ドラマ&映画 カテゴリ

佐藤健は類まれな資質を持つ俳優 P絶賛の二面性「スターオーラと陰」

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第26回 高橋信一プロデューサー

【写真】その他の写真を見る


 佐藤健&白石和彌監督という現在の映画界で最も魅力的な組み合わせと言っても過言ではない2人がタッグを組んだ映画『ひとよ』。血の繋がった兄妹と、子供たちを守るために夫を殺害してしまった母親との複雑な関係性や心情描写を綴った本作は、佐藤、白石監督共に、これまでの作品とは違った趣を見せている。二人の魅力とはどんなところにあるのだろうか――。本作のプロデューサーを務める日活の高橋信一氏に話を聞いた。

■『ひとよ』は白石監督のエポック的な作品になる

 高橋プロデューサーと白石監督は、『日本で一番悪い奴ら』や『牝猫たち』、『サニー/32』でタッグを組んでいるが、本作の企画については「共同でプロデューサーを務めているロボットの長谷川晴彦さんが、劇団KAKUTAの舞台『ひとよ』を見て、家族の物語に感動し、映画化するなら白石監督にお願いしたいということを僕に相談してくださったんです」といきさつを語る。

 高橋プロデューサーは、白石監督について「『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』など、ハードでエッジの効いた作品を連想する方が多いと思うのですが、人柄は非常に穏やかな方で、人間を深く描くのが上手で作家性が強い監督だと思っていたんです」と印象を述べる。その意味で、これまでは“疑似家族”を描くことがあっても、血の繋がった家族をしっかりと描いたことがなかった白石監督にとって、『ひとよ』はエポック的な作品になると思い、話を快諾したという。

 ここ数年の白石監督の活躍ぶりは目を見張る。2013年に公開された『凶悪』で大きな注目を集めると、次々に話題作を手掛ける。2017年以降、劇場公開作は『牝猫たち』、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『サニー/32』、『孤狼の血』、『止められるか、俺たちを』、『麻雀放浪記2020』、『凪待ち』、そして本作と8本を数える。質的にも『彼女がその名を知らない鳥たち』で、ヨコハマ映画祭監督賞、ブルーリボン賞監督賞、『孤狼の血』でも、ブルーリボン賞監督賞や日刊スポーツ映画大賞監督賞を受賞するなど高い評価を得ている。

■白石監督の魅力はスタッフへの信頼感と、俳優への絶妙なアシスト

 では、過去何度も作品を共にしている高橋プロデューサーは、白石監督の魅力をどう捉えているのだろうか。最初に挙げたのが「スタッフやキャストへの信頼感」だと言う。

 「バイオレンスや性描写は白石監督の特徴の一つですが、現場はとても穏やかなんです。それはスタッフやキャストを信頼しているからだと思います。撮影というのは、どうしても予算的、時間的にいろいろな制約があります。そのなかでどうやったらベストに近づけるかを常に考えてくれる。必然的に、それぞれの部署の人たちを信頼し任せるんです。そうすると皆さん自主性が出てくるし、アイデアも飛び交う。とてもいい現場になるんです」。

 さらに高橋プロデューサーは、俳優への演出も特長に挙げる。「僕は俳優ではないので、白石監督の演出を正確に把握しているわけではないのですが、俳優がリハーサルや段取りを通してキャラクターを演じようとしているとき、基本的には俳優たちの自主性に任せつつ、ちょっと足す一言や、カットをかけずに微妙にお芝居を伸ばす感じとか、いいあんばいで背中を押す感じが、俳優にとって心地よくもあり楽しいのではないのかなと思っています」。

 高橋プロデューサーの言葉通り、白石監督作品に出演する俳優たちの演技はみな、非常に魅力的にスクリーンに映し出される。『彼女がその名を知らない鳥たち』で主演を務めた蒼井優は、その年の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、阿部サダヲもブルーリボン賞主演男優賞を受賞。『孤狼の血』でも、役所広司が日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、松坂桃李が日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をダブル受賞するなど、白石監督作品に出演した俳優たちは賞という形でも高く評価されている。

■佐藤健は当代きってのスターのオーラを持つ

 本作で主演を務めた佐藤もまた、本作で非常にすばらしい演技を見せている。佐藤と言えば、映画、ドラマ、舞台で数々の主演作を経験し、そのスター性は若手俳優のなかでは抜きんでた存在だ。高橋プロデューサーも「顔合わせのときに初めてお会いしたのですが、当代きってのスターだなと感じさせるオーラを持っている方」と賞する。

 しかし、本作で佐藤が演じた稲村雄二という男は、悲しい出来事があったときから兄妹や家族とは距離を置く、陰のある男だ。これまでの佐藤が持つパブリックイメージとは反対に位置する役柄である。「実はこのキャスティングは白石監督のアイデアなのです。最初は意外な感じがしましたが、会ってお話をすると、スターのオーラを持ちつつも、キャラクターへの入り方や開き方、深度がすごい。なんの心配もないとすぐ感じました。実際、いい意味で陰がありましたし、格好良くない男になりきっていました」。

 高橋プロデューサーは「これまで真ん中でスターとして立ってきたからこそ、つかみ取れるバランス感覚なのかもしれません」と佐藤の役へのアプローチ方法を解釈する。さらに「本当にスイッチがすごい。音尾琢真さんがクランクアップするシーンは、音尾さん演じる丸井進が佐藤さん演じる雄二にある言葉を突きつけます。それを受けて、最後佐藤さんのお芝居は、眉間に皺を寄せて、ものすごくやるせない顔をするんです。そのシーンが終わった後、音尾さんを囲んでみんなで記念撮影をしたのですが、そのときの佐藤さんの顔がまるで別人で、めちゃくちゃ格好いいんです。ギャップが圧倒的で、本当にすごい人だなと(笑)」とそのスイッチに脱帽していた。

 過去、スターと呼ばれる俳優は、どんな役柄でも、自分のキャラクターに引き寄せる力を持っていた。ファンもそれを望んでいるところがある。佐藤にもそうしたスターの資質があるにも関わらず、どんな立ち位置からでも役柄を演じられる演技派の面も色濃く出ている。

 そこには佐藤の芝居に対する姿勢も影響しているのかもしれない。「本質的には絶対的なスターのオーラを持つ俳優さんだと思うのですが、この作品は群像劇でもあり、出演俳優の数も多く、正直佐藤さんがシーンにいるのに、映っていない場面も多々あるんです。でもそんなときでも、しっかり空気感を察してくれて、しっかりお付き合いしてくださるんです。いい役者さんだなと思いました。この作品を選んでくれたというのも、そういう人だからなのかなと感謝しています」。

 類まれなる資質を持つ俳優と、その資質を存分に活かせる腕を持つ監督がタッグを組んだ『ひとよ』。そんな作品が、面白くないわけがない。(取材・文・撮影:磯部正和)

関連写真

  • 映画『ひとよ』で主演を務める佐藤健(C)2019「ひとよ」製作委員会
  • 映画『ひとよ』の高橋信一プロデューサー (C)ORICON NewS inc.
  • 映画『ひとよ』の場面カット(C)2019「ひとよ」製作委員会
  • 映画『ひとよ』の場面カット(C)2019「ひとよ」製作委員会
  • 映画『ひとよ』の場面カット(C)2019「ひとよ」製作委員会

オリコントピックス

メニューを閉じる

 を検索