俳優の松山ケンイチが主演し、22日にNHK総合で放送される『NHKスペシャル ドラマ「こもりびと」』(後9:00〜10:30)。“中高年のひきこもり”取材班の膨大な取材の蓄積をもとに、当事者の声をドラマで描く。10年以上ひきこもり生活を送る主人公を演じた松山が、本作を通じて得た気づきとは?
重いストレスを抱え、働けなくなってしまった倉田雅夫(松山)。厳格な父・一夫(武田鉄矢)は元教師で、地元でも尊敬を集める存在だったが、雅夫の存在を世間から隠し、立ち直らせることもあきらめていた。しかし、自らの余命宣告を機に、最後にもう一度息子と向き合うことに。一方の雅夫は、閉ざされた部屋の中で人知れず、引きこもりから抜け出す道を必死で探っていたのだが…。
――撮影を振り返っていかがでしたか?
【松山】ほぼ再起不能になってしまうくらい雅夫自身が傷ついて、部屋から出られなくなってしまった心理状態を、部屋の中でどうやって表現するか、俳優としてはすごく難しいところではありました。
――役作りで参考にしたことは?
【松山】リサーチしようにもひきこもりの特性上、難しいものがあって、そんな中、NHKスペシャル班のドキュメンタリーが参考になりました。少しだけですが、完全に克服したとは言えないまでも、外に出れるようになった方からお話を聞くこともできました。それから、「ひきポス」(ひきこもり当事者や経験者の生の声を発信している情報発信メディア)。そこに書かれていたものを読んだら、共感しかなかったんです。
たぶん、自分も彼らと同じ要素を持っていて、ひきこもる可能性を秘めている。関係のない人たちが作り上げたステレオタイプのひきこもりを演じて、全く違うものになってしまうのが怖かったですし、せっかくドラマを作るなら、当事者の方たちにも見ていただいて、共感していただけるといいなと思っていたので、自分がひきこもり当事者や経験者の声に共感した部分を大事に、演じました。
――ひきこもりについて、新たな気づきとは?
【松山】雅夫の衣装の候補の中にパーカーがあったんです。ですが、ひきこもり当事者によると、すぐに横になって寝るにはパーカーのフードは邪魔でしかない、パーカーは絶対にないって。すぐ寝れる一方で、すぐ外出もできる格好をしている、という意見があってすごく面白いと思いました。
今回、僕は時間をかけて無精ひげを生やして撮影に臨みましたが、ひきこもりの方がみんなひげを伸ばしっぱなしかというと、そういう方もいるけど、僕がお会いした方、資料で見た方の中にはいなかったですね。いつでも外に出られるにしているんだけど、出られない苦しみと戦っている方もいる。雅夫みたいに、身だしなみを気にしなくなるのは、人に会うこと、社会に出ることをあきらめている表れ。そこも自分が共感する部分でした。実は仕事してない時の僕は、雅夫みたいな感じです(笑)。
――本作では挿入歌にTHE BLUE HEARTS(1987年メジャーデビュー、95年に解散)の楽曲が用いられ、ひきこもりの息子と父親が歌詞を引用しながらSNSで会話するシーンもあります。
【松山】高校生の頃、よく聴いて、よく歌っていました。今回、台本の中に歌詞が引用されていたので、久しぶりにじっくり歌詞を見て、全然捉え方が違っていて驚きました。こういう歌詞だったんだ、と。高校生の頃には感じられなかった繊細さ、優しさに気づきました。雅夫が言いたいことを全部言ってくれている。演じる上で、気持ちよく乗っからせていただいて、助けられました。
――父親役の武田さんとは?
【松山】今回、武田さんと僕は役柄的に敵同士。撮影現場でひと言もしゃべらないつもりでいたくらいだったんですが、ちょこちょこしゃべってしまいました(笑)。この作品で伝えたいことが武田さんにもあったし、僕にもあったし、そういうことをお互い強く感じ合っていた気がします。
――松山さんが伝えたいと思ったことは?
