がんサバイバー・木口マリ氏が作り上げた、心温まるネットコミュニティ 「不安や恐怖に押し潰されることはない」
「どんなときでも楽しみは作れる」ことを伝えるためにがん写真展を開催
「がんになったことのないほとんどの方は、『がんって大変なんだろうな』『死んでしまうのかな』と想像すると思うんです。もちろん、心も体もグッタリしてしまうときはあります。だけどそれ以上に得られたのは、がんにならなかったら出会えなかった人、気づけなかった自然の美しさ、一瞬の時間の楽しさ──。それは私の人生において、かけがえのない価値のあるものなんです」
「全国のがん患者さんやご家族、お友だち、医療者などから募った写真を展示する、『がんフォト*がんストーリー』の原点となった写真展です。100点以上寄せていただいた写真を1枚1枚プリントアウトして、額も自作して、展示場となったがん治療センターの待合室をカフェみたいにオシャレに飾って。その頃は仕事ができなかったので、時間だけはあったんです(笑)。寄せられた写真もステキなものばかりで、観に来てくださった方もたくさんコメントを残してくれました。そのコメントを応募してくださった方に1つ1つお返ししたところ、とても喜んでくださいました。なかには『がんになって初めてよかったと思いました』とおっしゃっていた方もいました」
不特定多数に開かれたネットの世界での活動へ「不安はなかった」
人工肛門造設手術の直後に始めた同ブログは、がんの体験を綴った内容ながら、そのタイトルが表すようにポジティブでハッピーな空気が漂っている。コメント欄はがん患者や家族といった当事者の交流の場にもなっているようで、アクセス数からも人気ブログとなっていることがうかがえる。
不特定多数に開かれたネットの匿名の世界では、ときにネガティブなリアクションもある。その最たるものが、コメント欄をオープンにしたブログやSNSに集まりがちな悪意だ。闘病で苦しんでいる人でさえ、匿名による攻撃にさらされるケースもある。しかし木口さんはブログを始めるにあたって、「とくにそこへの不安はなかったです」とあっけらかんと話す。
「どんなことも『やっちゃえ!』という感じで始めるほうなんです(笑)。ただ、一番気をつけなければいけないのは、私は良くても、傷ついている状態の人をさらに傷つけてはいけない、ということでした。ブログを見てくださる方の多くはがんの当事者や家族、医療者なので、もしもそういった人を傷つけるようなコメントが書かれたら、そのときはきちんと対処するつもりでした。でも、誹謗中傷とか攻撃的なコメントなどは、今のところまったくないです」