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異色テレ東局員が描くAD漫画 好調のテレ東ブランドを支える「ど根性」精神

 素人の自宅訪問、外国人の密着、池の水抜き、池上彰の選挙特番と斬新な切り口の企画を打ち出しているテレビ東京。「テレ東の中って、一体どうなっているの?」という疑問に答えるのが、先月20日に出版されたコミックエッセイ『オンエアできない!女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます』(朝日新聞出版)だ。作者はテレ東の現役局員である真船佳奈氏。同書のきっかけやテレ東好調の秘けつを聞いてみた。

■漫画のきっかけは『ゴッドタン』佐久間P テレビ作りとの共通点も発見

 同書は、真船氏がAD時代に体験した番組制作にまつわる悲喜こもごもを漫画化。きっかけは、同局のバラエティー『ゴッドタン』(毎週土曜 深1:45)などを手がける佐久間宣行プロデューサーだった。「バラエティーのAD時代に『変なところだな』と感じたことを、絵にして描きためていました。それとは別に、暇つぶしで描いた甥っ子の漫画を読んだ佐久間さんが『こんなに描けるんだったら、AD時代のマンガも描いてみたら』と言ってくれて、それならということで『需要ないと思いますけど』ってメールで送りました。それを佐久間さんがツイッターに載せてくれたら、反響がスゴくて…」。トントン拍子で漫画化が決まった。

 「小さい頃から本を出すということが漠然とした夢だった」という真船氏だが、音楽番組のディレクター業務と並行しての漫画初挑戦。周りの協力も得ながら綿密なスケジュールを立てて臨んだ。「2〜3月くらいに出版が決まり、そこから3ヶ月でネームを描いたのですが、6月は局を挙げた音楽番組『テレ東音楽祭2017』があって稼働できなかったので、7月と8月に仕上げていくという感じでした。母親には(コマ割りの)線を引いてもらったり、仕事が休みの日は全部漫画を描く時間に充てていたんですけど、ちょっと間に合いませんでした(笑)。ごめんなさい…」。

 漫画では、強烈なキャラクターたちとともに「番組に必要な小道具の集め方」「素人取材の際に必要なもの」「モザイク処理の作業工程」といった、知っているようで知らないADのエピソードが満載。AD三種の神器や制作局マップ、スタッフの役職名のように図表でわかりやすく紹介されているパートもあり、非常に読みやすさを意識した内容となっている。その点を聞くと、真船氏は恐縮しながらも自身のテレビ作りとリンクする部分があると分析した。

 「テレビの編集はまだまだですが、一番大事にしているのは誰にでもわかりやすいこと。『ここは、わからないかな?』という部分はしっかり注釈をつけたりとか、そういった部分はテレビと同じ意識でやっていましたね」。

■震災時に実感したバラエティーの力 現役局員が分析する「テレ東らしさ」とは?

 漫画を通して、魅力的なキャラクターが伝わってくる真船氏。テレビ業界入りを志した決め手は、大学時代のとある人気バラエティー番組への出演経験だった。「豪華ゲストの方が出て、2時間近く収録しているのに、面白いところだけ凝縮して30分の番組になる…これはすごくぜいたくなメディアだとその時に思いました。就活の軸が『面白いことを発信したい』だったので、出演者側になったことで『テレビ業界が一番いいかも』と感じました」。

 数多くあるテレビ局の中で「YOUはなぜテレ東へ?」と気軽な気持ちで聞いてみると、真船氏の顔つきが変わった。「2011年に就活をしていた世代だったのですが、テレ東の局長面接前に“3.11”が起きた。私は福島県出身で、父が福島にいるんですけど、その時に連絡取れない時期があって、どのテレビを見ても地元が大変なことになっている映像ばかりだったので『もしかしたら、お父さんが…』という不安な気持ちと、自分はテレビで明るい話題をやりたいと思っていたけど、これが本当にやりたいことなのかと葛藤していました」。やるせない気持ちの救いとなったのがテレ東だった。

 「その時にテレ東が『開運!なんでも鑑定団』(毎週火曜 後8:54)を放送して、たぶん(各局で)最初にバラエティーをやってくれた。あの時、番組を見てかなり救われました。私だけでなく、祖母も『久しぶりにこんなに笑って、テレビを見た』と言って泣いていて…。もちろん、ツラい時にその様子をしっかり報道するのもテレビの役割だと思うんですけど、私はそういう時に、全く違うベクトルから楽しいこともあるよって発信する局に行きたいなと思っていたので、それをボロ泣きしながら局長面接で訴えて、テレ東から内定をいただきました」。ニュース速報が流れると、すぐさま緊急体制に入る各局を横目に、通常放送を続けるテレ東のスタンスがたびたび話題になるが、多様性こそがテレビにとって大切なものだろう。

 そんな真船氏に無粋ながら、現在評価されている「テレ東らしさ」とは何かと聞いてみた。「今回の漫画を作る時も『テレ東らしさが入るといいですね』と話をしていて、それって何だろうと考えていました。あまりお金がないからアイデア勝負で、そこからどうやって面白くするかに労力をすごくかけていると思います。テレ東に入社してくる段階で、豪華メンバーがひな壇を並べて、何かやりましょうみたいな企画をやりたい人はいないと思いますし(笑)。一発のアイデアを形にすることにものすごく努力をする人が多くて、それが『テレ東らしさ』につながっているのかな。一言にすれば『ど根性』ですね」。各局で看板といえる長寿番組が数々終了しているテレビ業界だが、この漫画は「まだまだこれから」と元気づけてくれる。



関連写真

  • コミックエッセイ『オンエアできない!女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます』を出版した真船佳奈氏
  • コミックエッセイ『オンエアできない!女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます』の書影

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