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ライバルは他社商品ではなく『ファミチキ』 女性担当者によるコンビニ“茶色い売り場”改革

 コンビニ業界では、レジの横に設置されている陳列ケースを“茶色い売り場”と呼んでいるそうだ。揚げ物をメインに取り扱っていることからそう呼ばれているのだが、やはり“茶色い売り場”を好むのは圧倒的に男性ユーザー。このほど新たな主力商品『ポケチキ』のリニューアルを行ったファミリーマートは同商品の開発に女性を抜擢。そこには同社の主力商品である『ファミチキ』一強からの脱却が明確に垣間見える。ORICON NEWSでは商品担当者にインタビューを敢行。その真意を聞いた。

8日にリニューアルしたファミリーマートが展開する『ポケチキ』 (C)oricon ME inc.

8日にリニューアルしたファミリーマートが展開する『ポケチキ』 (C)oricon ME inc.

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■『ファミチキ』一強の状況が逆に焦りに…「現代は女性市場が重視される時代」

 2019年5月、大手コンビニ・ファミリーマートがフライヤー(揚げ物)部門に新商品『ポケチキ』を投入。から揚げとナゲットの間のような商品であり、名前の通り“ポケット”を想起させるデザインとサイズのパッケージに5粒のから揚げが入った、スナック感覚のチキンだ。

同社のチキンと言えば、真っ先に思い浮かぶのが『ファミチキ』であろう。同商品はコンビニチキンの代名詞と言っても過言ではなく、SNSなどのコメント欄でも、コンビニチキン=『ファミチキ』という書き込みもかなり多い。だが、それほど圧倒的な認知度を誇っているがゆえの焦りもあったという。

「弊社は『ファミチキ』という会社の代表商品を持っていますが、調査をした結果、それだけでは取り切れていないものがあることを痛感したのです。フライヤー商品を購買するのは男性が6割以上。つまり客層の大半が男性で、女性を取り込めていない。現代は女性市場を相当重視しなければ競争に勝てない時代ですし、『ファミチキ』だけで勝てる時代ではない。メインの『ファミチキ』と両軸で展開できる商品、さらには女性をターゲットとした商品を開発したく、2017年の9月頃から『ポケチキ』開発に取り組みました。そし男性にはない意見が重要となったため、女性社員を開発担当として起用したのです」(商品開発担当マネージャー・石川哲也氏)

 ナゲットのようなから揚げと言えば、ローソンのロングセラー商品『からあげクン』を想起する人が大半だろう。『からあげクン』が後発である『ポケチキ』のライバルかと思いきや、実は「ライバルは内にあり」、つまりライバルは『ファミチキ』だったのだ。

■女性担当者の採用で、男性には分からないフライヤー商品への“リアルな声”を吸い上げ

 前出の石川氏は「フライヤー商品について改めて、男性開発者と女性開発者、意見があまりに違うことに驚いた」と回顧する。『ポケチキ』はスタートダッシュから好調ではあったが、加盟店舗や客の声を精査し、わずか1年半でリニューアル。そのリニューアルに大きく貢献したのが女性商品開発者の河口美砂氏だった。

「1年半というのは早いタイミングかもしれませんが、自信作が生まれたので販売に踏み切りました。旧『ポケチキ』は女性のお客様からの評判も良かったのですが、ムネ肉100%を使用しており、そのさっぱりとした風味だけではなくもっと“肉の旨味が欲しい”との声が届いており、モモ肉の採用を思案しました。女性がターゲットですので、油っこすぎず、それでいてジューシーに。研究を重ね、配合割合をムネ肉7、モモ肉3と決まりました」(河口氏)

 衣にもこだわった。ジューシーかつ、くどさを感じない、それでいてサクッとした“揚げ物”の感覚が味わえるように。小麦粉では揚げたあと、どうしても油っぽい印象が出てしまう。そこでコーンスターチを新たに採用。油っぽさを軽減できるほか、肉の旨味を包み込み、中から油分を染み出させないことに成功した。

 並行してパッケージもリニューアルした。これまでのパッケージとは異なり、店舗スタッフがより簡単に組み立てが可能に。また底を平らにしたことで、ショーケースに安定して陳列しやすくなった。色も可愛く、よりカラフルに。

「フライヤーのコーナーは社内では“茶色い売り場”と呼ばれています。彩りがなく、男性ウケはいいが女性が威圧感を感じてしまう恐れも。ここももっと、女性が購入をしやすい空間、商品群にしたい」(石川氏)。その“茶色い売り場”改革の切り札が、河口氏だった。

「常に“女性が食べているシーン”を思い浮かべながら開発をしています」と語る河口氏。『ファミチキ』は仕事帰りのサラリーマンや部活帰りの男子学生が軽食として買っていけるような商品・パッケージだった。だが、現代の客のニーズはそうシンプルではない。働く女性が増加しており、それと共に共働きの夫婦も増えた。またコロナ禍で、飲食店ではなく、ランチにオフィス内で食べる人も増えている。オフィスのデスクに置いていても違和感がなく、オシャレな設計に。女性が食べ切れるサイズ感と5粒という量。食べきれなくても蓋をしめて置いておけるパッケージに改良された。

■後発であることで、逆に“方向性”を固めることが出来た

『ファミチキ』のライバルであり、“ファミリー”という位置づけでもある『ポケチキ』だが、目の前には『からあげクン』という偉大なロングセラー商品が鎮座している。コンビニに限らず言えば『マックナゲット』などもそうであろう。後発であるということは、越えなければならないハードルは非常に高いのではないか。

「ですが、弊社は他社商品に“寄せていく”考えはまったくなく、『ファミリーマート』のチキンの世界観、その理想を追求しているというのが正解です。後発であることは不利ですが、先発があることで、弊社としてはどの方向性へ行くか──今回に関してはターゲットを新しい客層である女性にするなど──、後発も悪いことばかりではない」(石川氏)

 また、SNS社会も同社の追い風になっているようだ。ネットユーザーは、似た商品が販売された時、それを“食べ比べたくなる”傾向がある。実際にSNSでは食べ比べのリポートが散見され、多くの個人ブログでもそれぞれの味の分析が行われている。「どっちが美味い」という比較はもちろん、「これは実は完全に別物の商品」という結論も。これらの言葉に他ユーザーが反応し、アメーバ式に拡散されている。TVCMや広告だけではない、自己発生的な、そして新たな宣伝が見込まれる時代でもあるのだ。

「他社商品と食べ比べてみてほしいとは思っていませんが、美味しいと自信があるからこそ出した商品。女性はもちろん、ヘビーユーザーの方には是非、旧と新との違いを感じてもらえたら」(河口氏)

 コンビニはまさに社会の“縮図”。男女平等、働く女性の増加、共働き夫婦の増加、コロナ禍、ネットユーザーの傾向など、世の中のさまざまな現象が、陳列されている商品から読み取れる。その中で、“茶色い売り場”に女性の目を向けようと画策するファミマが、今後どのようなビジネスモデルを展開していくのか? コンビニの新たな“スタンダード”の誕生に注視したい。

(取材・文/衣輪晋一)
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関連写真

  • 8日にリニューアルしたファミリーマートが展開する『ポケチキ』 (C)oricon ME inc.
  • パッケージもリニューアル。右が新しくなった『ポケチキ』(C)oricon ME inc.
  • モモ肉が引き出すジューシーさを感じてほしい『ポケチキ』、右が新バージョン(C)oricon ME inc.

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