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三木眞一郎&蒼井翔太「台本は人生の重さ」 コロナ禍で向き合った声優業の責任・覚悟

 25日に開催される、1946年にアメリカで公開された名作映画『素晴らしき哉、人生!』を原作とした生配信朗読劇『素晴らしき哉!人生!』。ある1人の男性と周囲の人物を描く物語だが、出演するのは人気声優・三木眞一郎(52)、蒼井翔太(33)の2人だけで、さまざまな役に挑戦する。アニメ『ポケットモンスター』コジロウ役などで知られる三木、アーティスト活動もする蒼井の2人に、作品内容にちなんで「これまでの人生」を振り返ってもらった。

朗読劇『素晴らしき哉!人生!』に出演する(左から)三木眞一郎&蒼井翔太 (C)ORICON NewS inc.

朗読劇『素晴らしき哉!人生!』に出演する(左から)三木眞一郎&蒼井翔太 (C)ORICON NewS inc.

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――公演は、昼・夜回で朗読パートを入れ替え、2人で劇中のすべての役を演じるのが見どころです。特に三木さんが女性を演じるのは、ファンにとって驚きだと思います。

【三木】 2人だけでやると聞いた時は「大変だな」と率直に思いました(笑)。アニメや洋画の吹き替えの場合、僕ら声優は作品のパーツだと思っています。それに対して今回、生で向き合うとなると作品のパーツではありますが、普段の仕事よりも僕ら声優に求められているものが高いと感じました。

 今回、女性も任されていただきましたが、まったく抵抗感はありませんでしたね(笑)。男性が女性を、というのは確かに驚かれるかとも思いますが、アニメでは人ではないものの声も任せていただきます。僕の中ではそのような考え、理解の範囲内でしたので。

【蒼井】 アニメ収録のお仕事の場合、任せていただいた1人のキャラクターと向き合うのですが、今回は2人ともずっとしゃべっている状態で、さらに、昼・夜公演と役を変えますので、演じる役は経験したことがない量でした。

 僕は女性を演じる機会は多くて、今は男性より女性を演じる方が楽しいですね(笑)。自分自身、特徴的な声と言われる中で、『僕の声だと男性に聞こえないのではないだろうか?』と声質から役作りに悩んだ時期がありましたが、今回、三木さんが演じる女性の声を聞いて、自分の中で壁を作ることはもったいない、「やれるのか?」と悩むのではなく「やる」楽しさを学ばせていただきました。

――人生に悲観する男・ジョージを中心に物語が進みますが、彼のように人生に嫌気がさした人たちは、世の中に大勢いると思います。お二人も仕事をする上で、苦労した経験は当然あったと思います。

【三木】 仕事をしている以上、楽な瞬間はないので、台本をいただいた時から毎回苦労しています。声優という職業は、あくまで作品の一部であり、スタッフの一員。ここに向き合っていく仕事であるため、多くの人たちの人生を背負っています。今も鞄に台本が何冊も入っていて、もちろん物理的に重いのですが、「これが自分に任せていただけた人生なのだ」と思うと、人々の人生の重みを実感します。「人の人生を任されていることを忘れてはいけない」と思い続けてきた30年ですね。楽な気持ちではスタジオに向かえませんし、苦労とはまた違った、覚悟を決めなくてはいけない日々を過ごしています。

【蒼井】 僕もこの仕事は人生を背負っていると実感しています。その中でやりたいことができている今、仕事に対しての強い責任・覚悟があります。声優業を極めたいと思うと、壁が毎回のように出現するのですが、楽な道、安全な選択があったとしても、その道に進もうと思わない性分で、それは未来が想像できてしまうので面白くないから。霧がモヤっと出ているような「この先に何があるのだろうか?」と先が見えないことに面白みを感じて、そこに今の自分に必要なものがあったりするので、壁は人生に必要なものだと捉えています。

■コロナ禍で向き合った声優業 仕事を任される喜びと仲間の有難さ――物語のテーマは「コロナの時代のいま、あなたの人生にとって大切なものは何か…?」。新型コロナの影響でスタジオ収録がストップするなど、仕事に影響が出たと思いますが、自粛期間は仕事に対して向き合った時間になったと思いました。

【蒼井】 スタジオ収録が一斉にできなくなって、その時に声優として「何かできることはないか?」というのを、僕も含めて声優仲間みんなが思いました。SNSを通じて朗読劇を披露したり、YouTubeで楽しませたりと、それぞれできることをした中で、スタジオ収録が再開した時の喜び、台本をいただける有難さを痛感しました。僕らの声優業は決して1人でできることではないので、支えられていることを改めて気づいた期間でした。

