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疑念の払拭に取り組むJASRAC、求められる広報力

会見に臨むいではく会長(左)と浅石道夫理事長

会見に臨むいではく会長(左)と浅石道夫理事長

 来年80周年の節目を迎える日本音楽著作権協会(JASRAC)が7月10日、新役員就任に伴う新体制発足会見を開催。ともに再任となったいではく会長と浅石道夫理事長は揃って2期目の目標として“イメージアップ”を掲げた。

 このような目標を掲げる背景には、JASRACの活動に関する世間からの厳しい目がある。現在も係争中となっている楽器教室における使用料徴収もその1つ。これについては双方の議論の経過を慎重に見ていく必要がある。一方でこうしたJASRACの動きについて、その正当性を冷静に語ることもできないほどに世間からの疑念が集まってしまっている印象も強い。そこにはどのような要因があるのか、検証してみたい。

いで会長「疑念を払拭していくのが2期目の仕事」

 新体制の発足に当たり、会見を開いたいではく会長は、1期目を振り返り、「(JASRACは)法律で決まっているからと、一方的に使用料を“取り立てる”という印象を持たれてしまっている。そうではなく、音楽の利用に対して適正な利用料を“払っていただいている”という思いで取り組んでいかなくてはいけない」と、これまで全支部をまわり、職員たちに意識改革の必要性を説いてきたと説明。また、2期目に際しては、「JASRACは著作権使用料を“徴収”し、権利者へ“分配”しているのですが、世間的には“徴収”ばかりがフォーカスされ、“分配”については理解してもらえていないと思う。また、分配についても、すべてを公にしており、不透明な部分はないと言ってきているが、それでもまだ、“何かあるんじゃないか?”と思われてしまっているのは非常に残念。こうした疑念を払拭していくのが2期目の仕事」と語った。

 また、浅石理事長はJASRACの標語である“人に人権 音楽に著作権”の理念を強調し、「著作権は財産権ではなく人権。こんな小さなところまで徴収していくのか、という声も聞かれるが、どんなに小さくでも人権侵害を受けていれば保護することが必要」と改めて訴えた。

 このように、JASRACが取り組んでいる、活動への理解とイメージアップだが、実際のところ世間からの印象は思うようには変わっていないのが実情だ。

 実際、この日に進捗が説明された楽器教室からの使用料徴収についても、いで会長が「“仕入れ”のない商売はない。バナナの叩き売りやガマの油売りも、バナナなどの“商品”を仕入れており、それを売る口上はあくまでも技術」と指摘し、「楽器教室においても同様で、教えることはあくまで技術で、仕入れは音楽や歌。そう考えれば仕入れ代を払うのは当然」と述べたことが物議を醸す結果となってしまった。

 そもそも、JASRACが定める「使用料規程」とは、演奏、放送、出版(楽譜など)、録音(CDなど)、映画録音(映画・DVDなど)、有線放送、貸与(CDレンタル)、インタラクティブ配信(ネット配信)などの利用区分ごとに使用料率(額)が細かく定められており、それらは文化庁長官へ届け出る必要があり、その届け出に当たっては、事前に利用団体などとの協議も行っている。

 さらに言えば、「著作物使用料分配規程」や「管理手数料規程」についても、文化庁長官への届け出を経て、実施されている。正確な利用状況の把握や利用者による報告のためのシステム整備も常に行われている。もちろん利用者側の理解や適切な手続きは都度、必要なため、常に完全・完璧な著作権管理体制というわけではないものの、その精度は日々向上しており、いで会長が主張するように、不透明な部分はなく、基本的には説明可能だと思われる。

 にもかかわらず、ネガティブな印象を払拭できない要因とは何なのか?

いかに外部の疑念に応えるか、“広報”の重要性も

 その要因の1つにはJASRAC自体の体制もあるのではいか。それを感じさせたが今回公表された理事長以下の役員体制だ。

 JASRACが公表した理事長以下、理事たちは、実は全員が新卒プロパー。それぞれ新卒入社以降、全国各地の支社での契約・徴収などの現場を経験し、“JASRAC側の理念・常識”のなかで仕事に当たってきた人たちである。またこのような体制は、すでにここ数年続いているという。活発な人材交流が行われ、終身雇用制度も崩れた今の日本社会においても、こうした体制はやや特殊ともいえる。

 これについて浅石理事長は「著作権管理は高度な専門性が求められ、移籍してきてすぐに右から左に案件を処理できるものではない」と答える一方で、外からJASRACを眺めることは必要とし、「外部団体への社員の派遣などは行っている」と回答している。

 もちろん専門性が求められるという指摘は正しいだろう。とはいえ、企業や団体が社会に向けて情報発信していくという広報(=パブリックリレーションズ)という点においては、著作権管理ともまったく異なる“高度な専門性”が求められるのも事実だろう。

 日本パブリックリレーションズ協会が発行する『広報 マスコミ ハンドブック』(2018年版/アーク出版)をよると、広報とは“関係性の構築・維持のマネジメント”であり、「消費者」「取引先」「行政機関」「金融機関」「株主・投資家」「従業員」「地域住民」など、実に幅広いステークホルダーと“双方向のコミュニケーション”を行うことで、「組織内に情報をフィードバックして自己修正を図りつつ、良い関係を構築し、継続していくマネジメント」と解説している。こうした広報の機能なくしては、企業のイメージアップは難しいうえに、同書が解説するように自己修正を図ることもできないというわけだ。

 今回、JASRACが目標に掲げた、いわゆる“企業のイメージアップ”においては、企業や団体側の論理を主張していくだけでなく、上述したように、ステークホルダーと双方向のコミュニケーションを図りながら情報発信していく“広報力”も重要になるだろう。

理事長および常務理事の経歴

■浅石道夫理事長
1975年3月:学習院大学経済学部卒業
1975年4月:JASRAC入社
1993年4月:神戸支部長
1999年4月:経理部部長
2004年4月:秘書部部長
2006年4月:総務本部副本部長
2007年10月:常任理事
2012年6月:常務理事
2016年6月:理事長就任
2018年6月:理事長再任
CISAC理事、同理事会副議長

■宮脇正弘常務理事
1978年3月:早稲田大学政治経済学部卒業
1978年4月:JASRAC入社
2004年4月:経理部部長
2009年4月:総務本部副本部長
2010年9月:常勤監事
2016年6月:常務理事就任
2018年6月:常務理事再任
管理本部統括、特命事項として経理を担当

■世古和博常務理事
1981年3月:青山学院大学法学部卒業
1981年4月:JASRAC入社
2000年4月:中国支部長
2005年4月:演奏部部長
2011年4月:業務本部副本部長
2012年6月:管理本部副本部長
2014年6月:常任理事
2018年6月:常務理事就任
業務本部統括、特命事項として人事、渉外担当

提供元: コンフィデンス

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