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是枝監督、パルムドール受賞に覚悟新た「本当に重い出来事」

 『第71回カンヌ国際映画祭』授賞式が19日(日本時間20日)、フランスで行われ、コンペティション部門に出品されていた是枝裕和監督最新作『万引き家族』(6月8日公開)が最高賞となるパルムドールを受賞した。日本映画では1997年の今村昌平監督作品『うなぎ』以来、21年ぶりの快挙。是枝監督は授賞式終了後、公式記者会見と囲み取材に応じた。

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 審査委員長を務めた女優ケイト・ブランシェットは「この作品は演技、監督、撮影など総合的にすばらしかった。選ぶにあたって気に入っていた作品を落とさないといけないのはつらかったし、難しかったけど最終的に私たちは意見が合致したの。『万引き家族』はとにかく素晴らしかった」と称賛。

 審査員のドゥニ・ヴィルヌーブ監督も「この作品は私たちに深い感動を与えてくれました。とにかく恋に落ちてしまった。上品で素晴らしくとても深い。魂をわしづかみにされた」とべた褒めした。

 こうした賛辞を受けて会見に臨んだ是枝監督の記者会見および囲み取材の一問一答は以下のとおり。

◆公式記者会見

――カンヌでの3度の受賞の後ですが、『三度目の殺人』のような他のジャンルも挑戦していくのですか?

【是枝監督】今回の作品のカンヌでの認知と受賞によって、「家族」ドラマの作家だという風な捉え方がまたますます強くなってしまうかもしれませんけど、自分ではそうは思っていないのでさまざまなジャンルにチャレンジできればなと思っています。自分が年齢を重ねていって変化していくと、いろんな家族の形、見えてくる家族の形というのも変わってくるので、決して同じことを繰り返していくのではなくて、60代、70代になった時にまた違う「家族」のドラマができるのではないかなと思っています。

――『誰も知らない』から家族モノをずっと撮りつづけていますが、特に子どもの撮り方や語り方(演技の導き方)がすばらしい。それについてお話をお聞かせください。

【是枝監督】子どもはいつもオーディションでいつもいろんな子たちに会って、その年代の特徴をつかみながら、自分が撮りたいと思う子どもを残していきます。台本はいつも渡さないので、現場に入って僕が口伝えでせりふを伝えたり、時には役者に演出の一部を担ってもらいながら、子どもからどういう感情、表情を引き出すかということを手伝ってもらいながら撮影現場で全部作っていくというやり方をします。なので、彼らは予習もしてこないし、宿題もないので、毎日笑顔で撮影現場にやってくる、そういう環境を目指しています。

――家族を取り扱うテーマは普遍的です。この場合は日本ですが、家族の関わり合い方は国や文化によって違います。もちろん個々に問題を抱えていたりもします。家族の関わり合いを日本的な観点、そして個人的にどのように考えてこの作品を描いたのでしょうか?

【是枝監督】あまり家族を描くときにどうすると日本的か日本的じゃないかということを考えては作りません。ただ、今の日本の社会の中で、隅に追いやられている、本当であれば見過ごしてしまうかもしれない家族の姿をどう可視化するかということは考えます。それは『誰も知らない』の時もそうでしたし、今回もそうでした。僕が子どもの時に住んでいた家は、あの家と同じように平屋で狭くて、僕は自分の部屋がなかったので、押し入れの中に宝物と教科書を持ち込んで自分の部屋にしていた記憶があるので、その押し入れから大人の世界を見るということは自分の実体験としてあります。万引きをしていたわけではありません(笑)

――どうして『万引き家族』の物語、この家族像を作ったのでしょうか? そして、それがなぜ監督にとって重要なのでしょうか?

【是枝監督】どうして描こうと思ったかというのを後付けで語ると、監督はだいたい嘘をつくのでそんなに本当のことを話さないと思いますけど。一つは『そして父になる』は、「家族は時間なのか血なのか」という事を問いながら作った映画だったんですけど、その先に、産まないと親になれないのだろうかという問いを立ててみようと思いました。今回の物語の中心にいるのは、自分の子どもではない子どもを育てながら父親に、母親になりたいと思う人たちの話をやろうと思ったのが最初でした。彼らをどういう状況に置こうかというのを考えたときに、ここ数年日本で起きているいくつかの家族をめぐる出来事を、新聞とかニュースで目にした時、経済的にかなり追い込まれた状況で、万引きとか年金を不正に受給することでかろうじて生活を成り立たせている家族というものの中に、そういうテーマ、モチーフを持ち込んでみようかなと思ったのが今回の映画になりました。

◆囲み取材

――受賞が決まり、檀上に上がられた際の気持ちは?

【是枝監督】あまり緊張するタイプではないが、めずらしく緊張していたので、とりあえず通訳している間にしゃべることを考えていました。

――受賞の名前が次々と呼ばれていく中で、どんな気持ちだったか。

【是枝監督】発表される順番が毎年違うので、気が付いたらグランプリとパルムドールしか残っていなかった。残っている監督が誰かもはっきりわからなくなっていて、でも周りがザワザワしてきたので、不安な気持ちもありつつという感じでした。

――今感じていることは?

【是枝監督】(トロフィーが)すごい重いです。ずっとトロフィーを持ち続けているので腕がガチガチなんですけど、これをいただくというのは、監督として本当に重い出来事で、この先、この賞をもらった監督として恥ずかしくない作品をまた作らなければならないなという覚悟を新たにしています。

――映画を通して社会へ伝えるメッセージは必要か。

【是枝監督】あまり社会に対するメッセージを伝えるために映画を撮ったことはないですし、それは正しい形ではないなと思っているので、僕が描いた家族とどう向き合って、見過ごしてしまうような環境だったり、感情だったりをどう丁寧にすくい取るかということだけを考えようと思いました。でもそれはいつもやっていることなので、そこからどんなメッセージを受け取るかは僕が発するのではなく、受け取る側が決めることなんじゃないかなと、いつも思いながら作っています。

――世界共通でこの作品のもつ普遍的な想いが通じたと感じるか?

