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第1回:臼井裕詞チーフプロデューサー
興行成績以上の大きなプレッシャー

臼井裕詞

連載第1回目は、全シリーズのプロデューサーを務める臼井裕詞氏が登場!回を重ねるごとに大ヒットを続け、いまや国民的映画といっても過言ではない人気シリーズが生まれた背景、いまだから伝えたい“海猿ヒストリー”を語ってくれた!!

映画『海猿』シリーズの軌跡
『海猿』
(2004年6月12日公開)
興行収入:17.4億円 動員:131万人
『LIMIT OF LOVE 海猿』
(2006年5月6日公開)
興行収入:71億円 動員:535万人
『THE LAST MESSAGE 海猿』
(2010年9月18日公開)
興行収入:80.4億円 動員:537万人

石にしがみついてでも続編を作ると決意した1作目『海猿』

海猿 場面写真
(C)2004 フジテレビジョン ROBOT
ポニーキャニオン 東宝

海猿 場面写真

 僕が原作『海猿』と出会い、これを「羽住監督と映画化するんだ!」と言い出してから、最新作の『BRAVE HEARTS 海猿』までは、かれこれ11年になります。1作目にとりかかった当時の僕は33歳。周りからは「お前に何ができるんだ?」「何を根拠にやれるというんだ?」と、誰も相手にしてくれなかった(笑)。

 というのは、日本にはあれだけの大きな船を使った海洋ロケの実例がなく、海での潜水シーンの撮影も成功例がなかったこともあって、誰もできると思っていなかったんです。そんななか、1年以上かけて台本を作り、さらに準備に1年をかけて、2年がかりで撮影にこぎ着けました。なぜそんなに時間がかかったのか──それは、僕らが原作漫画の12巻のなかで一番好きな話、フェリーのエピソードをやりたかったからなんです。

 けれど、やりたくても会社的に認めてもらえないし、当然、予算もない。だから、まずは漫画のなかにあるエピソードで、主人公が呉(広島県)の潜水士学校で厳しい訓練を受けて、仲間とともに潜水士になる人間ドラマをシリーズ1作目に据えました。なんとしてもこの『海猿』で結果を残して、続編として「フェリーのエピソードを作るぞ!」と。羽住監督と「石にしがみついてでも続編を作る」と、それを合い言葉にがんばっていましたね。

ドラマでの認知度を経て2作目『LIMIT OF LOVE 海猿』へ

海猿 場面写真
(C)2006 フジテレビジョン ROBOT
ポニーキャニオン 東宝 小学館 FNS27社

海猿 場面写真

 シリーズ1作目の興行収入は17.4億円。評価されるべき数字だとは思いますが、会社としては「でも、17億だろ?」と(苦笑)。このままでは続編をやらせてもらえないと焦りましたね。そんなとき、フジテレビ・ドラマ部から「『海猿』の連続ドラマをやってみないか?」という声がかかったんです。

 映画のシリーズ化を考えていた当時の僕にとってドラマ化は躊躇しましたが、羽住監督は連続ドラマをやってきた男でもありますし、世の中の人に『海猿』を知ってもらうチャンスでもあるなと思ったんです。ただ、僕らにとってはドラマの向こう側に映画の続編という夢があったので、シリーズ1作目である『海猿』の映画のクオリティをそのままドラマに持ち込みたかった。いま思い返してみても、向こう十年あんな連続ドラマはできない、それくらい破格の映画並みの(クオリティの)ドラマでした(苦笑)。若気の至りですね。

 制作スタッフからは「臼井さん、無理無理!」「連続ドラマの常識、知っているよね?」と言われながら、結局は「羽住と臼井の男の意地に負けたよ……」と、みんなの心意気のおかげで映画と同等のクオリティのドラマを作ることができました。連続ドラマの脚本を作りながら映画の脚本も作っていったんです。もちろん、ドラマではフェリーのネタをドラマに入れることは我慢して(笑)、2作目『LIMIT OF LOVE 海猿』につなげたわけです。そういう意味でも、2作目の興収71億、観客動員535万人は嬉しかったですね。

