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プロデューサーが語る『若おかみは小学生!』メイン館打ち切りからの復活劇の教訓

 9月21日に全国247館で封切られたアニメーション映画『若おかみは小学生』が、非常に特殊な興行動向を見せている。出足が振るわず、メインチェーンが公開1週で打ち切りになるなか、アニメの聖地・新宿バルト9が動き、熱いアニメファンとともにムーブメントを起こすと、先週末19日からは再びメイン館で異例の1週間限定の復活興行となり、公開5週目となる10月20日、21日では218劇場中90劇場で前週比100%超え(累計興収2.4億円)。こうした動向は、すでにニュースにもなり話題を呼んでいるが、そこでいったいなにが起こっているのだろうか。同作のプロデューサーであるディー・エル・イーの齋藤雅弘氏に話を聞いた。

試写の段階から作品自体の手応えはあった

 同作の原作は、『講談社青い鳥文庫』で累計発行部数300万部を誇る人気児童文学。この4月〜9月の2クール、テレビ東京系でテレビアニメ版も放送されるなど、作品のもつ潜在的認知度は高いと思われたが、オープニング興収は振るわず、メインチェーンの映画館では1週で上映が打ち切りになる事態に陥った。

 しかし、こうした早々の打ち切りに対して、観賞した人々が作品の良さを伝えようとSNSなどで絶賛コメントを寄せると、アニメファンが集う聖地・新宿バルト9が応援。10月7日から急きょ上映回数を増やし、興収比が前週の10倍以上になる動きを見せた。さらに公開3週目には、劇場の約半数となる123劇場で前週興収対比100%を超え、また、1週で打ち切りになったメインチェーンの劇場でも、10月19日から復活興行が行われるなど、動員、稼働率ともに大きな広がりを見せ始めている。

 こうした動きについて、齋藤氏は「一度打ち切りになった劇場が再度上映をしてくれるというのは想定していませんでしたが、試写を行っているときから、観た方々の反応が良かったので、作品自体の手応えはあったんです。派手に数字を出すというよりは、『マイマイ新子と千年の魔法』や『この世界の片隅に』のように長く上映されれば、広く支持される作品になるという思いはありました」と作品のクオリティに自信を持っていたことを語る。

予想以上に低かったオープニング興収の要因

 ところが、オープニング興収の数字は、齋藤氏にとっても予想以上に低いものだったことは否めないという。「いろいろな要因があると思うので、明確に『これが原因だ』とは断定できませんが、メインビジュアルなど見た目の要素が、子ども向けの作品に見えてしまって、観客を限定したところはあると思います。また、スタート時はかなりファミリー層を意識したプロモーションを展開していたんです。テレビアニメ版も日曜の朝7時台からと子どもを意識した時間ですしね」とし、作品ビジュアルなどが大人のアニメファンを遠ざけてしまっていた側面があることを明かした。

 作品を観た人ならわかると思うが、小学生の主人公が、深い心の傷を背負いながら健気に生きていくうえでの葛藤や、周囲の人たちの温かい視線のなかで成長していく姿を丁寧に描いた物語は、決して子ども向けだけではなく、大人が観賞しても心動かされる内容になっている。

 この点について、製作陣も自覚しており、タイトルやプロモーション戦略を含め、多くの議論がなされたという。「目の大きな主人公は児童向けを思わせますし、タイトルにも“小学生”と入っている。でも内容的には、大人にも刺さるものになっている。どちらをターゲットにしたプロモーションにするか、意見はいろいろありました。こうした特異性が当初、情報を受け取る側のお客さんを混乱させてしまったのかもしれません」と語る。

提供元: コンフィデンス

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