『シグナル』に見る、カンテレ“ドラマ作り”のこだわり
原作は1話80分×全16回の長尺 日本版では“人間ドラマ”に重点を置いた
「坂口さんの初主演ドラマを制作したいという想いがあったなかで、韓国の原作を観たことがきっかけです。普段はあまり韓国ドラマを観るほうではないのですが、『シグナル』は第1話からハマって一気に観ました。私が制作に携わったドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』にもあるような、人間の本質や暗い部分もしっかりと描かれた世界観に共鳴を覚えました。荒唐無稽な設定もあるのですが、それを感じさせないリアリティと、大人でもしっかり楽しめるストーリー展開。この作品の主人公を坂口さんが演じてくれたら、新たな坂口健太郎像が生まれるのでは、と考えたのです」(萩原崇氏/以下同)
「プロデューサーや監督陣で話していくなかで『登場人物らの気持ちが積み重なっていく事象を中心に(物語を)ピックアップしよう』という方針を見つけました。尺的に泣く泣く削った事件も2つありますが、その削ったものの中からも大事なセリフなどを、描ける範囲の事件内に盛り込んだ。具体的には脚本の尾崎将也さんらとも話をし、無線機を通して語る言葉としてパズルのように組み込んでいったのです。これは原作を制作したキム・ウニ氏(脚本)や Studio Dragon & ASTORY(制作)の皆さんから自由度高く日本版の制作を任せていただけたのが大きい。結果、刑事モノというよりは人間ドラマに重点を置いた作品に仕上がったと思います」
主題歌を務めるBTS(防弾少年団)と“異色のコラボ”
テレビ不振の時代と言われ、近年のドラマはどちらかというと1話完結やライトな作品が目立つ。そんななか、同局では今作のように、視聴に体力を要するような骨太な作品に積極的に挑んでいる。
「坂口さんもおっしゃっていたのですが、“ながら見”や録画視聴が多い現代だからこそ、熱中してドラマを観てくれる人を求め、獲得していくことはとても大切なのではないかと。私自身、幼少期からテレビドラマを観て育ち、熱量たっぷりに描かれた主人公たちに勇気をもらってきました。そんな人物を描いていきたいし、今後もテレビドラマがそんな存在であるよう、熱を込めて制作していきたいと思っています」
文/衣輪晋一
◆萩原崇/はぎはら たかし(関西テレビ放送 東京コンテンツセンター制作部)
2005年に関西テレビ放送に入局。大阪本社 制作を経て2014年より、東京コンテンツセンター制作部へ。15年7月期の『HEAT』で初プロデュース。以降、『お義父さんと呼ばせて』(16年1月期)や『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(16年7月期)、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(17年4月期)など、人気作を手がけている。
2005年に関西テレビ放送に入局。大阪本社 制作を経て2014年より、東京コンテンツセンター制作部へ。15年7月期の『HEAT』で初プロデュース。以降、『お義父さんと呼ばせて』(16年1月期)や『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(16年7月期)、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(17年4月期)など、人気作を手がけている。