変わらないものがあるとしたら
ドイツの小さな自動車メーカー「アルピナ」が生産する市販車は、年間わずか1700台ほど。今回、車名に「S」を冠した「B4ビターボ」の高性能版クーペをワインディングロードに連れ出し、21世紀になった今も変わらず貴重な存在であり続ける、その魅力を味わってみた。
いつもあるとは限らない
知り合いのアルピナユーザーの話にちょっと付き合っていただきたい。大変気に入って乗り続けてきたが、オドメーターが10万kmを超えたのを機に、買い替えを検討し始めたという。もう歳だからと散々迷ったが、結局新車の購入を決意、奥さまの説得にも成功し、勇躍ディーラーに乗り込んだところ、「今はありません」と言われて膝から崩れ落ちたのだという。
パンパンに膨れ上がった気持ちのやり場がなくなってしまったんですね。お気の毒でした。いや、もちろんクルマがないわけではない。詳しいことまでは聞いていないのだが、おそらく以前と同じ「B3セダン」を注文しようとしたところ、今は「B3 Sビターボ」しか在庫がありません、と言われたのではないだろうか。アルピナの総代理店たるニコル・オートモビルズに確認したところ、B3 Sビターボも今回紹介するクーペのB4 Sビターボも少ないとはいえ間違いなく在庫しているという。
繰り返しになるが、2015年に創立50周年を祝った「アルピナ・ブルクハルト・ボーフェンジーペンKG」は、「BMW 1500」用のキャブレターの開発からスタートし、歴代のBMW各車をベースにきわめて端正で高品質、そしてもちろん高性能なセダンとクーペを造り続けてきた。
今もいわゆる“チューニングファクトリー”と誤解している人もいるが、れっきとしたマニュファクチャラーとして認められているうえに、メルセデス・ベンツのブランドのひとつとしてグループ企業となっているメルセデスAMGとは対照的に、現在に至るまでアルピナはBMW本体との資本関係を持たない。それでいながらBMWとの深い協力関係を維持しているという実に珍しいポジションを守り続けているメーカーだ。
生産能力は今も年間最大1700台というから、あのフェラーリの半分にも満たない。それゆえ、新型車を発売した後はそのモデルの生産に集中しなければならず、既存モデルを並行して作り続けることはできないのだ。...