日本を代表する映画監督・是枝裕和氏を中心とした制作者集団「分福」渾身のプロジェクト『潤一』(主演・志尊淳)がいよいよ日本で本格的に展開される。フランス・カンヌの国際ドラマの祭典『カンヌシリーズ』コンペティション部門で日本初のノミネートを果たし、世界から注目された実力作品は、これまでのドラマ作品にはない異色の経路をたどる。
◆NetflixやAmazonのオリジナル、海外ドラマに並ぶ良作
分福によるプロジェクト『潤一』は、カンヌお墨付きの作品である。今年4月に開催された国際ドラマの祭典『カンヌシリーズ』コンペティション部門に出品、公式上映された実績を持つ。『カンヌ国際映画祭』の最高賞であるパルムドールをはじめ、米『アカデミー賞』へのノミネートなど、数々の受賞歴を誇る是枝裕和監督が企画参加する是枝組作品として注目され、NetflixやAmazonのオリジナルドラマなどと並んで、その作品性を評価する声を、カンヌでも耳にした。
本作は、直木賞作家・井上荒野氏の連作短編集を映像化したもの。気まぐれに女から女へと渡り歩く26歳の妖艶な主人公・潤一が、出産を控えた妊婦、妹の旦那と寝る姉、亡くなった夫の不倫を疑う未亡人、夫に束縛された妻、処女を捨てたい女子高生、毎日男漁りに出かける女といった、孤独を抱える女性の前に現れては小さな波紋だけを残し、たちまち去っていくという、全6話のオムニバス形式の官能ラブストーリー(1話あたり25分〜40分)。
主演を務めたのは、甘いルックスに演技力も兼ね揃え、現在次々と話題作に起用されている志尊淳。自身初となるヌードに挑戦し、官能的なベッドシーンを惜しげもなく披露。6人の女優陣(藤井美菜、夏帆、江口のりこ、蒔田彩珠、伊藤万理華、原田美枝子)が演じる“ワケありな女性たち”を刹那の愛により自然体で潤していくという難柄だったが、『カンヌシリーズ』の会場で志尊は、「潤一は女性たちの心に空いた隙間に入り込んでいく。観ていただく方にもその部分に注目してほしいです」と語り、観客を魅了する意気込みは十分だ。
監督は、『歩いても 歩いても』以降の是枝作品を支えてきた北原栄治氏と是枝氏の愛弟子である広瀬奈々子氏が務め、脚本は同じく分福の砂田麻美氏、撮影は『誰も知らない』をはじめ是枝作品には欠かせない山崎裕氏らが担当した。また、プロデュースは、『あゝ、荒野』、『愛しのアイリーン』、『新聞記者』(6月28日公開予定)など、話題作を放出するスターサンズ。この製作体制から、物語の濃さはもちろん、映像美にこだわった完成度の高い作品であることが想像できるだろう。
◆劇場公開をした後に配信、テレビ放送を実施
そんな、カンヌで世界中から注目を浴びた『潤一』が、いよいよ日本でお披露目される。まず、6月14日から1週間限定で、東京・丸の内ピカデリーで劇場公開され、その後、6月26日よりAmazonプライムビデオ、iTunesほかにてデジタルセルで配信を開始(配信用のディレクターズカット版の尺は、1話・34分、2話・37分、3話・25分、4話・32分、5話・30分、6話・40分。)。7月12日25時55分より、関西テレビでローカル放送されるという段取りだ。さらに、その放送終了後には、国内プラットフォームで見逃し配信が行われ、CS放送・日本映画専門チャンネルでの放送も予定(7月13日23時〜)。矢継ぎ早にあらゆるプラットフォームで『潤一』が展開される計画が組まれている。これは作品に出資参加した製作委員会が、あらゆる方向で話題作りと出口を模索した結果である。
『潤一』をテレビドラマとして捉えるならば、海外で話題を作った後、映画と配信で先行する展開はこれまでにない手法。既存の枠組みにはまらないやり方である。そもそも作品の出口そのものにこだわっていないことが、北原監督の「昨今、作品を観る場として、テレビと配信と劇場の境界が滲んできているように見える。テレビドラマというより、1話ごとに短編映画を作るような気持ちで撮りました」という公式コメントからもわかる。
こうしたプロジェクト発の良作が今後、主流になっていく可能性は十分に考えられることである。クリエイティブの幅が広がり、国内外で展開していくことにもつながっていく。作品を主体に展開される『潤一』が、カンヌに続いて日本でも支持を集めていくのか。実績実力が十分にあることを、それぞれのプラットフォームで見せつけてほしいものである。
