吉岡里帆、激動の2017年を経て変化「自分で引っ張りたいという、強い意志が芽生えた」
「人生チョロかった」のセリフは、自信のない私を守ってくれた
吉岡 『カルテット』という作品は人生で切っても切れない作品になったんだなって改めて感じています。来杉有朱は、4人のカルテットの心地よい音の紡ぎ合いを不協和音にしていく役割でした。そういう役を視聴者の方が面白可笑しく受け入れてくれる感じや、強い女性を演じたことで、「見ていてスカッとした」とか、「私もあんな風に強くいたいと思う」という意見をいただいた時は、この役をやれてよかったと思いました。
――吉岡さんの名前を一気に世間に知らしめるような役でした。
吉岡 今もよくファンレターやインタビューのタイトルに、あの時のセリフが引用されたりします。あとは「目が笑っていない」だとかは今でもよく言われます。でもそれは、登場人物の1人として溶け込み合い、1つの作品になった感じがして、とても嬉しいなと思います。
吉岡 「人生チョロかった」なんて、ほとんどの人は思わないんですけど、そのように弱音を吐かず笑い飛ばせる強さは持ちたいと思うし、私も自分になかなか自信が持てないタイプの人間なので、あのセリフは(お守りのように)私を守ってくれていたようにも感じます。私にとっても特別な言葉でしたね。
見る人をドキッとさせる役者になりたい
吉岡 『カルテット』の撮影中はいただいた役をまっとうするのに必死でした。むしろ、現場に行くのも緊張の連続で。でも、この1年で、さまざまな役を演じさせていただき、『きみが心に棲みついた』では主演という大役をいただきましたが、その撮影のなかで「自分が引っ張っていきたい」とか、「盛り上げていきたい」、「届けていきたい」という強い意志が
芽生えたのは、自分自身でも成長できた点かなと思います。自信というよりは覚悟ですね。これまでは「自分なんて」と思いがちでしたけど、そこから脱却するためにも、今はそういう言葉は言わないようにしているんです。
吉岡 自信のない人間でも、まわりの人たちを大事にすることはできると思っていて、私はそれを主軸にお仕事と向き合っています。一緒にかかわって良かったって思っていただけるように努力し続ける自信はあるので、そこだけはブレずにやっていきたいですね。
――お仕事の受け入れ方という意味でも、とても芯が通っており、強さを感じます。では、そのテーマをもとにこれからどのような役者を目指していきたいですか。
吉岡 どういうセリフにみんなが奮い立つんだろう?っていうことにすごく興味があって、そこを刺激できるような役者になりたいと思っています。それこそ、『カルテット』はある種、化学反応の産物に思っていて。それはセリフ、環境、共演者の皆さん、スタッフさんやあらゆるものが化学反応を起こして、刺激物になった気がしています。それをもっと意図的に生み出すような仕事の仕方ができたらいいなと思います。とても遠い未来というか、難しいテーマですが。でも、好き嫌いは別として、見た人にとって心が離せない役者になりたいと思います。吉岡里帆は大嫌いなんだけど、この役は観ちゃうなとか、一個人から切り離して、役として、ドキッとしてもらうのが今の目標です。
文/楢原ゆかり
(『コンフィデンス』 18年2月26日号掲載)