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『ポケモン』実写映画、800匹から選抜の苦悩 20〜30代意識で『ミュウツーの逆襲』リスペクト

 テレビアニメや映画化などもされ、世界中で愛されているポケモン初となるハリウッド実写映画『名探偵ピカチュウ』が、3日より日本先行で公開されている。今回、本作で監督を務めるロブ・レターマン監督と、アニメ版ポケモン映画を20年以上演出してきた湯山邦彦監督にインタビューを実施。ロブ監督は「ポケモン800匹以上を出すことは予算的に難しく、初代ゲームで人気のポケモンをベースに選抜」「20〜30代前半の“ポケモン世代”に対してこだわった映画で、クリエイターやポケモンファンを最大限にリスペクトした」、湯山監督は「モブのポケモンは、割と個人的に好きなポケモンを選んでいる」「劇場版1作目は手探り状態、試行錯誤の連続だった」など、大人気コンテンツ『ポケモン』を映画化する上での悩みや裏話を赤裸々に語ってもらった。

『ポケモン』映画の監督を務めた(左から)ロブ・レターマン監督と湯山邦彦監督 (C)ORICON NewS inc.

『ポケモン』映画の監督を務めた(左から)ロブ・レターマン監督と湯山邦彦監督 (C)ORICON NewS inc.

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■実写版は20〜30代“ポケモン世代”へのこだわり 151匹意識で「彼らの想像を形に」

――大人気コンテンツ『ポケモン』の“実写”“アニメ”とジャンルは違いますが、映画監督のオファーをいただいた時の心境はどのようなものでしたか。

【ロブ監督】 ゲームやアニメが世界中で20年以上長く愛され続けている作品の監督を務めることになって光栄ですし、ワクワクしている気持ちもありますが、最初は非常に緊張して、どんな反応が出るのか不安はあります。ファンのためにも「しっかりと作り込まなければ!表現しなければ!」という重圧はありましたね。ファンだけでなく、今までポケモン作品を作り上げてきたクリエイターの方々に対しても、ガッカリせず満足していただける物を生み出さなければという想いでした。

【湯山監督】 『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は、ゲーム人気の勢いのままアニメ化され大人気となった劇場版1作目でした。あの時代は現代のようにアニメーション映画が多くなかったので、アニメが放送されてすぐに『劇場版を作る』という流れが定着してなかった。なので、プレッシャーというより、アニメ版のポケモンが映画化されることは、すごい特別なことで驚きましたし、手探り状態、試行錯誤の連続だったのを覚えています。

――1996年『ポケットモンスター 赤・緑』発売時は151匹でしたが、今では800匹以上に増えたポケモンたち。劇中で登場しているポケモンたちは、どのように選んでいるのでしょうか。

【ロブ監督】 予算的にも800匹以上を劇中にすべて登場させることは難しかったですね(笑)でも初代ファンのためにも「150匹以上は出したい!」想いがありました。その中で、今作ではピカチュウ、リザードン、ギャラドスなど50種類以上のポケモンが登場していて、フシギダネが30匹以上の団体を作って行動するなど、劇中では1000匹以上のポケモンの姿を見ることができます。

 選抜する中で映画のベースとなっているゲーム『名探偵ピカチュウ』で、重要な役割を果たすポケモンは先に選びました。それ以外は、ゲーム『ポケットモンスター 赤・緑』第1世代の人気ポケモンたち(151匹ベース)を登場させたかったですし、実写映画ということで「どうやったら2Dのポケモンを現実世界に3Dで表現できるのか」を考えていました。

 ポケモン関係者の方々と「どのポケモンであればきちんと表現できるのか」などと何度も意見交換をして、ファンに馴染みがあるポケモンたちを選びました。個人としてこだわったのは、20代〜30代前半の人は小さいころからポケモンに触れて育った“ポケモン世代”。その世代は心からポケモンを愛しており、ポケモンとともに人生を歩んだ存在であり、その方々が一度は想像したであろう「現実世界に居たら、どんな動きをするのだろうか?」を形にし、想像を超えることができるのかが重要なことでした。

【湯山監督】 20年以上ポケモン作品に携わってきた中で、物語のキーとなるポケモンは先に選びますが、モブのポケモン(草むらなどに登場するポケモン)は割と個人的な好みで選んでいます(笑)それでも、みなさん各自に好きなポケモンがあると思うので、「前作、この子は登場しなかったから今作は登場させよう」と配慮の気持ちやローテーションはしています。

