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構成作家・高須光聖が語るテレビに対するジレンマ

 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』(日本テレビ系)を筆頭に数々のバラエティ番組の構成を手掛ける高須光聖氏。何かと自粛ムードの現状のテレビ業界に対して、真摯な想いを明かしてくれた。

現状のテレビ業界について語る高須光聖

現状のテレビ業界について語る高須光聖

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■アツアツあんかけ対決はもう視聴者が許してくれない

──『ガキの使い』も放送開始から25年が経過しました。“マスとコア”をここまでバランスよく満足させたコンテンツもそうそうないですよね。
【高須】そうですよね。やっぱり、ふり幅が極端にデカいのが『ガキの使い』なんですよ。大みそかの『笑ってはいけない』みたいに、皆さんが楽しんでもらえるような企画もあれば、コアな層が喜ぶヘイポー企画みたいなのもあってね(笑)。やっぱり僕なんかはヘイポー企画みたいな“ゲスさ”もバカバカしくて好きなんですよ。僕の中ではお笑いのバラエティの企画って、大きく2つに分かれるんですよ。ひとつは“企画もの”、もうひとつは“創りもの”。

──“企画もの”というと今でいうなら『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)あたりですか?
【高須】そうですね。さらに遡ると『元気が出るテレビ』だったり『電波少年』であったり、比較的日テレに多いかな。で、“創りもの”は『めちゃイケ』みたいなフジテレビのコント番組の流れをくんだもの。その中で、『ガキの使い』は凄く作りこんだ企画と、ある一部の現象を雑に切り取っただけの企画が混在している感じがしますね。

──近年は“自主規制”の名目で、バラエティ番組でも以前はオンエア出来た企画も出来なかったり、なかなか思い切った企画が通らなくなってるじゃないですか? 高須さんはそこにジレンマを感じますか?
【高須】それはやっぱり感じますよ。例えば、恒例企画だった『山ちゃんVSモリマン』で、アツアツあんかけ対決ってやってたでしょ?

──アツアツのあんかけを互いにかけあうという恐ろしい企画ですね(笑)。
【高須】あと、ゴボウしばき合い対決とかさ。あれなんか「食べ物を粗末にしてる!」ってメチャクチャ怒られて。今はもう出来ないよね。「このあとスタッフが美味しく頂きました」っていうテロップを入れたら暫くは大丈夫だったんだけど、もう許してくれない。

■最近はテレビを観ている人が“ボケ”を許さない

──そこがバラエティの立場の弱さを感じますよね。それを言ったらプロ野球の優勝ビールかけも充分に粗末にしている行為だけど、あまり苦情の対象にならない。
【高須】 最近はテレビを観ている人が“ボケ”を許さないですよ。子供の頃だったら誰でも1度や2度やるようなイタズラも重大な社会問題になることだってあるし。

──今はSNSなどですぐに拡散しますしね。
【高須】ダメなことですよ、でもコンビニの冷蔵庫に入った写真をアップして青年が報道番組で取り上げられてたけど、あんなのちょっとしたお調子者の「ボケ」でしょ。親と一緒に謝りに行って、頭丸めてチャンチャンですよ。でも、今はおちおち笑ってもいられない。それどころか、働いていたコンビニまで世間からのクレームで潰れてしまうんですよ。そういった負の目線の中で、捉え方ひとつで面白くなることすらも規制されていくのは、なんか嫌やな〜って思うときはありますよね。

──因みに、作り手側が自由な発想で番組が作れない現状で、高須さんはテレビの力をどこまで信じてますか?
【高須】何か話がデカいな〜(笑)。

──以前、高須さんも構成で参加されている『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)の加地倫三プロデューサーと話していた際に、淳さんの結婚企画の舞台裏を聞いたんです。『ロンハー』特番生放送で淳さんの結婚を発表しましたけど、加地さんはなぜ事前に結婚の告知をしなかったのか聞いたら「やっぱりテレビを観てビックリしてほしかった。視聴率では測れないインパクトを残したかった」って仰ったんです。それを聴いた時、この人は本当にテレビの力を信じてるんだなって思ったんですよ。
【高須】加地君はそうだよねぇ。彼は100%信じてるし、テレビがホント大好きなんよ。俺はどうかな……俺が加地君みたいに胸を張って「テレビの力を信じてます!!」と言いきることは難しいけど、大きな渦や現象を作るのはやっぱりテレビなんだよ!とは思う。自分の中でテレビの力を信じるかというよりも、世の中を巻き込むことをまだまだしてみたいですね。

■大人たちの“膿”みたいなもんを作品にしたいな

──新たな渦を作る試みといえば、高須さんが発起人として開催中の『1万円アート-歪んだ大人展-』がまさにそうですよね。
【高須】 そうですね。材料費1万円という制限の中で、“ゆがんだ大人”というテーマで色んな方に自由に作品を作ってもらうんですけど面白いですよ。皆さん歪んでて(笑)。

──出展メンバーも箭内道彦さん、千原ジュニアさん、キングコング西野亮廣さん、トータス松本さん、バカリズムさんなど錚々たる面子ですよね。
【高須】今回、「ゆがんだ大人」というテーマになんでしたかというと、“大人になる”ということって自分のなかで完成系に近づくことだと思ってたんですよ。でも、そうじゃないことにある時期に気づいて。人って、やっちゃいけないことをして怒られると学習するでしょ? でもその分、打算的になってどんどんズルい奴になっていくんです。純粋さを持った大人なんてなかなかおらんワケでね。

──ピュアって、実は凄く残酷ですもんね。
【高須】そうそう。本人は悪気なくても平気で嫌なこと言ったりね。だから正常に歪んだ大人たちの“膿”みたいなもんが作品になったらオモロイなって。

──膿ですか(笑)。でも、そういう意味でいえば、ヘイポーさんってまさに“ピュアな大人”ですよね。
【高須】ホンマそうやね〜。あの人くらいピュアな大人はおらんよ。まぁ、それが正しい人の道かどうかは分からんけどね(笑)。

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