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福田雄一氏が追求する“笑い”とは?「僕はサブカルではなくメインストリーム」

映画やドラマ、舞台など幅広いジャンルの第一線で活躍中の日本一多忙なクリエイター、福田雄一氏。自身の立ち位置をサブカルではなくメインストリームという福田氏に“笑い”への演出のこだわり、映像作品と舞台の違いについて聞いた。

インテリジェンスを感じさせない笑いが好き

 クリエイターとして幅広く活躍する福田氏。しかし本人は「よく『手広い』と言われるのですが、それは違います。情報番組の構成作家や、ラブストーリーの脚本、演出などをやり始めたら“雑食”と言われても仕方ないと思いますが、僕がやっているのは“笑い”だけ」と明確に答える。その笑いのなかでも福田氏が目指すのが「オールエイジ」向けという。つまり老若男女が楽しめる全方位の笑いだ。

「『よくできている作品』みたいな言葉にはまったく興味がないんです。どちらかいというと『サタデーナイトライブ』みたいなバカげたというか、変にインテリジェンスを感じさせない笑いが好き。もちろんしっかり伏線を張って、それを回収するウェルメイドな笑いもすばらしいと思いますが、やっぱりそれはお客さんを限定してしまいます。僕はそうじゃないところで勝負したい」。

 そんな福田氏が作り出す笑いは、本来なら誰もが気軽に楽しめるものであるが、深夜ドラマで人気が集まるなど、ややサブカル的な路線と位置づけられることも多い。

「サブカルってよく言われるんですけど、それはあまり好きではなくて。僕自身はメインストリームにいるつもりなんです(笑)。『勇者ヨシヒコ』も『アオイホノオ』も深夜で放送していましたが、基本的にはファミリードラマであって、子どもから年配者まで楽しめるはず。全然マニアックではないんです」。

 それこそ最近は、ゴールデンの連続ドラマや大作映画を手がけているが「作品規模にこだわりはない」とする。ただし、当然のことながら「より多くの人に観てもらいたい」という思いは強い。その意味では『銀魂』の実写化に携われたことは大きなことだった。「誰もが知っている『週刊少年ジャンプ』のなかでも看板の漫画。その実写化を全国規模でやらせてもらえるのは、自分の笑いをより多くの人に見てもらえる可能性が高いですからね」。福田氏の笑いがメインストリームであることを知らしめる絶好の機会になる。

あえてわからないことを提示。見つけることで印象に残る

 映像作品と舞台における福田演出の違いを聞くと“丁寧さ”と答える。芸人の座付き作家をやっていた福田氏は、ドラマでもボケと突っ込みを1つのタームとして構成するため、次の展開に進むときにテンポの悪さを感じていたという。そんなとき、大学時代から師と仰いでいる漫画家・島本和彦氏原作の映画『逆境ナイン』の脚本を担当し、改めて島本作品に向き合った。

「島本先生の漫画って、誰も突っ込まないんですよ。それでいてすごくおもしろい。すぐにドラマ『33分探偵』で、くだらないことをカッコよく言うのに、誰も突っ込まない展開を実践したら、流れがとても良くなりました」

 以降、ドラマや映画ではこのスタイルを踏襲している。「『HK 変態仮面』は、あんなカッコしてパンティを被っているのにボケないでカッコいいことしか言いません。でも大元が間違っているおもしろさで笑えるんです」。

 しかし、この手法は舞台では通用しないという。「舞台って視界が広いし、映像作品と違って、言葉を拾う速度が格段に遅いんです。しっかり突っ込みを入れないと成立しなくなってしまう。丁寧すぎるくらい突っ込んで笑いにしていかないと難しい」。

 また、最近の映像演出については、見る側のレベルが高いため、あえてわからないことを提示した方がいいという。

「ネットの普及もありますが、作り手は、見る側の方が圧倒的に情報量が多いという認識を持たなくてはいけません。おもしろいと思っている部分は寄りの画を使いがちですが、逆に寄らなくてもいい。引きの画で見せて、端の方でおもしろいことをやっていても視聴者は見つけてくれる。逆に見つけ出したおもしろさの方が印象に残るんです」。

 シンプルに笑いを追求しつつも、その表現方法には、練りに練った緻密さが感じられる。『銀魂』に出演した橋本環奈は、福田氏を「とても繊細で丁寧」と称していた。シンプルかつ繊細という笑いこそ、福田氏の持ち味なのかもしれない。
(文:磯部正和)

映画『銀魂』

脚本・監督:福田雄一
出演:小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、柳楽優弥、新井浩文、吉沢亮、早見あかり、ムロツヨシ、長澤まさみ、岡田将生、佐藤二朗、菜々緒、安田顕、中村勘九郎、堂本剛
全国公開中
(C)空知英秋/集英社(C)2017 映画「銀魂」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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