構築することを許してくれるのが『朝ドラ』であり、やはりとても貴重な場だったと思っています。

――物語は終盤に。視聴者へのメッセージは。

ここまで見てくださって本当にありがとうございました。心から感謝しています。受け止めてくれる方がいなければ物語は成立しません。どんな受け止め方もあってよいと思います。ですが、やはりほんの少しでも、優しい気持ちや胸が熱くなるような感覚を抱いてもらえていますように、と願ってしまう自分がいます。誰もが以前よりも苦しい日々を過ごされている中で、最後は希望を感じていただけるように書いたつもりです。そしてチームの皆さまが、それをより力強く表現してくださっています。あと少しとなり、わたしはとにかく寂しくてたまりませんが、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。

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