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吉永小百合は”日本映画界の象徴” 出演作121本「自身を常に進化させている」

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第22回 犬童一心監督

 日本映画界の歴史に燦然と輝く功績を残し続けている女優・吉永小百合。自身121本目の出演となる映画『最高の人生の見つけ方』が公開を迎える。メガホンをとったのは、映画『ジョゼと虎と魚たち』や『死に花』、『ゼロの焦点』、『引っ越し大名』などエンタメから作家性の強い作品まで幅広いジャンルの作品を手掛けてきた犬童一心監督だ。ジャパンプレミアの際「まさか吉永さんとご一緒するなんて。8ミリで映画を撮ることをはじめた17歳の自分に伝えてあげたい」と語った犬童監督に、女優・吉永小百合(74)の魅力を聞いた。

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■戦後の日本の歴史を背負っている数少ない女優

 本作は、ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンが共演し人気を博した同名映画を原案に、舞台を現代の日本、そして主人公を余命宣告された二人の女性にアップデートして描かれた人間賛歌の物語。家庭のために真面目に実直に生活を送ってきた主婦の幸枝(吉永)と、上昇志向が強く、一代でホテルチェーンを築きあげてきたキャリアウーマンのマ子(天海祐希)が、病院で出会った少女が持っていた「死ぬまでにやりたいことリスト」を代わりに達成するための旅に出る姿を描く。

 犬童監督は「この映画はあまり登場人物の過去を描いていない。そうなると、しっかりと歴史を重ねている俳優の方が演じることで説得力を持たせることができる。僕が若いころは、まだ田中絹代さんは存命でしたし、高峰秀子さんもいらっしゃいましたが、いまの女優さんのなかで、戦後の日本を背負っている女優さんというのは、実はあまりいない気がします。年齢のことを言うのもあれですが、吉永さんもお若く見えますが、70代ですからね」と吉永が適任であることを強調する。

 吉永と言えば、1959年に『朝を呼ぶ口笛』でスクリーンデビューを飾って以来、現在まで100本以上に映画に出演し、現在も第一線級で活躍する女優だ。

 「僕は小学生から映画にはまっている早熟な子供だったのですが、自分が8ミリで映画を撮り始めた17歳のころ、すでに吉永さんは日本映画界の黄金期を知る大スターでした。一方で、僕が撮った作品は文化祭などで上映はしたものの、誰も見てくれない。映画が好きで撮っていましたが、当時は映画監督になるには、撮影所に入って助監督から這い上がるのが普通です。自分が映画監督になるなんて思ってもいませんでした。ある意味で真逆の位置にいた自分が、まさか吉永さんと映画でご一緒するなんて夢にも思っていなかった。だからジャパンプレミアではあんな発言をしたんです」。

■俳優はどんなに嘘をついても、その人の本質がカメラには映ってしまう

 犬童監督は、自主映画で数々の作品を作ったものの、大学卒業後は、映画の世界には進まず、広告会社に入社。CMディレクターとして活躍し、数々の賞を受賞する傍ら、数奇な巡り合わせで映画の世界にも進出し、これまで20本近い作品を世に送り出し、高い評価を受けてきている。

 そんな犬童監督でも「今回(ワーナー・ブラザースの)小岩井(宏悦)プロデューサーから、吉永さんの映画を撮ってくれないかと言われたとき、やっと日本映画界に承認されたという感覚にもなったんです。それまでは映画を作っていても、自分が日本映画の歴史のなかにいるとは意識していなかった」と、吉永という女優が犬童監督にとってどれだけ大きな存在だったかを述べる。吉永=日本映画界の象徴というわけだ。「やっぱり吉永さんを見ていると、後ろには市川崑さんや浦山桐郎さん、中平康さんをはじめ、すごく大勢の監督や撮影所の人たちを感じることができる。そんな女優は、いま吉永さんのほかにはいません」。

 では、映画監督の目から見て、吉永が、ほかの女優と大きく違う点はどこなのだろうか。犬童監督はまず「俳優は役を“演じる”のですが、結局はその人がどういう風に生きてきたかということがカメラに映ってしまうんです。役を演じてもらいつつ、結局はその人本人を撮っていることになるんです」と前提を論じる。

■カメラに映るものが圧倒的にほかの女優とは違う

 その意味で、吉永が撮影所出身であることが、ほかの女優とは大きく一線を画すというのだ。「1970年に日活の撮影所がなくなり、吉永さんはフリーにはなりましたが、撮影所が中心となって映画を作っていた日本映画の黄金期を経験している最後のスターなんです。特に吉永さんは舞台をやらず、撮影所で日々映画を撮るなかで、鍛えられたものがにじみ出ている。一緒に打ち合わせをして映画作りに取り組む姿勢などは、特別ほかの俳優さんと違うところはないのですが、ただカメラに映るものが圧倒的に違うんです。これだけはどうしようもない」。

 さらに犬童監督は、吉永の持つ力強さにも惹かれる部分があり、こうした人間味もカメラには映し出されているという。

 「吉永さん自身、明るく爽やかな方ですが、70年に日活がダメになり、映画自体も斜陽になっていく状況下で、撮影所組織を抜けて、主体性を持った女優としてやっていく覚悟があったと思うんです。テレビの台頭もあるなか、自分の映画を残していくことは並大抵のことではない。しかも年齢を重ねていくなかで、女優がどう生き残っていくかというのは大きな問題になってきます。10代、20代、30代とそれぞれ壁がある。それを一つずつクリアして、いまの吉永さんがある。普通は、もっと早い段階でシフトチェンジしていくものですが、吉永さんはいまでも、自身を常に進化させて、あたらしいものを発見しているんです」。

 栄華と衰退の歴史を背負いつつ、時代の変化にも適応していく順応性と力強さ――。確かに、先日行われたジャパンプレミアでは、本作にも出演しているももいろクローバーZのファンが多数詰めかけた会場で、自身初となるファンサービスを実施し、さらには「モノノフ」であることも明かし客席を盛り上げる姿も印象的だった。

 犬童監督は「プロフェッショナリズムとクレバーさがあり、大衆性の把握の仕方も常に考えられている。ご自身と一緒に育ってきた観客はもちろん、さらに新しい下の世代へもどうしたら表現が伝わるかを察知して実行するんです。そういう部分への感覚も、ほかの俳優さんとは大きく違うと思います」と吉永の時代を見る目の鋭さにも脱帽していた。(取材・文・撮影:磯部正和)

関連写真

  • 映画『最高の人生の見つけ方』メインビジュアル(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会
  • 映画『最高の人生の見つけ方』のメガホンをとった犬童一心監督 (C)ORICON NewS inc.
  • 映画『最高の人生の見つけ方』場面カット(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会
  • 映画『最高の人生の見つけ方』場面カット(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会
  • 映画『最高の人生の見つけ方』場面カット(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会
  • 映画『最高の人生の見つけ方』場面カット(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会

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