3作目『THE LAST MESSAGE 海猿』が教えてくれたあきらめない心

海猿 場面写真
(C)2010 フジテレビジョン ROBOT
ポニーキャニオン 東宝 小学館
エー・チーム FNS27社

海猿 場面写真

 『海猿』のスタッフ&キャストは、体力的にも精神的にも満身創痍でボロボロになりながら戦っている。ですから、2作目以降は毎回これが最後だというつもりで作っているんです。とくに3作目『THE LAST MESSAGE 海猿』では、東宝スタジオに作られた3階建てのオイルプラントで、三日三晩寝ずの四日間連続という撮影もありました。「人の命を救う映画で誰かがケガをしてはいけない。『海猿』の撮影は絶対に安全でなければならない」と常に言い続けてきたのに……いつケガ人が生まれてもおかしくないような過酷な状況になってしまい、これで(シリーズを)最後にしなければとも思いました。

 けれど、公開前も後もファンの方たちから「やめないでほしい」という投書をたくさんいただきました。「人生の大事なことをこの作品が教えてくれた」「進路を迷っていたけれど、この映画がきっかけで看護師学校に通っている」など、たくさんのメッセージをもらったんです。そのとき、僕らの都合だけで止めていいのか?と疑問が生まれて──。そして、これからどうしたらいいのかと羽住監督と話していた頃に3.11の震災が起きたんです。

 震災直後というのは、『海猿』のよう映画は当分できないな……と思うものですが、『海猿』がこれまでにやってきたことは、いってみれば海上保安庁という組織のなかでのヒーローの話、仲間の話でした。それを今度は「みんなのなかにも仙崎大輔はいるんだ、みんなのなかにある勇気=BRAVE HEARTSを描くときじゃないのか?今がそのときだ」と思ったんです。みんなが持っている小さな奇跡を紡いでいけば、大きな奇跡が起こせることを映画にしようという想いから『BRAVE HEARTS 海猿』の制作はスタートしました。

運命的なものを感じる4作目『BRAVE HEARTS 海猿』

海猿 場面写真
(C)2012 F/R/P/T/S/A/FNS

海猿 場面写真

 シリーズ4作目のエピソードで何を描くのか──。よく覚えているのは「いまこの時代に必要なあきらめないことや挑むこと、それを描くなら飛行機のエピソードです!」という羽住監督の力強い言葉ですね。それは、僕らがずっとできないとあきらめていたエピソード、けれど心の隅でずっと引っかかっていたエピソードだったんです。

 というのは、原作ファンにとってジャンボジェット機の海上着水は人気のエピソードで、これまでにも「ジャンボジェットの話はいつやるんですか?」と聞かれては、「いくら『海猿』スタッフでもあれだけはできないんですよ……」と答えていました。人は欲張りなもので、美味しいものを食べれば、当然次はもっと美味しいものを望みますよね。だから作り手は、前回よりもより美味しいものを目指さなければならないわけで。

 このシリーズに関しては、興行成績以上にそんなファンの期待を裏切らないこと、前作のクオリティを超えること、そういうプレッシャーの方が大きかった。そういう意味でも、4作目『BRAVE HEARTS 海猿』のエピソードは、このタイミングまで神様が取っておいてくれたというか、何か運命的なものを感じています。

(文:新谷里映)

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■第6回:仲里依紗(矢部美香) 『恥ずかしかった!? 事情ありの恋人役!!』
■第5回:伊藤英明(仙崎大輔) 『10年続けたから描けた 家族の絆と勇者の成長』
■第4回:加藤あい(仙崎環菜) 『大人げなかったリアルな夫婦バトル!?』
■第3回:三浦翔平(服部拓也) 『ほかでは体感できない勇者たちの空気』
■第2回:羽住英一郎監督 『4作目の挑戦!いつもの直球勝負で感動のゴールへ』
■第1回:臼井裕詞チーフプロデューサー 『興行成績以上の大きなプレッシャー』

作品情報

BRAVE HEARTS 海猿

BRAVE HEARTS 海猿  海上保安官・仙崎大輔(伊藤英明)は長年のバディ・吉岡(佐藤隆太)とともに、最高レベルのレスキュー能力を持つ特殊救難隊の一員として海難救助の最前線にいた。そんな彼らの前に、シドニー発羽田行きのジャンボジェット機のエンジンが爆発炎上、東京湾へ海上着水する大事故が発生。しかもその機内には、吉岡の恋人でキャビンアテンダントの美香(仲里依紗)が乗っていた。
 沈没までの残された時間はわずか20分。果たして大輔たちは、乗員乗客346名全員を無事に救出することができるのか!? そしてその先には、誰もが予想だにしていない事態が待ち受けていた……。

チーフプロデューサー:臼井裕詞
監督:羽住英一郎
出演:伊藤英明 加藤あい 佐藤隆太 仲里依紗 三浦翔平 平山浩行 伊原剛志 時任三郎

予告編 OFFICIAL SITE

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