藤浪晋太郎さんと出会ったきっかけは、野球ではなく競馬だった。
初めてお会いしたのは、昨年の年末。有馬記念が終わった頃だったと思う。競馬関係者が集まる食事の席でご一緒したのが最初だった。
第一印象は、何よりも「デカい」。
もちろん、藤浪晋太郎という野球選手のことは知っていたし、身長が2メートル近いことも知っていた。それでも実際に目の前にすると、想像していた以上に大きかった。
あまりにも衝撃的だったから、今でも会うたびに、
「藤浪さん、またデカくなりました?」
と聞くのが、僕の中でのお決まりになっている。当然そんなわけはないのだけれど(笑)。
そんな藤浪さんと仲良くなったのも、やっぱり競馬だった。一口馬主もやっていて、とにかく競馬が好き。普段一緒にいる時も、自然と馬の話になることが多い。
そもそも、なぜそんなに競馬が好きなのか。改めて聞いてみると、その始まりは19歳の頃までさかのぼった。
「元々、競馬に興味があって」
整体の先生を通じて松島正昭さんとの縁が生まれ、その後も交流が続いたという。
「松島さんにはすごくお世話になって。お正月とかに新年のご挨拶にお会いしに行ってたんですけど、そんなふうに可愛がってもらう中で、元々競馬に興味があったことにプラスして、武豊さんっていう誰もが知ってる存在がいて」
どんどん競馬にはまっていった。
ただ、藤浪さんの見方は、単に競馬を楽しむという感じではない。
「ギャンブルというよりは、やっぱりスポーツとして見ている面が強くて。ジョッキーが紡ぐドラマだったり、馬の血統が作っていくドラマだったり、そういうところに面白さを感じて、長年見させてもらっていますね」
もちろん馬券も買う。
「馬券で負けても、良いレースが見られたら『むしろそれでいい』みたいな(笑)」
「良いものが見たい。スポーツとして見られているというのが、はまっている一番の要素かもしれないですね」
野球を仕事にしている藤浪さんが、競馬を同じ「スポーツ」として見ている。そこは話を聞いていて面白かった。
藤浪さんを訪ねた沖縄で、武さん、坂本勇人さんと不思議な時間
僕は子どもの頃からずっとサッカーをやってきた。
野球とはほとんど縁がなく、学生時代はサッカー部と野球部で「グラウンドをどっちが使うか」で揉めることもあった。プロ野球を日常的に見る習慣も、ほぼなかった。
そんな僕が、藤浪さんと出会ってから少しずつ野球を見るようになった。もちろん、横浜DeNAベイスターズの試合だ。
「次の登板、いつですか?」
「今度、試合を観に行きたいです」
そんなやり取りをしょっちゅうしている。
今までほとんど野球を見てこなかったのに、藤浪さんが投げるとなれば結果を確認するし、映像も見る。藤浪さんと出会ったことで、これまであまり見てこなかった野球を見るようになった。それもなんだか面白い。
今年2月には、藤浪さんが沖縄でキャンプをしているということで、武豊さんと一緒に訪問した。
普段は食事をしたり、競馬の話をしたり、冗談を言い合ったりしている。だから、グラウンドで見る藤浪さんは少し違って見えた。
練習への向き合い方、一球一球に対する姿勢。普段一緒にいる時には当然見ることのできない「野球選手・藤浪晋太郎」がそこにいた。
ちなみに、この沖縄滞在中には面白い偶然もあった。武さんのインスタにも載せていたけど、食事をしていたお店で、偶然にも巨人の坂本勇人さんと遭遇した。
藤浪さん、武さん、坂本さん。競技は違うけれど、日本のスポーツ界で長く活躍してきた人たちが同じ場所にいる。不思議な時間だった。
「競馬=武豊」一番好きな馬はドウデュース
藤浪さんの競馬の話を聞いていると、やはり武豊騎手の存在は大きい。
「そもそも競馬を知るきっかけが武豊さんですし、もうほぼ『競馬=武豊、武豊=競馬』と言ってもいいくらいです」
僕自身も、武さんが海外遠征などで日本にいない週は、競馬を見る感覚が少し変わる。その話をすると、
