ドラマ&映画 カテゴリ
ORICON NEWS

【ゆうばり映画祭】復活後最高の1万2577人を動員した意義

 北海道夕張市で開催された『第22回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』が27日閉幕した。同23日、映画『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(3月10日公開)のオープニング上映で始まった同映画祭は、期間中に短編・長編合わせて112本が上映され、のべ1万2577人を動員。俳優・小栗旬らの来場に湧いた2010年の1万2223人の記録を抜き、復活後の開催5回目で最高記録を更新した。同映画祭の事務局長を務める澤田直矢氏は、地元市民や多くのボランティアスタッフへの感謝とともに、「オフシアター・コンペティション部門の上映会場がとても熱く賑わった。質のいい作品が集まっていることが浸透してきた」と手応えに自らの目頭も熱くした。

美術館が壊れるほどの大雪にもかかわらず、多くの参加者で賑わった『第22回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』 (C)ORICON DD inc.

美術館が壊れるほどの大雪にもかかわらず、多くの参加者で賑わった『第22回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』 (C)ORICON DD inc.

写真ページを見る

 1990年に『ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭』としてスタートとして以来、その歩みを止めることなく続けてきたのが、新しい才能・人材の発掘を目的とした自主制作映画のコンペティション、オフシアター・コンペティション部門だ。

 今回、特別招待作品として上映された『ウルトラマンサーガ』(3月24日公開)のおかひでき監督は、第1回の8ミリコンペ部門に出品し落選しているが、第2回に長編作品『ひとけたの夏』が招待上映されて以来、20年ぶりに劇場公開間近の新作を携えて凱旋した。ほかにも同映画祭のコンペ経験者で現在も活躍している監督は、熊沢尚人、井口昇、山下敦弘、真利子哲也ら多数いる。

 とくに、復活後は特別協賛のスカパー!がグランプリを獲得した監督に副賞として制作支援金200万円を授与するようになり、2009年のグランプリ『SR サイタマノラッパー』の入江悠監督、2010年の『青春墓場〜明日と一緒に歩くのだ〜』の奥田庸介監督らを発掘し、その存在価値は高まりつつある。昨年のグランプリ『エイリアン・ビキニの侵略』のオ・ヨンドゥ監督(韓国)は、昨年の審査委員長を務めた林海象監督をプロデューサーに迎えて新作『探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』を製作。今年の映画祭でワールドプレミア上映した。

 今年、グランプリを受賞したのは石原貴洋監督の『大阪外道』。大阪の下町を舞台に、ヤクザも恐れる“外道”と“非道”は共存できるのかをテーマにした、少年の成長物語で、審査委員長を務めた廣木隆一監督は「大阪の町のとらえ方がとてもファンタジーで、役者の演技にリアリティーがあった。時間と予算が限られた中で完結にまとまったいい手本」と評した。

 石原監督は、大阪府大東市在住の32歳。昨年も同コンペに『バイオレンスPM』を出品し、北海道知事賞を受賞した。「絶対にもう一度来てやる! という気持ちが目標となった。感無量です!」と喜ぶ一方、「撮りたい企画は10くらいある」と次回作に向けて早くも気持ちは動き出していた。

 同映画祭は、2006年に運営費を出していた夕張市の財政破綻に伴い、市運営による開催が終了。2007年は映画ファンなど有志による『ゆうばり応援映画祭』でつなぎ、2008年に市民主導による夕張市再生の象徴として再スタートを切った。資金の調達から映画祭の運営までのほとんどをボランティアが行う「市民で作り上げるイベント」と言えば聞こえはいいが、ギリギリの開催であることは否めない。それでも、同映画祭への参加者(出品者として、鑑賞者として)が、“ゆうばり”で作品に出会い、人に出会い、“ゆうばり”を飛び出して、テレビドラマや商業映画などへも活躍の場を広げている好循環が見え始めてきたことが、今後の希望になっている。

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索