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『フチ子』奇譚クラブ10周年 名物広報“シキ子”さんに聞く、ヒットを作る秘訣

 『コップのフチ子』など人気カプセルトイを発売する奇譚クラブが、10周年を迎えた。大人が楽しめるカプセルトイを多数企画・販売し、多くのヒットを生んできた同社。現在、渋谷パルコで10周年展を開催中で、大人のカプセルトイ市場を切りひらいた気鋭のカプセルトイメーカーのこだわりを存分に感じられる内容となっている。なぜ奇譚クラブのカプセルトイは人々の心をつかんで離さないのか? 名物広報で、“コップのシキ子さん”としても知られる、しきせいた氏にインタビューをおこなった。

“コップのシキ子”こと、奇譚クラブ広報のしきせいた氏 (C)oricon ME inc.

“コップのシキ子”こと、奇譚クラブ広報のしきせいた氏 (C)oricon ME inc.

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■企画会議は「絵+名前」だけでみんなが笑えるかが勝負

――奇譚クラブのなりたちについて教えてください。
【しきせいた】 もともと別のガチャガチャの会社に10年間くらいいたスタッフで立ち上げた会社なんです。全然堅い感じではなく、社長が子どもの頃からガチャガチャが大好きだったんですよ。

――もともと子ども向けだったカプセルトイを、大人向けにしたのはどんな意図があったのでしょう。
【しき】 理由としては単純で、ガチャガチャってやはり子ども向けっていう概念が強いんですけど、今は少子化時代ということで子どもも減っているし、お金を持っているのは大人で、子どもの頃に欲しくても買えなかったというフラストレーションを抱えている方も多いと思うので、大人向けの市場ってあるんじゃないかな、と考えたんです。実際にこの展覧会でも、大人の方がビックリするほどまわしてくれてるので、すごいなって思いますね。価格帯は200〜500円程度ですけど、だいたい1回につき2000〜3000円はまわしてくれますから。

――基本的にひとつの商品が世に出るまで、どういった手順があるんですか?
【しき】 まずは企画会議なんですけど、それも月に1回しかなくて。普通の企画書ってターゲットとか、今このキャラクターがといったマーケティングとかが記載されてると思うんですけど、うちは基本的に紙ペラ1枚で、絵と名前だけ。それで、みんなが笑ったらOKっていう。一瞬の判断、3秒くらいで決まっちゃう。それでみんなが面白いってなったら、GOという。悩んだらみんな買わないから。力説しても絶対GOにならない。今何が流行ってるからっていうのは、逆に疎いですね。

――本当に普段の生活で思いついたことなんですね。あのタイヤとか……
【しき】 そうですね。「校庭に半分埋まってるタイヤ」とか、きっと学校の思い出話から誕生したかもしれませんね。あとはこのイラストレーターの方好き、この絵いいね、じゃあ立体作ってみたら?みたいに、すごいライトな感じから始まったりもします。

――『コップのフチ子』さんもそういうところから生まれたんでしょうか。
【しき】 そうですね。うちは毎月、新商品を5つ出しているのですが、ひとつの商品に莫大な広告費を投じてPRとかは、小さい会社なので到底できないんです。もちろんフチ子さんも毎月の1商品でしかなくて。でも、フチ子さんが発売されたときって、ちょうどFacebookとか新しいSNSがグングン流行り始めたころだったんですけど、「このランチ美味しかったぁ♪」みたいなノリでフチ子さんの写真を上げてくれたっていうのが発端だったので、うまくSNSの波に乗れたような気がします。「SNSのフチに乗れたな」という感じです(笑)。うちからは公式のSNSでちょこっと発信してたぐらいで、その他の広報活動はファンの方が自発的にやってくれていて、基本的に広告塔はお客様なんです。その他の商品でも同じで、「土下座ストラップ」とかも、SNSのネタになることが非常に多いんです。おさんぽカエル、くいとめるニャーとか。SNS、さまさまです(笑)!

■クオリティを追求しすぎて利益にならないことも……

――フチ子さんって何者なんですか?
【しき】 モデルはいないんですよ。買った方が自由に妄想できるように、設定を作らなかったですよ。「私のフチ子さん」みたいな感じになってほしいなと思っていたので、うちから出してる設定は何もない。「フチ子さん」という名前なのかもどうかもわからない、みたいな。

――顔とかも絶妙ですよね。
【しき】 絶妙なんです。笑ってるようにも見えるし……。自分の思いをとことん投影できるって言われますね。それによって大変な部分もあるんですけど。プロフィールとか「OL“風”の女性」とか言ってますからね。

――ひとつひとつのクオリティにはかなりこだわられてますよね。
【しき】 なぜうちのものが良いかと言うと、みんなオモチャがすごい好きなんですよね。やっぱりガチャガチャって粗悪なもののほうが圧倒的に多くて、例えば「スカートの中の作り込みがない!」とか。ちょっとしたことなんですけど、それって買った人の喜びにつながると思ってるんです。土下座ストラップも、裏返すとサラリーマンがなんとも言えない表情になってるとか、買った後の驚き+喜びも大事にしたいと思ってるんです。フチ子さんも、ガチャガチャの台紙だとパンツが見えないようにしてるんですよ。買うと、「フチ子さんパンチラしてる!」みたいなところまで作り込んでます。ただ、そうすることによって利益が全然上がらないという問題が……。

――えっ、そうなんですか?
【しき】 昔の生物系のなんかは、作り込みすぎて、作れば作るほど赤字だったんですよ。

――カプセルトイの魅力ってなんだと思いますか?
【しき】 「不便さ」かなって思います。今ってアマゾンで頼めば商品が1時間で届くサービスもあるじゃないですか。そんな便利すぎる時代にも関わらず、ガチャガチャってどこに置いてあるのかわからないんですよ、僕らも。欲しくても買えない。まずはそこを探すっていうひとハードルがあって、さらに見つけたあとも、自分が好きなのが出ないっていう、ふたつの不便さがあって、それがたぶんお客さんの心にも残るし、購買意欲につながってるんじゃないかなと思います。その不便さは、残したほうがいいかなと思っています。『フチ子さん』をよく「WEBで売りたい」というお話をいただいたりするんですけど、それは基本的にはお断りさせてもらってます。ガチャガチャ大好き会社なので(笑)。

――ガチャガチャならではの楽しみってありますもんね。
【しき】 僕らは置き場所にも工夫してて、スーパーとかドラッグストアは従来から置いてあるので、風景になっちゃってるんですよね。あるのが当たり前、みたいな。もちろんそこに集うお客さんは一番大事ですが、これまでガチャガチャをやらなかったお客さんに向けて、意外なところに置いちゃおう…その一環がパルコさんなんです。パルコでガチャガチャって見ないじゃないですか。最初に池袋で初めてやったんですけど、インフォメーションの横に置かせてもらったんです。ターゲット的にもハマったようで、売上も非常によかった。やっぱり「子どもっぽい」となかなか手を出せないお店もいますので、それを払しょくできたのはよかったなって。ガチャガチャのメーカーが展覧会やるのは初めてらしくて、それはありがたいなって思います。

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