文/長谷川朋子
◆NetflixやAmazonのオリジナル、海外ドラマに並ぶ良作
分福によるプロジェクト『潤一』は、カンヌお墨付きの作品である。今年4月に開催された国際ドラマの祭典『カンヌシリーズ』コンペティション部門に出品、公式上映された実績を持つ。『カンヌ国際映画祭』の最高賞であるパルムドールをはじめ、米『アカデミー賞』へのノミネートなど、数々の受賞歴を誇る是枝裕和監督が企画参加する是枝組作品として注目され、NetflixやAmazonのオリジナルドラマなどと並んで、その作品性を評価する声を、カンヌでも耳にした。
本作は、直木賞作家・井上荒野氏の連作短編集を映像化したもの。気まぐれに女から女へと渡り歩く26歳の妖艶な主人公・潤一が、出産を控えた妊婦、妹の旦那と寝る姉、亡くなった夫の不倫を疑う未亡人、夫に束縛された妻、処女を捨てたい女子高生、毎日男漁りに出かける女といった、孤独を抱える女性の前に現れては小さな波紋だけを残し、たちまち去っていくという、全6話のオムニバス形式の官能ラブストーリー(1話あたり25分〜40分)。
主演を務めたのは、甘いルックスに演技力も兼ね揃え、現在次々と話題作に起用されている志尊淳。自身初となるヌードに挑戦し、官能的なベッドシーンを惜しげもなく披露。6人の女優陣(藤井美菜、夏帆、江口のりこ、蒔田彩珠、伊藤万理華、原田美枝子)が演じる“ワケありな女性たち”を刹那の愛により自然体で潤していくという難柄だったが、『カンヌシリーズ』の会場で志尊は、「潤一は女性たちの心に空いた隙間に入り込んでいく。観ていただく方にもその部分に注目してほしいです」と語り、観客を魅了する意気込みは十分だ。
監督は、『歩いても 歩いても』以降の是枝作品を支えてきた北原栄治氏と是枝氏の愛弟子である広瀬奈々子氏が務め、脚本は同じく分福の砂田麻美氏、撮影は『誰も知らない』をはじめ是枝作品には欠かせない山崎裕氏らが担当した。また、プロデュースは、『あゝ、荒野』、『愛しのアイリーン』、『新聞記者』(6月28日公開予定)など、話題作を放出するスターサンズ。この製作体制から、物語の濃さはもちろん、映像美にこだわった完成度の高い作品であることが想像できるだろう。
◆劇場公開をした後に配信、テレビ放送を実施
そんな、カンヌで世界中から注目を浴びた『潤一』が、いよいよ日本でお披露目される。まず、6月14日から1週間限定で、東京・丸の内ピカデリーで劇場公開され、その後、6月26日よりAmazonプライムビデオ、iTunesほかにてデジタルセルで配信を開始(配信用のディレクターズカット版の尺は、1話・34分、2話・37分、3話・25分、4話・32分、5話・30分、6話・40分。)。7月12日25時55分より、関西テレビでローカル放送されるという段取りだ。さらに、その放送終了後には、国内プラットフォームで見逃し配信が行われ、CS放送・日本映画専門チャンネルでの放送も予定(7月13日23時〜)。矢継ぎ早にあらゆるプラットフォームで『潤一』が展開される計画が組まれている。これは作品に出資参加した製作委員会が、あらゆる方向で話題作りと出口を模索した結果である。
『潤一』をテレビドラマとして捉えるならば、海外で話題を作った後、映画と配信で先行する展開はこれまでにない手法。既存の枠組みにはまらないやり方である。そもそも作品の出口そのものにこだわっていないことが、北原監督の「昨今、作品を観る場として、テレビと配信と劇場の境界が滲んできているように見える。テレビドラマというより、1話ごとに短編映画を作るような気持ちで撮りました」という公式コメントからもわかる。
こうしたプロジェクト発の良作が今後、主流になっていく可能性は十分に考えられることである。クリエイティブの幅が広がり、国内外で展開していくことにもつながっていく。作品を主体に展開される『潤一』が、カンヌに続いて日本でも支持を集めていくのか。実績実力が十分にあることを、それぞれのプラットフォームで見せつけてほしいものである。
文/長谷川朋子
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2019/06/07