昨年5月に亡くなった演出家の蜷川幸雄さん(享年80)が、「世界のニナガワ」と称されるきっかけとなった『NINAGAWA・マクベス』。その世界公演が、日本国内の公演と合わせ、一周忌追悼公演として上演されることが決定した。6月の香港初日から、日本(さいたま/佐賀)、イギリス(ロンドン/プリマス)、シンガポールで公演が予定されている。
今回の世界公演は、蜷川さんの生前から決まっていたもの。しばらく上演されることがなかった同作が、2015年秋に17年ぶりに復活し、世界各地から上演オファーが相次いだ。蜷川さんも海外公演に行くことを心から楽しみにしていたという。
公演が決まっていた国や地域からも「(予定通り)公演をしてほしい。追悼公演という形にしたい」といった要望があり、15年版に引き続き、マクベス役を市村正親、マクベス夫人役を田中裕子が務めるほか、蜷川さんのレガシーを受け継ぐキャスト、スタッフが集結。世界公演に向けて5月から稽古(けいこ)に入る。
市村は「稽古では幾多のダメ出しを受けて、公演に入り、最後、台本にサインをお願いしたら、『頑張った。蜷川幸雄』と書いてくれました。これからも自分が演じる背景には、常に蜷川さんの魂が傍にいるような気がします。『NINAGAWA・マクベス』で海外公演に一緒に行けないのは無念だけど蜷川魂をこの胸に抱き、乗り込みたいと思っています。マクベスを本場ロンドンでというとプレッシャーは普通なら感じるでしょうが、僕には二−ナがついている。胸を張って乗り込みたいと思っています!」とコメントを寄せている。
同作は、シェイクスピア作『マクベス』のせりふと人物設定はそのままに、時代を日本の安土桃山時代に移し替え、巨大な仏壇の中で、現在・過去・未来が交錯。血塗られた野望と運命の悲劇をあざやかにうつし出す。蜷川さんの独創的なアイデアで、日本文化とシェイクスピアを結びつけ、その普遍性を鮮やかに示した作品。
1980年の東京初演時(マクベス=平幹二朗・マクベス夫人=栗原小巻)は、「演出プランや作品のあがりも、自分で言うのも図々しいけれど、傑作だと思っているのだけれど、他人の目にはそうみえないのだろう、たいして評判にならず公演は終ってしまうのだ」(蜷川幸雄全演出録『Note1969〜1988』より)と記されたとおり、世間の関心は低いものだった。
その後、85年に、当時、ヨーロッパではほとんど無名だった蜷川さんに、『マクベス』の物語の舞台でもあるスコットランドで開催される『エジンバラ国際フェスティバル』で上演するチャンスがめぐってくる。以来、海外からの招へいが相次ぐようになり、「ニナガワ」の名は世界に広がっていく。日本でも凱旋公演を果たし、日本のシェイクスピア上演史に燦然と名を残す作品となった。
蜷川さんにとっても「いまの世と、死後の世界を繋ぐ仏壇。仏壇を開けて位牌と対話できるということは、シェイクスピアの作品が自分たちの物語になるということだと直感した。お彼岸には家で仏さんを迎え、お重を持って墓参りに行き、ご先祖のお墓や桜の樹の間で食事をする。ある時期までごく普通に日本人の生活にあった風景が、そのまま“我々のマクベス”になるだろうと。翻訳劇を学ぶという意識から抜け出し、ヨーロッパの人々が庭や旅籠で芝居をするような感覚でシェイクスピアを創れる、日本人がシェイクスピアをやる意味がこれで見つかったと思ったんだ」(本人談)というほど、特別な作品だった。
マクベス夫人役の田中は「『NINAGAWA・マクベス』の稽古場で蜷川さんは『忘れないで。僕はいつもここに居るから。ここから見てるから』と、おっしゃいました。あの稽古場でまた稽古を積み直し、市村さんのもと皆で、2017年の再演に向かいます。楽しみにしていらしたイギリス公演にも、蜷川さんと一緒に挑みたいと思います」と故人をしのび、意気込みを新たにしている。
■キャスト
マクベス…市村正親
マクベス夫人…田中裕子
バンクォー…辻萬長
マクダフ…大石継太
ダンカン王…瑳川哲朗
■公演情報
香港:6月23日〜25日
埼玉:彩の国さいたま芸術劇場 7月13日〜29日
佐賀:鳥栖市民文化会館 8月5日・6日