【三木】 緊急事態宣言が解除されて、スタジオ収録が再開された時、何よりもうれしかったのは、役者たちで掛け合いができたことです。自宅で台本を読んでいても、現場で掛け合いをすると自分で気づけなかったリアクションが出てくるので、役者として成長させてくれる仲間の有難さを感じました。

 ただ、収録や今回の朗読劇のようにお仕事が徐々に戻ってきている中で、不安がなくなることはありません。スタジオに長く滞在できないので、若い声優たちが本来であれば、現場で吸収できることが出来ない状況になっています。現場に行って、自分の役目を終えてすぐ移動する、という流れが普通になってしまうと、役者として現場で感じられる環境がない状況ですので、業界としての先が心配ではあります。

■目指す役者像に歩みは止めず 「楽しいけど、成長はしない」甘えた仲間との交流

――朗読劇ではジョージの人生を描きますが、これまでの人生を改めて振り返ると、どのような思い出がありますか。デビュー前に思い描いていた姿になっているのでしょうか。

【蒼井】 声優、歌手、アニメで実写に登場する…など、いろんな形で自分のことを紹介していただくのですが、声優という立場である以上、任せられたキャラクターを作品の世界観で必ず生きているものにしたい思いが軸としてあります。「自分がこうなりたい」ではなく、キャラクターを輝かせたい思いしかありません。

 僕ら若手は、三木さんたち先輩方が作ってきたレールの上を歩き、この大樹の幹を歩きながら花を咲かせる場所を見つけている最中だと思います。いろんなことに挑戦して輝きたい、目立ちたい衝動は出てくるものなのですが、それだけだと人々から良い反応は得られないと感じています。任せられた仕事に丁寧に向き合い、役目を全うすることの繰り返しが大切なことだと思います。

【三木】 声優という仕事に対しては、幼いころ「声優になりたい!」ではなく「将来は声優だな」と勝手に思っていました。「なりたい」と思ったことは一度もなくて、「俺は将来、声優だな」と声優としてのビジョンが見えていたんです。特別な努力はしていなくて、声優になる「確証はないけどビジョンはある」という…今考えると不思議ですね(笑)

 お芝居の勉強をしないまま、今の事務所の研究所オーディションを受けて合格して、今に至るのですが、人としての生き方を学ばせていただきました。多くの人がいるので当然、付き合うことに甘えた様子の人もいて、「これではプロの声優にはなれない」と思い反面教師にさせていただいておりました。ただ、彼らと付き合うのは非常に気持ちが楽になるので、何度も誘惑に負けそうになりましたよ。それでも「彼らと常に一緒に行動していても、自分の目指す声優像には近づけない」ことは理解できました。「楽しいけど、成長はしない」ということです。

 ただ、このお仕事は、人生経験が無駄になることはないので、彼らとの交流は今、生かされている部分はあります。なので先ほど言った、スタジオ収録を終えて、すぐに帰宅する流れが一般的になってしまうと、人としての交流が減っているわけですから、役者としての魅力を養う一部を失ってしまう気がします。私は多くの人と交流し、その都度アンテナを増やすことを繰り返してきた人生でしたから。役者として常に「なぜ、なに?」と疑問を抱くことが大事で、自分の中で用意していたものを出して終わりではなく、求められたことに反応することが大切だと思います。

 その中で、目指している声優像は「説得力がある人」で、自分のせりふに重みや深みがある役者になりたい。段々とそのような人が減ってきているので思う部分なのですが、「まだまだダメだな〜、きょうの俺」と毎日反省をしながらお酒を飲んでおります(笑)。

■朗読劇『素晴らしき哉!人生!』あらすじ
 1945年のクリスマスイブ。ジョージ・ベイリーという男がニューヨーク州のベッドフォードフォールズという町で人生に絶望していた。周囲の人間の祈りが天国まで届き、翼をまだ持っていない二級天使のクラレンスが翼を得るために彼を助ける使命を引き受けた。その準備として、 クラレンスはそれまでのジョージの人生の回想を見せられることになった……。

 配信チケットは、イープラスStreaming+にて販売中で、料金(税込)は視聴券1回券4500円、2回通し券8000円。ともにアフタートーク付き。
公式サイト:https://eplus.jp/subarashiki/st/

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