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『腐女子、うっかりゲイに告る。』藤野涼子のままリアルを表出す、腐女子役の好演

 1月期の『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』に続き、今期も攻めているNHKの「よるドラ」。ライトノベルの『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を原作とした『腐女子、うっかりゲイに告る。』は、ゲイの少年とBL好きの「腐女子」が出会ったことで起こる、純粋でねじくれた恋と青春の物語だ。

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 ゲイであることを隠して生きる男子高校生・安藤純を演じるのは、金子大地。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)のマロだと知りながら見ても、やっぱり同一人物にはどうしても思えない。週刊エンタテインメントビジネス誌「コンフィデンス」の満足度調査ドラマバリューのアンケートでも「金子大地くんの繊細なお芝居がすばらしい」(女性40代/東京)「純役の『普通』にとらわれ葛藤する演技がよかった」(女性20代/東京)などの声があるように、本作ではゲイの少年の抱える葛藤や屈折感を瑞々しくも影のある雰囲気で表現している。

 それに加えて、この作品のキモとなるのは、「腐女子」の三浦紗枝。難役である純の揺れ動く感情にリアリティを与えるのは、紗枝を演じる藤野涼子に他ならない。アンケートでも「金子さんや藤野さんの若手の演技が上手」(女性50代/埼玉)「主演の2人がみずみずしくて良い」(女性50代/兵庫)などの声があがっている。

■藤野涼子のナチュラルな佇まいにしっくりハマっている三浦紗枝役

 本屋でBL本を買うところを純に見られた紗枝は、みんなに黙っていてほしいと懇願する。紗枝にはBLの趣味に関して知られたくない辛い過去があるからだ。紗枝の秘密を知った行きがかり上と、「本当の自分を偽って生きる」紗枝への関心などから、純はBLイベントに付き合うことになり、交流を深めていく。やがて純がゲイであることを知らずに紗枝は告白。2人の交際がスタートする。

 なぜゲイである純が異性の紗枝と付き合おうと思ったのか。その心情に説得力を持たせることが、序盤の展開において非常に重要な意味を持っていた。純はゲイだが、女手ひとつで自分を育て、自分の幸せを願ってくれている母親のため、世間体を気にして「いつかは普通の結婚をして家庭を築きたい」と考えている。そんな彼が「普通になれるかもしれない」と思える相手が、藤野涼子演じる紗枝なのだ。

 では、そんな紗枝の魅力とは何なのか。誰にも言えない苦悩を抱きながら、誰にも本心は見せず、斜に構えた純の心を開く少女は、月並みな展開だと「天真爛漫で誰にでも愛される明るい子」になりそうだ。しかし、紗枝はちょっと違う。自分の好きなものを否定されたことによる心の傷を持ちつつ、だからこそ「ひとの好きなものを否定するのは良くない」というフラットさを持つ子だ。藤野涼子の素朴で礼儀正しく、素直でまっすぐで自分の芯をちゃんと持っている雰囲気が、繊細な純に安心感を与えているであろうことは純の表情から見てとれる。

 自分の好きなものや興味があるもののことになると周りが見えなくなり、一気に愛がダダ溢れしてしまうオタク的熱量と、想像力を駆使して日常の事象や他者を理解しようとする知性、自分の思いをまっすぐ表現する素直さなどが、藤野のナチュラルな佇まいにしっくりハマっている。

■女優としての潜在能力を見出された主演デビュー

 ところで、藤野涼子というと、多くの人が思い出すのはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』で演じた、ヒロイン・みね子(有村架純)の職場の同僚で「乙女寮」に暮らす仲間の豊子だろう。日頃は低く落ち着いた喋りで貫禄を感じさせる優等生の豊子が、工場閉鎖でみんながバラバラになることが決まったとき、突然立てこもり、「おれは嫌だ。みんなと一緒に、働きてえ」と反乱を起こす。頭が良くてしっかりしている豊子が、初めてダダをこねるような子どもの顔を見せるシーンに、泣かされた視聴者は多かった。

 そんな彼女が芸能事務所に入ったのは小学校5年の頃。「テレビに出たかった」という理由で始めたが、演技経験はほとんどないまま、2014年の映画『ソロモンの偽証』で主演に抜擢され、注目を浴びる。いきなりの主演デビュー、それも「日本映画最大規模」ともいわれるオーディションで、半年にわたる選考を経て1万人のなかから選ばれたという経緯は、完全なエリートコースだ。

 しかし、「演技力は最下位」「真っ直ぐな眼差しと真っ直ぐな心に賭けてみようと」というのが監督の起用理由だったというから、経験では測れない“女優”としての潜在能力を見出されたのだろう。

■「カメレオン俳優」ではない、藤野涼子のままのリアル

 そして、本作で藤野が演じているのは、同性愛者の少年が「普通」になるために好きになろうとする少女だ。言ってみれば「普通」への架け橋のような存在だ。だが、見た目はすごく「普通」だが、純に「普通の恋人」の定義を聞かれたときの紗枝の答えである「丁寧に挨拶し合える恋人かな」も、「よろしくお願いします」とはにかんで頭を下げるのも、女子高生としては全然「普通」じゃない。

 藤野の現実味ある等身大の雰囲気と、どこか古風で素朴で品のあるところが、紗枝の持つ純粋さや包容力、思ったことを自分の言葉でまっすぐ伝える強さにリアリティを与えている。だからこそ、純が何度も心のなかで呪文のように繰り返す「三浦さん(紗枝)となら大丈夫」は切実だし、「三浦さんの笑顔を見ると嬉しい」という言葉におそらく嘘はない。視聴者は純の感情とリンクするように、紗枝の楽しそうな無邪気な笑顔を見て、ホッとしたり、心がほぐれるのを感じたりする。と同時に、「勃たないけど好き」の微妙だが確かでシビアな現実を突きつける存在でもある。

 演じる役によって別人のように表情を変える役者を「カメレオン俳優」とよく言う。しかし、藤野涼子の場合は「別人」になるのではなく、藤野涼子のまま、気負いもてらいもなく、ナチュラルにその人物の感情のリアルを表出させる。純が紗枝について語る「僕といるのが楽しいんだと、声、表情、全身で表現する」という言葉に、藤野涼子の自然体の演技の魅力が凝縮されていると思った。
(文/田幸和歌子)

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  • 難役の揺れ動く感情にリアリティを与える藤野涼子/『腐女子、うっかりゲイに告る。』(C)NHK
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提供元:CONFIDENCE

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