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多分野への事業拡大が続く吉本興業、ゲーム業界への本格参入の狙いと可能性

新会社「よしもとゲームスタジオ」設立発表会見でゲーム企画プレゼンを行ったよしもと芸人たち(中央は同社代表取締役社長の斎藤祐士氏)

新会社「よしもとゲームスタジオ」設立発表会見でゲーム企画プレゼンを行ったよしもと芸人たち(中央は同社代表取締役社長の斎藤祐士氏)

 吉本興業は10月12日、ゲーム業界に本格参入すべく新会社、よしもとゲームスタジオの設立を発表した。さまざまなビジネスを貪欲かつ迅速に仕掛ける同社が今年、急展開させたゲーム事業の狙いと可能性を探る。

川上から川下まで手がけコンテンツ利益を最大化

 日本国内47都道府県からアジア各国へ拡大中の“住みます芸人”など地域密着ネットワークをベースに、エンタテインメントと周辺業種を結びつけるさまざまなビジネスを貪欲かつ迅速に仕掛けることで、そのアグレッシブさが芸能界において際立っている吉本興業。そんな同社が今年、急展開を見せているのがゲーム領域だ。

 まず3月に、eスポーツ事業への参入を発表。プロゲーマーや芸人らによる「プロチーム(よしもとゲーミング)運営」のほか、「ゲーム実況」「イベント・大会の開催」を柱に事業を進めている。

 さらに9月には、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、サイバーエージェントと3社で新会社mspoを設立。ユーザーがスマホゲームを遊んでポイントが貯まるモバイルプラットフォーム・mspoをスタートさせた。ローンチ時の対応は既成ゲーム4タイトルだが、独自ゲームを年内に提供予定とする。

 そして、今回のゲーム制作新会社よしもとゲームスタジオの設立。同社では、3つの柱を軸にオリジナルゲームの制作を行っていく。芸能事務所がゲーム会社とタッグを組んでゲームを開発、発売した事例はこれまでにも多くあるが、それらと異なるのは、ゲーム会社を所有し、さらにモバイル向けに関してはプラットフォームも持つことで、すべてを自社で完結させること。吉本興業として、川上から川下までを自社(グループ)で手がけることにより、ゲーム分野における新たなIP創出からその周辺事業を含む360度展開をすべてハンドリングし、コンテンツ利益の最大化を狙う。

本業との大きなシナジーを生み出す可能性を秘めた新事業

 この動きの背景には、ゲーム業界が厳しいとは言われながらも拡大傾向にあること、吉本興業の持つIP活用への高いポテンシャルがあることが挙げられる。創業100周年を迎えた同社が、“次の100年へ”を掲げて幅広い方向性の新規事業を積極的に展開するなか、1つの方向性としているのがデジタル化だ。そして、「そのなかの答えの1つがゲーム」と、よしもとゲームスタジオ代表取締役社長に就任した斎藤祐士氏は語る。

 斎藤氏は、吉本興業でゲーム領域(eスポーツを除く)を取り仕切るキーマンであり、オンラインゲームを多く扱うDMM GAMESから今年6月に吉本興業に移った、ゲーム業界に長く身を置く、知識も経験も豊富な人物。そんな斎藤氏から見た吉本興業は、既存のIPだけでなく、さまざまな優れたアイデアを持つ多くの芸人たちこそがゲーム業界にうってつけの人材であり、開発の現場に芸人が入って企画に携わるなどのキャッチアップによる新たなIPやコンテンツ創出に大きな可能性を感じている。

「吉本興業ならではの取り組みとなるキラーコンテンツの創出に成り得るにもかかわらず、今までアプローチできていませんでした。同時にこれは、芸人の活躍の場を広げることにもつながります。ゲーム事業は、グループ全体の成長へ寄与します」と自信をのぞかせる。

 ここ最近では、国連との持続可能な開発目標・SDGsの啓蒙普及や、地域の課題をビジネスで解決するユヌス・ソーシャルアクションなど、社会性の高い事業への取り組みが目立っていた吉本興業だが、今回のゲーム事業への参入は、エンタテインメント事業のなかで、本業とのより大きなシナジーを生み出す可能性を秘めた新規事業展開として期待される。

提供元: コンフィデンス

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