「それは本当にそうですね。『あ、豊さん乗ってないんだな』っていう感覚にどうしてもなりますよね」
と藤浪さん。
さらに、
「本当に『武豊』という存在は、競馬そのものですよね。繰り返しになりますけど、『競馬=武豊』ですし、武豊さんが今の競馬を大きくしたと思っています」
と話した。
歴代で一番好きな馬を聞くと、こちらもすぐに答えが返ってきた。
「思い出深いのは、やっぱりドウデュースですね」
松島さんとの縁があり、武豊騎手が騎乗していたことも大きい。中でも思い出に残っているのが、2023年の有馬記念だという。
「武豊さんの復活の有馬記念も現地で見ていたので、有馬記念の口取り写真にも一緒に入れさせてもらって。本当に思い出深くて、自分が歴代の中で一番好きな馬ですね」
こういう話をしている時の藤浪さんは、本当に一人の競馬ファンだ。
「今すぐにでも馬主資格を取って勝負したい」
そして最近、藤浪さんとは馬主の話もよくする。以前から「馬主になりたい」という話は聞いていた。
では、本当に馬主になったら、どのレースを勝ちたいのか。
「だいぶ大きく出ますけど、単なる夢として語るなら……」
そう前置きして挙げたのが、凱旋門賞だった。
「武豊さんとこの10年近くお話しさせていただく中で『凱旋門賞を勝ちたいんだ』ということを常に仰っているので。日本調教馬が凱旋門賞を勝つというのは、日本競馬界の悲願ですし、もし運が向くなら、どんな形でも携われたらいいなと思っています」
国内なら日本ダービー。
「一度しかないチャンスで、その世代の頂点を掴み取るというのは、すごくドラマがありますよね」
有馬記念、ジャパンカップ、天皇賞。大きなレースはいくつもある中で、
「国内で言うとやっぱりダービーですね」
と話していた。
野球界ではソフトバンクホークスの柳田悠岐さんも馬主として競馬に関わっている。その存在について聞くと、
「もちろん、結果は存じ上げています。『何々が勝ったんだな』とか『これくらいの馬を買ったんだ、すごいな』と思います」
では、ライバル意識はあるのか。
「対抗できるとは正直思っていなくて(笑)。本当に、これはマジな話なんですけど、個人馬主として柳田さんに対抗できるとは思っていないです」
それでも、
「馬主の世界って共有とかいろんな形があると思うので、憧れとして『いつかそこでも勝負してみたい』という気持ちはあります」
と続けた。
同じレースに「柳田悠岐の馬」と「藤浪晋太郎の馬」が出てきたら、それだけでも面白い。
そんな話をしているうちに、藤浪さんからこんな言葉も出てきた。
「本当に今すぐにでも馬主資格を取って勝負したい気持ちはあります」
冗談半分で「12月末の締め切りに向けて申請するということでいいですか?」と聞くと、
「いや、でも本当にやりたいと思っています。これは軽い気持ちじゃなくて、人生そんなに長くないし、やれることは若いうちにやりたいなと思っているので」
と返ってきた。
この言葉を聞くと、「競馬が好き」という言葉だけでは収まらない気がする。
もちろん今はプロ野球選手としてマウンドに立っている。その一方で、競馬場では一人のファンとしてレースを見て、馬券を買い、一口馬主として馬を応援する。そして、その先には自分で馬を持ちたいという思いもある。
僕は藤浪晋太郎という人が好きだ。
野球選手だからというだけではない。食事をしながら冗談を言っている時も、競馬の話をしている時も、マウンドに立っている時も、それぞれ違う藤浪さんがいる。
僕らの出会いは競馬だった。そして藤浪さんと出会ったことで、野球をほとんど見なかった僕が野球を見るようになった。
いつか「藤浪晋太郎オーナー」の馬が競馬場を走る日が来たら、その時は僕もきっと見に行く。その前に、まずは藤浪さんが投げる試合を球場で見たい。
会ったらまた、いつものように聞くと思う。
「藤浪さん、またデカくなりました?」