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ドラマ『カラマーゾフの兄弟』 原作の重厚感はクラシックとロックで表現

 『主に泣いてます』『高校入試』など、チャレンジングな企画が光るフジテレビの“土ドラ”。常に“新しさ”を感じさせるこの枠だが、『カラマーゾフの兄弟』は、ロシアの文豪・ドストエフスキーの不朽の名作をドラマ化するという意外な形でのチャレンジで話題を集める。原作に魅せられ、5年越しの企画を実現させたフジテレビの佐藤未郷氏の思いに迫った。

 “父殺し”を巡るサスペンスを軸に、若い三兄弟の内面を深遠に描いたドストエフスキーの名作『カラマーゾフの兄弟』。ドラマ化に当たり設定を現代日本に移した本作は、原作の重厚感と、哲学的な心理描写を映像ならではの表現で見せ、初回から視聴者を作品の世界へ引き込んだ。難解なロシア文学のドラマ化は、土曜23時の“土ドラ”枠ならではのチャレンジと言える。

「最初に企画を出したのは5年前。当時は企画が通らなかったのですが、チャレンジングな作品ができるこの枠が昨年復活したことで実現しました。難解な作品ではありますが、原作の魅力を活かすため、“現代風のわかりやすさ”をあえて排除したのも大きなチャレンジです。一番難しかったのは、ドストエフスキーが伝えようとしていた哲学や倫理観が何なのか、原作を自分なりに解釈して、現代の物語に落とし込むこと。

 たとえば原作の大きなモチーフであるキリスト教は、当時のロシアで盲目的に信じられていて、人々が規準としていたもの。それは現代日本で言えば、西洋医学や法律ではないかと考え、設定を置き換えたりしています」(フジテレビ編成制作局編成センター編成部 佐藤未郷氏)

“ カラマーゾフ”とは、ロシア語で“黒塗り”の意。本作では、そのタイトルを暗示する“黒”のイメージが支配する画面作りで、原作に宿る重苦しい空気感を作り出した。

 そんな異質な空間を引き立たせるのが、クラシックとロックが入り交じった劇中音楽だ。シンボリックな曲名の「Paint It Black」(ザ・ローリング・ストーンズ)を筆頭に、ニルヴァーナレッド・ツェッペリンからピンク・フロイドレディオヘッドらを鳴り響かせるセンスは、ロンドンで音楽番組を担当した経歴を持つ洋楽好きの佐藤氏ならでは。

「監督や音楽スタッフと話し合い、クラシックに負けない“ガツンとくる音”を選びました。「Paint〜」は異文化を感じさせる暗めの曲で、映像にもマッチしていると思います。ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」は、若者の爆発しそうな思いを直接的に表現できる曲。さらに、この曲には重要な“ある意味”が込められています。ラストまで見ればわかるはずなので、ぜひ考えてみていただきたいですね」

 異質な空間の中で繰り広げられるのは、濃密な人間ドラマ。三兄弟を演じる市原隼人斎藤工林遣都のほか、吉田鋼太郎滝藤賢一ら個性的な舞台人がぶつかり合い、まるで演劇のような熱気が生まれた。

 「市原さんは熱血漢の役を多く演じてこられましたが、今回はあえて屈折した次男・勲をお願いして、勲を主役に据えようと決めました。どこかで見たような配役にしたくないという思いがあったからです。逆に長男役の斎藤さん、三男役の林さん、父親役の吉田さんは、役をイメージしたときにうまくハマりそうだなと。滝藤さんは、以前『ストロベリーナイト』にゲスト出演していただいたとき、非常に印象に残りまして。滝藤さんのような、クセのある方にはとても魅力を感じますね」

 ターゲットは、主人公と同世代の若者をメインにしつつ、幅広い世代の原作ファンも視野に入れた。さらに「自分が女性なので、常に女性視聴者を意識した作品作りをしている」という佐藤氏の思いも見て取れる。

 「原作は女性にとても人気があるんですが、そこには“若い男性たちが悩んでいる姿を見る”という楽しみが絶対にあるはず。その男性たちの姿をいかに魅力的に見せ、女性が感情移入できるようにするかということを、強く意識しています。といっても、“ピンクのフワフワした感じ”でコーティングするのではなく、ロックなどで男性らしいカッコよさを引き立てる。女性が憧れるのは、そういう“男の世界”だと思うので」

 海外の古典文学× 現代日本らしい視点。その化学反応が生み出した独自の世界には、あらゆる世代に届く普遍的な魅力が詰まっている。(オリジナル コンフィデンスより)

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