 映画内のポケモンの紹介で、500〜600匹くらい出したことがあったのですが、打ち合わせだけで丸3日間くらい掛かったのを覚えています。でも、一度は全ポケモンを登場させてみたいですね。

■劇中のミュウツー“カントー地方”設定は名作のリスペクト 『逆襲』は「意識はした」

――私自身、アニメはもちろんゲームも初代から最新作までプレイしたロブ監督が言うポケモン世代の1人です。ファンとして、作品を見て感じたのはミュウツーの描き方が印象的でした。湯山監督の劇場版1作目が、全米で日本映画興行収入歴代1位の記録を未だに保持している『ミュウツーの逆襲』ということもあり、同作から影響はあったのでしょうか。

【ロブ監督】 オープニングは、『ミュウツーの逆襲』のスタイルをなるべく再現しようと思いました。ミュウツーが居るタンクの形や空気の泡、ミュウツーが爆発を起こす方向などもなるべく合わせるようフレーム毎に研究し、リスペクトの意味が込められています。

――そんなミュウツーですが劇中で「20年前にカントー地方から逃走」したと明かされています。これを見て「『ミュウツーの逆襲』に登場したミュウツー?」と気になりました。

【ロブ監督】 ふふふ、しっかりとした設定があるわけではありませんが、『ミュウツーの逆襲』のミュウツーは意識しました。『名探偵ピカチュウ』は新しい地方を舞台にライムシティを紹介しているのですが、ほかのポケモン作品に繋がっている世界観にしたかったので、その繋がりのため「カントー地方」を劇中で触れました。これも名作『ミュウツーの逆襲』とファンへの最大限のリスペクトであり、劇中のミュウツーに関しては「『ミュウツーの逆襲』のやつ!?」と思っていただけたらうれしいです。――アニメ版のポケモン映画は『ミュウツーの逆襲』のように、心に抱える“葛藤”や人類への“逆襲”、クローン問題など大人でも考えさせられるテーマがあります。劇中では、どのようなことを描いているのでしょうか。

【ロブ監督】 今作では色んなテーマがありますが、個人としてのお気に入りは「父と子」の繋がり。最初はうまく関係が築けていない親子が、ストーリーが進む中でもう一度絆を見つけることができて、「希望」という意味も込められています。また、ポケモンという存在が人間の最善、最良を引き出すことも描きたかった。「最初はうまく関係が築けていない」という部分は親子関係だけでなく、「人間とポケモンの絆」=「主人公のティムと名探偵ピカチュウ」の間で描きましたし、アニメ版のサトシとピカチュウの関係も最初はこのような感じだったので、懐かしさを覚える方も居るかも知れません。

【湯山監督】 (過去20作以上は)ポケモン、人間とわけた“生き物同士”の物語として描いていて、「別の命同士のぶつかり合いから、何かが生まれると良いな」と思っています。異種の存在とコミュニケーションが取れた時の喜びや相手を理解していく感情などが伝えられたらいい。これは、20年以上作品を作り出した中で変わらない核の部分であり、作品毎でテーマが変わる中でもブレないように気をつけています。

<映画『名探偵ピカチュウ』作品概要>
 世界中で大人気・ピカチュウを題材にした同名ゲームをベースに実写映画化。主人公のティムがライムシティという街を舞台に、見た目は可愛いのに中身はおっさんで自分にしか聞こえない人間の言葉を話す名探偵ピカチュウと一緒に謎を解きながら、事件に巻き込まれた父親を探すミステリーアドベンチャー。

(c)2019 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved.(c)2019 Pokemon.

関連写真

  • 『ポケモン』映画の監督を務めた(左から)ロブ・レターマン監督と湯山邦彦監督 (C)ORICON NewS inc.
  • ハリウッド実写映画『名探偵ピカチュウ』の場面カット
  • ハリウッド実写映画『名探偵ピカチュウ』の場面カット
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  • ミュウツーが登場する映画『名探偵ピカチュウ』の場面カット
  • ハリウッド実写映画『名探偵ピカチュウ』の場面カット
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  • ハリウッド実写映画『名探偵ピカチュウ』の場面カット
  • ハリウッド実写映画『名探偵ピカチュウ』のメインビジュアル

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