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映画で渋谷の変化に対応 パルコが挑む「趣味嗜好」概念での文化牽引

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第33回 パルコ エンタテインメント事業部・コンテンツ事業担当映画チーム 岩垂史兼氏

渋谷で撮影が行なわれた映画『転がるビー玉』の場面カット (C)『転がるビー玉』製作委員会

渋谷で撮影が行なわれた映画『転がるビー玉』の場面カット (C)『転がるビー玉』製作委員会

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 2016年から一時休業していた渋谷パルコが、2019年11月にグランドオープンし、街に戻って来た。池袋が発祥のパルコだが、パルコと言えば“渋谷”というイメージを持つ人も多いだろう。アート、カルチャー、ファッションなど幅広いジャンルで、若者たちに大きな影響を与えてきたパルコが、変わりゆく渋谷の街を舞台に三人の若い女子たちが前に進もうと、もがき苦しむ姿を活写した映画『転がるビー玉』の配給を担った。パルコが掲げる映画事業とはどんなものなのか――エンターテインメント事業部・映画チームの岩垂史兼氏に話を聞いた。

■渋谷のカルチャーを牽引するパルコの映画事業

 シネクイントの運営をはじめ、国内映画への製作・出資、さらには国内外作品への配給事業など、パルコと映画への関わり合いは深い。配給作品(共同配給含む)には第91回アカデミー賞にて脚色賞を受賞した『ブラック・クランズマン』(2019)、第90回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2018)、長編アニメーション賞にノミネートされた『ゴッホ 最期の手紙』(2017)、第89回アカデミー賞主演男優賞、脚本賞を受賞した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)、など良作が非常に多い。

 「概念的なことと、具体的な作品のジャンルに分けてお話しすると、概念的にはパルコの企業コンセプトにもあるカルチャー好きに共感してもらえるような作品であること、そしてそれを押しつけるのではなく、ユーザーと一緒に作り上げるというがテーマです。ソフト面で言うと、ミニシアター系、アート寄り且つ、作家性だけに頼らずしっかりとエンターテインメント性を持つことを意識しています」。

 なかでも中心にあるのが、音楽、ファッション、ブラックカルチャー、そして“渋谷”カルチャー。その意味で、ファッション&カルチャーマガジン『NYLON JAPAN』創刊15周年プロジェクトとして製作される『転がるビー玉』は、パルコが手掛ける“意義”との親和性が非常に高かった。

「(「NYLON JAPAN」を発行している)カエルムさんとパルコは隣の区画であり、『NYLON JAPAN』が創刊のときから、お付き合いがあったんです。しかも変わりゆく渋谷を撮影し、そこで必死に暮らす若者たちの夢と現実の葛藤みたいなものも描かれている。我々の目指す部分との相性が非常に良いと感じたんです」。

■大きく変わる渋谷、ユーザーニーズも以前とは大きく変わった

 現在の渋谷は100年に一度と言われる「再開発プロジェクト」のもと劇的な変化を遂げている。一昔前では客層も大きく変わっているように感じられるが、岩垂氏はあくまで主観と前置きしつつ「渋谷の街はずっと低年齢化が進んできて、サービスも街全体でより若い世代に向けて発信されてきたような気がします。それが再開発の経過と共に、だんだんと変わってきました。公園通りなどを見ていても、いろいろな国籍の方の人数がより増えた印象で、変化の速度が上がっていると感じます」と語る。

 実際、昨年11月にグランドオープンした渋谷パルコでも変化が見られた。「6階のNintendo TOKYOやポケモンセンターシブヤなど、体感的には日本人よりも外国人の方が多い印象です」と変化を述べる。当然、映画というサービスを提供する部分でも、変化が見られるのが必然だろう。

 「先ほどお話ししたようなコンセプトを中心に据えつつも、常に渋谷を訪れる方々のニーズをキャッチして、マイナーチェンジはしてきました。歴史の話で言うと、2000年代初頭、渋谷は“ミニシアターの聖地”と言われて多くの人でにぎわっていましたが、2000年代後半からは、街自体が過渡期になり、お客さんの客層やニーズも大きく変わっていきました。シネクイントのラインナップも、長期的な視点で見てくださっている方は、その変遷に気づくと思います」。

 現在のパルコのポリシーを問うと「『渋谷パルコ』が掲げているテーマが“ノンエイジ・ジェンダーレス・コスモポリタン”。いわゆる性別や年齢などでセグメントを切るのではなく、趣味嗜好という概念で作品を見ています。よりカルチャー度が強くなっていると思います」と語る。

 続けて岩垂氏は「“コスモポリタン”という意味では、3月に弊社は『ハリエット』という映画を配給するのですが、こちらは黒人奴隷解放運動を行ったハリエット・タブマンという女性の話です。正直日本での知名度はあまりないと思いますが、アメリカで教育を受けた人は、その名前を知らない人はいないというほどの人物です。日本がより多国籍化していくことで、こうした題材への理解も深まっていくだろうし、エンタメとしても楽しむことができるようになっていくと思うんです」と今後の展開を述べる。

■全世界の喜怒哀楽を集める

 大手シネコンの進出により、渋谷のミニシアー系の映画館も数多くが閉館になった。それでもほかの大都市と比べると、まだまだミニシアターの活躍が目立つ渋谷。シネクイントは1999年にオープンと、他のミニシアターよりは歴史が浅い。だからこそ、差別化を図るために、世界中から良質なエンターテインメント作品を丁寧に探してきた。「他のミニシアターさんは独自の世界観を持ちお客さんを開拓してきました。そのなかで、私たちは作家性だけではなく、エンターテイメント性も意識して全世界の喜怒哀楽を集められたらと思っています」。

 『転がるビー玉』は再開発が進む渋谷の街が、しっかりと切り取られている。岩垂氏は「2019年に渋谷パルコが新たに生まれ変わったタイミングで、こうした映画を配給できたことは、非常に意義のあると感じています。作品には渋谷の街と共に、作品に出てくる三人の女の子(吉川愛萩原みのり今泉佑唯)の感情の機微が細かく描かれています。街の移り変わりと、彼女たちの変化がリンクして、鑑賞者の心に響く映画になっています」と作品をアピールしてくれた。(取材・文・撮影:磯部正和)
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  • 渋谷で撮影が行なわれた映画『転がるビー玉』の場面カット (C)『転がるビー玉』製作委員会
  • パルコ エンタテインメント事業部・コンテンツ事業担当映画チームの岩垂史兼氏 (C)ORICON NewS inc.
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