英・ロンドン:10月5日〜8日
英・プリマス:10月13日・14日
シンガポール:日程未定
今回の世界公演は、蜷川さんの生前から決まっていたもの。しばらく上演されることがなかった同作が、2015年秋に17年ぶりに復活し、世界各地から上演オファーが相次いだ。蜷川さんも海外公演に行くことを心から楽しみにしていたという。
公演が決まっていた国や地域からも「(予定通り)公演をしてほしい。追悼公演という形にしたい」といった要望があり、15年版に引き続き、マクベス役を市村正親、マクベス夫人役を田中裕子が務めるほか、蜷川さんのレガシーを受け継ぐキャスト、スタッフが集結。世界公演に向けて5月から稽古(けいこ)に入る。
市村は「稽古では幾多のダメ出しを受けて、公演に入り、最後、台本にサインをお願いしたら、『頑張った。蜷川幸雄』と書いてくれました。これからも自分が演じる背景には、常に蜷川さんの魂が傍にいるような気がします。『NINAGAWA・マクベス』で海外公演に一緒に行けないのは無念だけど蜷川魂をこの胸に抱き、乗り込みたいと思っています。マクベスを本場ロンドンでというとプレッシャーは普通なら感じるでしょうが、僕には二−ナがついている。胸を張って乗り込みたいと思っています!」とコメントを寄せている。
同作は、シェイクスピア作『マクベス』のせりふと人物設定はそのままに、時代を日本の安土桃山時代に移し替え、巨大な仏壇の中で、現在・過去・未来が交錯。血塗られた野望と運命の悲劇をあざやかにうつし出す。蜷川さんの独創的なアイデアで、日本文化とシェイクスピアを結びつけ、その普遍性を鮮やかに示した作品。
1980年の東京初演時(マクベス=平幹二朗・マクベス夫人=栗原小巻)は、「演出プランや作品のあがりも、自分で言うのも図々しいけれど、傑作だと思っているのだけれど、他人の目にはそうみえないのだろう、たいして評判にならず公演は終ってしまうのだ」(蜷川幸雄全演出録『Note1969〜1988』より)と記されたとおり、世間の関心は低いものだった。
その後、85年に、当時、ヨーロッパではほとんど無名だった蜷川さんに、『マクベス』の物語の舞台でもあるスコットランドで開催される『エジンバラ国際フェスティバル』で上演するチャンスがめぐってくる。以来、海外からの招へいが相次ぐようになり、「ニナガワ」の名は世界に広がっていく。日本でも凱旋公演を果たし、日本のシェイクスピア上演史に燦然と名を残す作品となった。
蜷川さんにとっても「いまの世と、死後の世界を繋ぐ仏壇。仏壇を開けて位牌と対話できるということは、シェイクスピアの作品が自分たちの物語になるということだと直感した。お彼岸には家で仏さんを迎え、お重を持って墓参りに行き、ご先祖のお墓や桜の樹の間で食事をする。ある時期までごく普通に日本人の生活にあった風景が、そのまま“我々のマクベス”になるだろうと。翻訳劇を学ぶという意識から抜け出し、ヨーロッパの人々が庭や旅籠で芝居をするような感覚でシェイクスピアを創れる、日本人がシェイクスピアをやる意味がこれで見つかったと思ったんだ」(本人談)というほど、特別な作品だった。
マクベス夫人役の田中は「『NINAGAWA・マクベス』の稽古場で蜷川さんは『忘れないで。僕はいつもここに居るから。ここから見てるから』と、おっしゃいました。あの稽古場でまた稽古を積み直し、市村さんのもと皆で、2017年の再演に向かいます。楽しみにしていらしたイギリス公演にも、蜷川さんと一緒に挑みたいと思います」と故人をしのび、意気込みを新たにしている。
■キャスト
マクベス…市村正親
マクベス夫人…田中裕子
バンクォー…辻萬長
マクダフ…大石継太
ダンカン王…瑳川哲朗
■公演情報
香港:6月23日〜25日
埼玉:彩の国さいたま芸術劇場 7月13日〜29日
佐賀:鳥栖市民文化会館 8月5日・6日
英・ロンドン:10月5日〜8日
英・プリマス:10月13日・14日
シンガポール:日程未定
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2017/02/20