くしゃみや鼻水に苦しむ花粉症患者が飲む薬といえばアレルギー性鼻炎薬。みんなはどの薬を飲んでいるのかを薬の「処方患者数ランキング」で明らかにするとともに、「保険適用外」の議論も飛び出した花粉症薬の動向を探る。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
花粉症薬「保険外し」提言
1位のアレグラも狙われた
2〜4月はスギやヒノキ、9月になるとブタクサやヨモギによる花粉症の症状が出てくる。秋の花粉症シーズンが始まる矢先、大企業の従業員らが加入する健康保険組合で組織された健康保険組合連合会(健保連)が花粉症治療薬の「保険適用外し」を政策提言し、話題を呼んだ。同じ有効成分の市販薬が存在する薬(OTC類似薬)について、患者が全額自己負担することを求めたのだ。
アレルギー性鼻炎薬として処方される抗ヒスタミン薬において、保険外しのターゲットとなったOTC類似薬はどんなポジションにいるのか。
医療情報サービスを手掛けるメディカル・データ・ビジョンから提供された、国内急性期病院230施設でアレルギー性鼻炎の外来患者に処方された抗ヒスタミン薬の2018年度処方患者数ランキングを掲載しよう。
トップ10に入ったのはいずれも抗ヒスタミン薬の第2世代。「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版」では、花粉症の初期療法や軽症の場合は、第2世代抗ヒスタミン薬などの中からいずれか一つの薬で治療を開始することになっている。
処方患者数の1位はフェキソフェナジン(製品名:アレグラなど)で、市販薬が存在するOTC類似薬だ。このほか4位のエピナスチン(製品名:アレジオンなど)、8位のロラタジン(製品名:クラリチンなど)、9位のセチリジン(製品名:ジルテックなど)もOTC類似薬となる。
健保連によると、花粉症患者に処方された花粉症薬の薬剤費は、全国で推計年間2401億円。このうちOTC類似薬が597億円を占めており、OTC類似薬の保険適用をそのまま外せば、この金額分の薬剤費削減につながる。もっと範囲を絞った案も用意しつつ、最大で約600億円として提言した。
近年、第2世代抗ヒスタミン薬の市販薬への転用(スイッチOTC)が進んでおり、自ら薬局で購入して治療する患者との整合性を図る観点からも、第2世代抗ヒスタミン薬の保険外しは妥当と主張している。
処方薬でも市販薬でも
自己負担は大差ない?
健保連の試算では、1位のフェキソフェナジンの先発品であるアレグラを医療機関で14日分処方した場合、薬剤費は1607円、その他の医療費(初診料、処方箋料、調剤基本料、薬剤服用管理指導料、調剤料)が5070円で医療費合計は6677円。自己負担額(3割の場合)は2003円となる。
フェキソフェナジンの市販薬をドラッグストアなどで購入した場合、14日分だと1554〜2036円。一般に、受診して処方してもらった方が安いイメージがあるが、試算では大差がなかった。
先発品ではなくジェネリック医薬品(先発品の特許終了後に発売される、同じ有効成分で安い薬)を選択すれば、処方した場合の費用はもっと安くできる。とはいえ、公的保険でカバーされている限り、自己負担分以外は保険料の支払いなどで賄われているので、結局のところ患者はもっと多く負担しているのも事実だ。
健保連の提言に、医者が組織する日本医師会は猛反発している。大体においてこうした議論は医者、保険者、政府といったお決まりのメンツで議論するばかり。結局、先延ばしになったり、腰砕けになったりして、落としどころを探すかたちに終始する。
花粉症患者にすれば、この政策が実行されたらOTC類似薬以外の薬へ処方を切り替える手もあるが、目先のことよりも花粉症薬の議論を糸口として、国民皆保険を維持していくために、患者をはじめとした国民も参加した大きな議論に発展させることが肝心だろう。
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