【松山】ひきこもりになった理由も、ひきこもり方にもいろいろありますが、大事なことを“ひきこもる”という形で社会に訴えかけているようにも感じました。思いやりや優しさの欠けた、効率ばかり求める社会から排除され、傷ついてきた人たちがNOと言っているような。ものすごく社会に影響を与える力をもった存在でもあるな、と感じます。だからドキュメンタリーにもなるし、ドラマにもなるんだと思いました。当事者の方に触れて、「忘れていたな」って気付かされて、僕自身にとっても学ぶことも多かった作品。ステレオタイプのひきこもりからこの作品を通して少しでもその印象が変化していくことを期待していますし、各々の捨ててしまったもの、忘れてしまったものを振り返る機会になっていただけたらと思っています。
重いストレスを抱え、働けなくなってしまった倉田雅夫(松山)。厳格な父・一夫(武田鉄矢)は元教師で、地元でも尊敬を集める存在だったが、雅夫の存在を世間から隠し、立ち直らせることもあきらめていた。しかし、自らの余命宣告を機に、最後にもう一度息子と向き合うことに。一方の雅夫は、閉ざされた部屋の中で人知れず、引きこもりから抜け出す道を必死で探っていたのだが…。
――撮影を振り返っていかがでしたか?
【松山】ほぼ再起不能になってしまうくらい雅夫自身が傷ついて、部屋から出られなくなってしまった心理状態を、部屋の中でどうやって表現するか、俳優としてはすごく難しいところではありました。
――役作りで参考にしたことは?
【松山】リサーチしようにもひきこもりの特性上、難しいものがあって、そんな中、NHKスペシャル班のドキュメンタリーが参考になりました。少しだけですが、完全に克服したとは言えないまでも、外に出れるようになった方からお話を聞くこともできました。それから、「ひきポス」(ひきこもり当事者や経験者の生の声を発信している情報発信メディア)。そこに書かれていたものを読んだら、共感しかなかったんです。
たぶん、自分も彼らと同じ要素を持っていて、ひきこもる可能性を秘めている。関係のない人たちが作り上げたステレオタイプのひきこもりを演じて、全く違うものになってしまうのが怖かったですし、せっかくドラマを作るなら、当事者の方たちにも見ていただいて、共感していただけるといいなと思っていたので、自分がひきこもり当事者や経験者の声に共感した部分を大事に、演じました。
――ひきこもりについて、新たな気づきとは?
【松山】雅夫の衣装の候補の中にパーカーがあったんです。ですが、ひきこもり当事者によると、すぐに横になって寝るにはパーカーのフードは邪魔でしかない、パーカーは絶対にないって。すぐ寝れる一方で、すぐ外出もできる格好をしている、という意見があってすごく面白いと思いました。
今回、僕は時間をかけて無精ひげを生やして撮影に臨みましたが、ひきこもりの方がみんなひげを伸ばしっぱなしかというと、そういう方もいるけど、僕がお会いした方、資料で見た方の中にはいなかったですね。いつでも外に出られるにしているんだけど、出られない苦しみと戦っている方もいる。雅夫みたいに、身だしなみを気にしなくなるのは、人に会うこと、社会に出ることをあきらめている表れ。そこも自分が共感する部分でした。実は仕事してない時の僕は、雅夫みたいな感じです(笑)。
――本作では挿入歌にTHE BLUE HEARTS(1987年メジャーデビュー、95年に解散)の楽曲が用いられ、ひきこもりの息子と父親が歌詞を引用しながらSNSで会話するシーンもあります。
【松山】高校生の頃、よく聴いて、よく歌っていました。今回、台本の中に歌詞が引用されていたので、久しぶりにじっくり歌詞を見て、全然捉え方が違っていて驚きました。こういう歌詞だったんだ、と。高校生の頃には感じられなかった繊細さ、優しさに気づきました。雅夫が言いたいことを全部言ってくれている。演じる上で、気持ちよく乗っからせていただいて、助けられました。
――父親役の武田さんとは?
【松山】今回、武田さんと僕は役柄的に敵同士。撮影現場でひと言もしゃべらないつもりでいたくらいだったんですが、ちょこちょこしゃべってしまいました(笑)。この作品で伝えたいことが武田さんにもあったし、僕にもあったし、そういうことをお互い強く感じ合っていた気がします。
――松山さんが伝えたいと思ったことは?
【松山】ひきこもりになった理由も、ひきこもり方にもいろいろありますが、大事なことを“ひきこもる”という形で社会に訴えかけているようにも感じました。思いやりや優しさの欠けた、効率ばかり求める社会から排除され、傷ついてきた人たちがNOと言っているような。ものすごく社会に影響を与える力をもった存在でもあるな、と感じます。だからドキュメンタリーにもなるし、ドラマにもなるんだと思いました。当事者の方に触れて、「忘れていたな」って気付かされて、僕自身にとっても学ぶことも多かった作品。ステレオタイプのひきこもりからこの作品を通して少しでもその印象が変化していくことを期待していますし、各々の捨ててしまったもの、忘れてしまったものを振り返る機会になっていただけたらと思っています。
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2020/11/21