違う世界を生きている
「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
単なるスポーツカーブランドを超えて
「M1をミルトン・キーンズで降りるとニューポート・パグネルの標識がある。先方には伝えてあるからAカメラマンと行ってきたまえ」
その場でスラスラと地図と電話番号を紙に書いて小林さんはこう言った。「ああ、ホテルは工場のすぐ裏に古いけれどいいところがあるよ」。まだパソコン通信もあまり普及していない1980年代末のことである。失礼ながら普段の小林さんは方向音痴といってもよかったが、自分に関わりのある場所の記憶はまさに手のひらを指すように正確だった。まだ新米の編集部員とカメラマンはその地図を握りしめて、発表されたばかりの「ヴィラージュ」の試乗に向かったのである。
当時すでにアストンマーティンはフォードグループ入りしていたが、引き続きヴィクター・ゴーントレットが会長を務めていた。現在のアストンマーティンはご存じローレンス・ストロール率いる企業連合の傘下にあり、F1やWECに参戦しているばかりでなく、ラグジュアリースポーツカーとハイパーカーを核にしてライフスタイル全般にまでビジネスを拡大している(フロリダにはその名を冠したコンドミニアムもある)。最新型アストンに乗るたびにかつてのアストンマーティンのことを思い出してしまうのは、あまりにも見事なその復活ゆえだろう。...