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旧時代的な女性像がハマる女優・土村芳、今期2作のギャップで示した意外性と存在感

 今クールの「表看板」の注目ドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)と、「裏看板」と言えるドラマ好きからの注目度の高い話題の異色ドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK)。視聴者層もかぶらず、テイストも真逆をいくこの2作をつなぐ共通点がある。それは、女優・土村芳だ。

『3年A組〜』では、菅田将暉演じる美術教師・柊一颯の以前の勤務先の高校教師で、かつての交際相手であり、現在は心を閉ざして自宅療養中の相楽文香役。そして、『ゾンビ〜』では、何事にも執着せず、「いつ死んでも良い」と思って淡白に生きてきたヒロイン・みずほの親友の同居人で、明るくおバカで空気の読めないキュートな柚木を演じている。この2つの役柄の大きなギャップを同時に見せることで、ドラマ好きには今クールの印象深い存在になっている。

■古風なおっとり昭和顔の癒し系女優としての安定感

 古風でおっとりしていて、包容力がありそうで……どの時代でも好かれそうな昭和顔の癒し系女優・土村芳。朝ドラ『べっぴんさん』でヒロインの親友で、病弱で物静かで真面目で手先の器用な「デザイン担当」の君枝を演じたときには、同じく朝ドラ『とと姉ちゃん』の次女役・相楽樹にも似た、クセのないふんわりした雰囲気の美人女優だと思っていた。そして、「朝ドラって、こういうタイプが好きだなあ」とも。

 また、『恋がヘタでも生きてます』(日本テレビ系)では、ヒロインの親友で料理上手なルームメイトであり、「SEXがヘタなマグロ女」として彼氏に浮気されつつ許してしまう女性を演じていた。

『べっぴんさん』でも『恋ヘタ』でも、横暴・ワガママ・自分勝手な男に抑圧されたり、振り回されたりしながらも許容してしまう健気で辛抱強い女性を演じていた。さらに、『コウノドリ』(TBS系)では、珍しく夫が優しくまともだったものの、妊娠と同時にがんが発覚するという辛い運命に。「おっとり」「控え目」「辛抱」「健気」「薄幸」が似合う旧時代的な女性像が、いやにハマる女優に見えた。ところが、今クールのドラマの彼女は意外性に満ちている。

■真面目さと危うさ、率直さと大胆さが同居した奥深さ

『3年A組〜』では、元恋人の柊の「犯行」の動機が自分にあるのではないかと心配する、引きこもりの元教師の女性・相楽を演じている。真面目な優等生タイプで、問題を1人で抱え込んでしまいそうな硬さ・もろさが際立つ相楽の人物像。その一方で、柊が何度も見返している動画に漂う「青くさい語り」の甘さ、ユルさは、スキだらけに見えて、実に危うい。これまで数々のドラマでダメ男たちを許容してきたおおらかさが、この作品では「危うさ」「ユルさ」に見事に転じている。

 さらに、そうした作品の延長線上から大きく飛び出し、はじけまくっているのが、『ゾンビ〜』で演じている柚木だ。実は土村にとって「明るく元気いっぱいの役はほぼ初めて」という。髪にカーラーを巻いたままだったり、ポップなポンポンやピンをつけてピンクの服を着ていたりする姿は、見るからにダメそうな感じ。だが、クールで何事にも執着心のないみずほと、常識に縛られ、本能や本音を抑え続けてきた美佐江という2人のルームメイトの間で潤滑油的な役割を果たしている面もある。

 それでいて、みずほの夫と不倫をしていた相手が美佐江だったことを知ると、全く悪気ない発言で、美佐江の過去の心の傷をえぐるデリカシーのなさを見せたり、みずほの夫が「ゾンビ化」しつつあるときには、おっかなビックリ興味津々で観察したりする図太さもある。挙句の果てには、ゾンビ化した人物を、これまた悪気なく「ゾンビ除けの装置」として利用しようとする計算高さもある。どこまでもポジティブで率直で無邪気で、裏表がない。だからこそ、淡々としたみずほが警戒心なく笑ってしまうし、「刑務所に入っていたことがあるだけで、自分には嫌なことをしない」中年男とも偏見なく恋人になれるし、その連れ子の小学生女児との微妙な関係に気を遣うわけでもなく、フラットに「友だち」になれる。そして、その小学生の「発見」も素直に聞き入れ、ゾンビに囲まれた状況から抜け出すための突飛なアイデアを思いつくたくましさも持ち合わせているのだ。

■さまざまな方向性に振り切る余白がある、今後が楽しみな女優

 言葉の間違いは多いし、バカで男に騙されてばかりの柚木だが、自分の思いに正直で、大胆で、実はいちばん生命力に溢れている。そんな「おバカそうで、いちばん真理を理解している」頼もしさと可愛さは、これまでの「控え目な女性像」を演じてきた土村と同一人物とは思えない。野次馬な表情も、突き抜けた明るい笑顔も、妙な間のとり方も、全部がおかしく、魅力的で、柚木の一挙手一投足を目で追ってしまうのだ。

 真面目で優等生的で、ちょっとユルくてスキがあって、意外に大雑把で大胆にも見える土村芳。その演技には、さまざまな方向性に振り切ることのできる余白がたっぷりある。単なる古風な癒し系美人女優じゃなく、今後とんでもなく化けそうな、楽しみな女優だ。
(文/田幸和歌子)



提供元:CONFIDENCE

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