これでも控えめ!?
かつてBMWのV12ラグジュアリークーペに与えられていた「8シリーズ」の名称がおよそ20年ぶりに復活した。「クーペ」と「カブリオレ」という2つのラインナップから、まずはスタイリッシュなクーペに試乗。新世代フラッグシップモデルの実力を確かめる。
奇麗なシルエット
やっぱりBMWにとって数字の先頭に“8”が付く車名のモデルは、特別な存在なんだろうな、と素直に思う。販売面では苦戦したけれど、1989年に発表された初代8シリーズは、リトラクタブルヘッドライトを持ったどこか「M1」を思わせる顔つきが特徴的なスタイリングと、V12ユニットの生み出す素晴らしく滑らかで力強い走りのテイストに、心が動かされた覚えがある。
2000年に発売された「Z8」は、かつての名車「507」をモチーフにしたかのようなクラシックとモダンのすんなり融合したスタイリングをしていて、オールアルミのボディーとシャシーに「M5」の400ps V8ユニットを搭載したバカッ速なロードスターだった。
2013年に初公開された「i8」は、プラグインハイブリッド車であっても速く気持ちよく走れることを世界に向けて発信した、BMW初のモーター付きスポーツカーというだけじゃない意欲作だった。だから新しい8シリーズに乗る前からどことなく期待感があったのは確かだった。けれど、速いクルマには常に興味津々の自分が、まさかこの夏にデビューすることが予想されている「M8」を「なくてもいいんじゃない?」と一瞬だけでも考えることになるなんて、思いもしなかった。
ご存じのとおり新しい8シリーズは、BMWの2ドアモデルの頂点に位置するモデルだ。ということは、見る者に視覚的な喜びを与えないなんてことはもちろん許されないだろう。
初めてオープンエアの下で目にした「M850i xDriveクーペ」は、現行BMWの中では断トツといえるくらい奇麗なシルエットをしていた。特に斜め後ろ側から見たときのルーフからリアに向かって絶妙ななだらかさで降りてくるルーフラインなど、ちょっと「らしくないかも」と感じられるくらいに美しい。それでいて女性的というよりむしろ雄々しい印象を受けるのは、前後のフェンダーのラインやサイドの抉(えぐ)り込みが筋肉質なイメージを抱かせるからに違いない。“カッコイイ”とか“迫力ある”と感じられるモデルはあっても、これほど素直に“奇麗”とか“美しい”という言葉が湧いてくるBMWは、そうはないだろう。...