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混沌として大仰さが目立った『ニッポンノワール』、視聴者との強烈な結びつきを生むドラマに化けるか

 10月13日にスタートした賀来賢人主演のドラマ『ニッポンノワール―刑事Yの反乱―』(日本テレビ系)。「主人公を含めた刑事全員が容疑者!」というミステリーで、プロデューサーの福井雄太氏、脚本の武藤将吾氏など、今年1月期の話題作『3年A組―今から皆さんは、人質です―』のスタッフが再集結。物語の舞台も『3年A組』の半年後の世界であることから、注目を浴びている。

『ニッポンノワール―刑事Yの反乱―』第2話より(C)日本テレビ

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 しかし、初回放送が終わると、感想は見事に真っ二つ。「おもしろすぎる」「今期ドラマNo.1のおもしろさ」という声が多数ある一方で、「めちゃくちゃ過ぎる」「ついていけない」などの酷評もあるのだ。無難に感じる人が少なく、賛否両論が激しくわかれるのは、いったいなぜなのか。

■第1話では不協和音も。この先、別の音色に変わっていくのか

 第1話でもっとも話題になっていたのは役者陣の充実ぶり。主演の賀来賢人をはじめ、井浦新、工藤阿須加、北村一輝などの熱演が好評だった。主演の賀来は、近年多かったコメディ演技からイメージをガラリと変え、幅の広さを見せつけていたし、工藤のはじけまくったハイテンション演技には「イメージが完全に崩れた」「最初、誰かわからなかった」などの声があった。

 しかし、役者たちの演技が最大の魅力である一方で、「ついていけない」と感じる最大の要素ともなっているようだ。SNSなどには、まだ世界観がよくわからない初回から役者全員が個々にアクセル全開の演技を見せていることに対して、違和感を唱える呟きも見られた。

「ムダに喚き散らす感がうるさすぎる」「ニッポンノワール、登場人物野生児しかおらん」「アクセル全開すぎて視聴者おいてけぼり感」
など。

 個々のキャラクターが視聴者に浸透しないうちに、全員が思い思いの方向に綱を引っ張り合う不協和音が、第1話には確かにあった。この不協和音は、回を重ねるうちにおそらく別の音色に変わってくるのではないか。

■第1話だけでは世界観がわからない「情報量の多さ」

 また、「おもしろい」と感じた人とそうでない人の大きなわかれ目は、脚本・演出にもある。ひとつは、第1話だけでは世界観がわからないことによる「情報量の多さ」だ。これは同枠前期の『あなたの番です』も同様であったように、1人ひとりのキャラクターや関係性が浮き彫りになり、整理されていくなかで、わかりやすくなってくるだろう。

 また、設定のありえなさを楽しめない層もいたようだ。しかし、設定や世界観のリアリティのなさは、内容がおもしろく、役者の感情にリアリティがあれば気にならなくなる作品は多々あるだけに、徐々に解消することが期待される。それよりも、第1話で脱落者が出そうな理由は「情報量が多そうに見えて、実はたいして内容がない」と感じている視聴者がいたことだ。

 例えば、刑事モノと言えば必ず出てくる「上層部」や、『3年A組』にも登場した「半グレ集団・ベルムズ」など、「いかにも」なありがち設定を陳腐で子どもっぽいと感じている人が多いこと。ネットの掲示板やSNSには以下のような辛辣なコメントも見られる。

「無駄な暴力シーン省いたら、15分ぐらいで終わる内容。豪華俳優陣で、それぞれキャラが濃いが消化不良」「全体的に演技がわざとらしいのと子役の演技が棒読みで気になる」「使い古されたセリフと、過剰なカッコつけ悪ぶり演技がどうにも直視できない」

 また、劇中では賀来賢人が「おもしろくなってきたじゃねーか」と何度もつぶやくが、その連発される言葉に引いてしまう視聴者も少なくなかったようだ。

■クオリティという次元を超え、視聴者との強烈な結びつきを生む現象に期待

 しかし、この流れにもっともよく似ているドラマといえば、世界観がつながる『3年A組』が挙げられる。『3年A組』では、菅田将暉演じる担任の教師が毎回たっぷりの時間を割いて、どストレートでありきたりな熱いメッセージを生徒たち、そして視聴者たちに向けて放っていた。

 その内容は、要約すればどれも1〜2行で終わるシンプルかつ当たり前のことばかり。言葉にも新鮮さがなく、初期には熱血ぶりを「金八先生」に例えられ、子どもっぽさについていけないと感じる視聴者も多かった。しかし、そのメッセージが回を重ねるごとに複雑化したり、世界観が深まったりするわけではないにもかかわらず、演技の熱量に飲み込まれ、いつしか世界観にハマる人がじわじわと増え、作品の評価そのものが高まっていったのは記憶に新しい。

 これは従来の脚本の緻密さや演出の巧みさなど、ドラマとしてのクオリティという次元を超え、視聴者との強烈な結びつきを生む新現象のように見えた。第1話では混沌としていて、雑味や大仰さが目立ち、ツッコミどころだらけだった『ニッポンノワール』。しかし、ここからまた不思議な新現象がじわじわと起こることを期待したい。
(文/田幸和歌子)

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  • 『ニッポンノワール―刑事Yの反乱―』(C)日本テレビ
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提供元:CONFIDENCE

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