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半年間好調を維持した『まんぷく』福田靖氏の脚本力 絶妙なバランス感覚と立体的なキャラクター配置

 3月30日に最終回が放送され、素晴らしいラストに絶賛の声が多数寄せられたNHK連続テレビ小説『まんぷく』。毎朝15分×週6日×半年間という膨大な量のドラマを、なかだるみせず、最初から最後まで好評のうちに駆け抜けるのは、至難の業だ。

連続テレビ小説『まんぷく』ヒロイン・福子を演じた安藤サクラ(C)NHK

連続テレビ小説『まんぷく』ヒロイン・福子を演じた安藤サクラ(C)NHK

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 実際、朝ドラの場合、大ヒット作や評価の高い作品のなかにも「最後の1カ月は蛇足だった」「〇〇編は要らなかった」などとシビアな評価をされるものは多数ある。その点、『まんぷく』はスタートから最終回に至るまで、非常に安定した評価、数字を保ち続けた。その理由には、安藤サクラ長谷川博己を中心とした達者な役者陣の力と、丁寧な演出、そして何より福田靖氏の脚本力があるだろう。

■シリアスを中和させた脱力系キャラ同士の化学反応

 とくに『まんぷく』の脚本が優れている点のひとつに、絶妙なバランス感覚がある。『おはなはん』(1966年)から始まった女性の一代記・半生記を描く朝ドラでは、戦争などの困難を乗り越える展開が多く登場する。しかし、『おしん』(1983年)などが放送された時代と異なり、今はシリアスすぎる展開が視聴者にあまり好まれない傾向がある。

 かといって、実在するモデルがいる場合、ある程度史実に沿うために、シリアスな出来事や困難は避けて通れない。半年間のドラマをもたせるために必要な要素でもある。そこで視聴者を離れさせないために重要なのは、シリアスとコミカルのバランス感覚だ。

 咲姉ちゃん(内田有紀)の死、戦争、萬平の度重なる逮捕……あらすじを追っていくと、波乱万丈この上ない。そこで福田氏が効果的に用いたのは、序盤なら「缶詰の野呂さん(藤山扇治郎)」や「白馬の歯医者の牧さん(浜野謙太)」など、クスッと笑える脱力系のキャラクターだった。さらに、展開が深刻化してくると、そうした脱力系キャラ同士をコラボさせ、そこに福子の友人なども絡ませて、集結させることで、別の化学反応を起こさせてみせる。

 ちなみに、朝ドラでは『澪つくし』に明石家さんまが登場した頃から、芸人が「お笑い担当」として登場することが多い。芸人の力を借りて、パッと見でわかる「お笑いパート」を設ける作品も多く、うまくいけば空気がガラリと変わるが、ともすればそのパートだけが作品から浮き上がってしまうリスクもある。

 その点、『まんぷく』はあえて「芸人によるお笑いパート」を設けなかった。だからこそ、終始一貫して話にまとまりがあり、スッキリ見やすくなっている。

■根本的な部分は一貫しながらも見せる絶妙な「変化」

 それから、『まんぷく』の「立体的なキャラクター配置」も大きな特徴といえるだろう。この立体感を作り出しているのは、各キャラクターの「一貫性と変化」の描写にある。

 長い朝ドラのなかでは、キャラクターがストーリーの都合上、あるいは途中で設定を忘れられて、別人のように豹変してしまうパターンがある。しかし、『まんぷく』の場合は、根本的な部分は一貫しているのに、年齢や立場、出来事による「変化」を見せてくれる。

 例えば、福子や姉・克子(松下奈緒)、姪のタカちゃん(岸井ゆきの)は妻になり、母になり、変化していく。その変化は実に自然である。また、序盤の脱力系キャラたちの出番が減って以降、最後まで物語のバランスを支え続けた二大巨頭、「ぶしむす」の鈴さん(松坂慶子)と、萬平の「親友」で商売人の世良(桐谷健太)の変化は見ごたえがある。

 彼らは「お笑い担当」であり、「視聴者目線のツッコミ担当」でもある。序盤では口うるささや、身勝手さ、計算高さなどが目立ったが、萬平と福子が結婚してからは猪突猛進の天才・萬平と、ひたすら夫を信じ、応援し続ける福子の応援団であり、ツッコミ役を担ってきた。「純粋すぎる天才と、盲目的に応援する妻」だからこそ、画期的な商品を生み出すことができたわけだが、現在の視聴者たちはそう気長に見守ってはくれない。

 そこで、ダメ出しをしたり、ツッコミを入れたりするのが、言いたい放題の鈴さんと、「俗世間」代表の世良だった。この2人のツッコミにより、ひたすら真っすぐ進み続ける萬平&福子に、ときにはドン引きしたり、ついていけないと感じたりする視聴者たちは、溜飲を下げることができる。

 かといって、2人の「変化」は、それぞれの置かれた立場や萬平・福子との間で築かれた関係性からくるものであり、人間性は最後まで何ら変わらない。そこが上手い。

■視聴者に愛された「ぶしむす」鈴さんと世良の“コンビ芸”

 さらに物語を立体的にしているのは、そんな「世間」の役割を担う2人に対してすらも、外からの視点を忘れないこと。2人はよく似ているのに、互いを「うるさい」「うさん臭い」と感じている。しかも、後半からはリアクションが完全にシンクロしてくるという見事な「コンビ芸」も見せ、挙句、途中からは好き勝手に発言しては周囲からスルーされている。そんな姿に、視聴者は愛着を感じ、クスリとしてしまうのだ。

 加えて、物語に立体感を与えている存在として、序盤で亡くなり、最後まで「霊」として見守り続ける咲姉ちゃん(内田有紀)の存在も忘れてはならないだろう。

 もうひとつ、福田脚本の巧さとして特筆すべきは、リズム感・スピード感だ。朝ドラは、かつてのように忙しい朝に、家事の合間に見る中高年の主婦がメインターゲットだった時代とは異なり、現在は老若男女から注目されるコンテンツになっている。

 情報処理速度の速いネット世代に飽きられず、従来の視聴者を混乱させない「遅すぎず早すぎず」のスピード感と、わかりやすさは、いかにも手練れである。

 しかも、深刻な展開が続いたときの「引き上げどき」のタイミングも上手い。一部、萬平・福子の子がいじめられたときの展開などに「あっさり解決しすぎ」という指摘もあったが、視聴者を脱落させないための見極めとしては、ベストのタイミングだったと思う。

 最後にもうひとつ、「一人ひとりのキャラクターを愛しつつも、特定のキャラだけに固執しすぎないこと」も福田脚本の魅力だろう。特定のキャラに傾倒してしまうと、そのキャラが魅力的に輝くかわりに「暴走」につながるリスクもある。

 ほどよい温度の愛情と、常に失われることない客観性もまた、『まんぷく』を脚本家の私物でなく、私たち視聴者のための物語にしてくれたのではないだろうか。
(文/田幸和歌子)
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提供元:CONFIDENCE

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