【是枝監督】公式上映のときのリアクションも本当に温かかったんですけど、その後の取材に来る記者の方たちも言葉の中に、「TOUCH」と「LOVE」という言葉がすごいあふれていて、ちゃんと届きたいところに届いたのかなという想いではいました。表面上の犯罪を犯している家族の話であるとか、今の日本の社会状況がどうとかということの奥に、やはり父になろうとすること、母になろうとすることという、普遍性みたいなものを受け止めてくれたから、そういう言葉が出たのかなとは思っていたので、そのことはとてもうれしく思っていました。

――ケイト・ブランシェットが閉会式で「invisible people(見えない人々)」というのが今回大きなテーマだと言っていた。『万引き家族』が最もそのテーマに当てはまると言えるが、それについてはどう思うか。

【是枝監督】『誰も知らない』のときにも、社会から見えなくなっている子どもたちをどう可視化するかということを考えながら撮った映画だったんですが、今回もスタンスとしては同じなので、やはりそれを見過ごしてしまう、もしくは目をそむけてしまいがちの人々をどう可視化するかということが、全てとはいいませんが、僕自身は映画を作る上では常に自分の中心においているスタンスだったりもするので、今回はかなりストレートに反映された映画だったというのは間違いなく思っています。ブランシェットさんの言葉はすごくうれしく聞きました。

――日本にいるキャストとは話したか?

【是枝監督】今この状況でLINEのやり取りをしていて、合間にちょっとずつ写真を送ったり、まだちょっとバタバタしていて「おめでとう」「すばらしい」ぐらいの会話しか交わせていないです。

――是枝監督にとってパルムドールとは?

【是枝監督】『悲願』ってよく新聞に書かれていたんですけど、言ったことは一度もなくて…。賞というのは目標にするものではないといつも思っています。この場所に来て、クロージングセレモニーに立てるということはとても光栄なことですし、ましてや最高賞をいただくというのは、僕自身のキャリアにとっても大きなステップアップとなるでしょうし、これであと20年くらいは作りたいなという勇気をもらった気がします。

――自分はベネチアに認められたと、ようやくカンヌにお帰りと言ってもらえるようになったとおっしゃっていましたが、これで名実ともに「カンヌの是枝」になった。そのことについてどう思うか?

【是枝監督】発見していただいたのはベネチアですし、ずっと育てていただいたのはカンヌなのかなと思います。良い映画祭というのは、作り手を育てる場所だなと思うので、僕は7回呼んでいただいて、評価をいただいた回もあれば、そうでない回ももちろんありますけど、どの回もとても貴重な経験をさせてもらってます。今回は残念ながら授賞式会場にはいらっしゃいませんでしたが、韓国のイ・チャンドン(『Burning』でコンペ出品)と中国のジャ・ジャンクー(『Ash Is Purest White』でコンペ出品)という同時代にすごく強い作家がいて、彼らと同じ時代に映画を作れて、お互いにお互いの作品を認め合いながら、刺激し合いながら、この場に来られているというのはとても恵まれているなと思いますし、彼らがいるから僕も頑張って作れているし、彼らの映画との向き合い方がすごく僕に刺激を与えてくれているというのはすごく感じています。そういう監督たちとここで出会って再会して、肩をたたき合ってまた自分の映画作りの現場に戻るというのは、ひとつ大きなイベントとして思っています。

――受賞スピーチの際に「ここを目指す若い映画の作り手たちとも分かち合いたい」とおっしゃっていたが、改めてそういう方たちへのメッセージがあれば。

【是枝監督】華やかな場所だからここがすばらしいわけではなくて、自分がやっている映画というものが世界とつながっていて、映画の奥深さや歴史というものに触れられるとても良い経験ができると思います。どんどん若い人たちも目指すべきだというのはおこがましいかもしれませんが、それは監督も役者も同じく、経験すると恐らく何か捉え方が変わるので、そういう意味でも自分も周りにいる若手の監督の卵の子たちをできるだけここに来られるようにしているし、これからもそうしたいと思っています。

――今後どういう映画に挑戦したいか?

【是枝監督】口にするとなかなか実現しないものですから、あまりしゃべらないようにしているんですけど、いろいろ一緒に映画を作らないかと言ってくれる方たちが日本の外にいらっしゃるので、海外の役者たちと一緒に映画を作るというチャレンジに向かってみようかなとここ数年思っています。

――一緒にやりたい役者、スタッフはいるか?

【是枝監督】こういう映画祭でお会いして、いつか一緒にやりましょうねって言っていただけるのはだいたい役者さんが多いので、そういった交流の中で次の企画の種をまいているところですけど、実現するといいなと思っています。

――帰国してやってみたいことは?

【是枝監督】リリー(フランキー)さんとか(安藤)サクラさんと子どもたちも含め、トロフィーを持って会えるといいなと思っています。

――樹木希林さんはなんとおっしゃると思うか?

【是枝監督】天狗にならないように(笑)

――受賞したことで燃え尽き症候群になってしまうなどの心配はあるか?

【是枝監督】全然そんな心配はしていないですね。目指していないと言うとかっこよすぎるかもしれませんけど、これで映画の企画が通りやすくなるなと(笑)。むしろこの先、どういうふうに自分で撮りたいものを実現していくか、この賞はそういうところでのエネルギーにはなるなと思っています。



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