「上司も部下も、社会人全員が一度は読むべき本」「被害者や加害者にはならないためにもできるだけ多くの人に読んでほしい」と話題沸騰中の本がある。『それ、パワハラですよ?』(著者・梅澤康二/マンガ・若林杏樹)だ。自分はパワハラしない、されないから関係ない、と思っていても、不意打ち的にパワハラに巻き込まれることがある。自分の身を守るためにもぜひ読んでおきたい1冊。今回は特別に本書より一部抜粋・再編集して内容を紹介する。
友だちと約束しているのに、残業しなくちゃダメですか?
【解説】
交際相手とデートの約束がある、友だちと飲み会がある、趣味の集まりがあるなど仕事帰りに私的な用事があるので、定時で仕事を終わらせた。
そういうときに「急ぎの仕事なので今日中に処理してほしい」と残業を指示されれば、ショックを受けて当たり前です。
私的な用事があるのに、これを無視するように残業を指示するのはおかしいのでは、と思うかもしれません。でも、残念ながら、原則として許されるのです。
なぜなら、労働者は雇用契約において「労務を提供する義務」を負っているからです。
その労務提供の義務には、「残業なし」と明示的に合意されていないかぎり、定時を超えて働く義務もふくまれます(36協定が締結されていることが前提です)。
契約上の義務は、「正当な理由」がないかぎり免除されません。
ちなみに、友人や交際相手と約束がある、などの私的な用事は、この「正当な理由」には当たりません。
そういうわけで、今回のケースのような残業指示は正当であり、パワハラには当たらないことになります。
残業が拒否できる場合って?
しかし、労務提供の義務も、もちろん無制限ではありません。
残業を拒否することが可能な、次のようなケースもあります。
1 残業命令自体が違法である
2 残業をする業務上の必要が皆無である
3 社員側に「正当な理由」がある
これらの場合は、残業を拒否することが可能です。もし、1〜3の場合に残業を強いれば、パワハラに該当する可能性はあります。1つずつ見ていきましょう。
1について、職場で36協定が締結・届出がされていないのに、残業を指示する行為はいかなる場合も違法です。
労働者側が36協定が未締結であることを理由に残業を拒否しているのに、これを強制するような行為はパワハラとなりえるでしょう。
また、36協定が締結されていても、そこで定められる上限時間を超えて残業を命じる行為も違法であるため、同様のことがいえるでしょう。
2について、企業側において残業を命じる必要がまったくないにもかかわらず残業を命じる行為も、業務命令権を濫用するものとして、社員側の労務提供義務が否定される可能性はあります。
もっとも、業務上の必要性の有無の判断には、企業側に相当に広い裁量があります。
「業務上の必要がない場合」とは、「誰がどう見ても必要がないことが明らかである」という限定的な場面であることに留意しましょう(社員側で必要がないはずだ、と考えているだけでは、まったく足りないということです)。
残業を拒否できる「正当な理由」とは?
また、3の「正当な理由」とはなんでしょうか。
本人の体調が突然悪くなった、子どもが急病となった、家族が大きな事故に巻きこまれた、というケースは私的なこととはいえ、緊急性が高いものです。
こういったケースは、業務を拒否する正当な理由になりえます。
社員が緊急事態だと説明しているのに、これを無視して残業を強いる行為もパワハラになる可能性があります。
※『それ、パワハラですよ?』では、ハラスメントかどうかがわかりにくい「グレーゾーン事例」を多数紹介。部下も管理職も「ハラスメント問題」から身を守るために読んでおきたい1冊。