企業による新卒社員の獲得競争が激しくなっている。しかし、本当に大切なのは「採用した人材の育成」だろう。そこで参考になるのが『メンタリング・マネジメント』(福島正伸著)だ。「メンタリング」とは、他者を本気にさせ、どんな困難にも挑戦する勇気を与える手法のことで、本書にはメンタリングによる人材育成の手法が書かれている。メインメッセージは「他人を変えたければ、自分を変えれば良い」。自分自身が手本となり、部下や新人を支援することが最も大切なことなのだ。本連載では、本書から抜粋してその要旨をお伝えしていく。
感謝する、感動する
──共に喜びを分かち合う
相手に感謝し、「ありがとうございます。感動しました!」と伝えることで、相手は自分の存在価値を認識し、自信を持って生きることができるようになります。
しかし、他人のことに関して感謝したり、感動したりすることは、普段の生活の中では、なかなかできないかもしれません。
ところが、メンターは相手の何気ない発言やちょっとした行動から、感謝したり、感動したりすることができます。
自分にとってありがたいと思えることを、相手から得ることができたと思った時に感謝することができます。もちろんそれは、精神的なものであってもかまいません。
また、感動するとは、相手の生き方に共感することです。つまり、相手の生き方に、自分の生き方を共鳴させることと言ってもいいでしょう。
ですから、結果がどうであるかよりも、むしろその過程を共有することで、感動することができるようになります。
そのためには、「どれだけのことができたか」よりも、「どれだけ、できなかったことが、できるようになったか」「どのような姿勢で取り組んできたか」「何を大切にして生きているか」を把握しなければなりません。
どれだけ当たり前のことに感謝することができるか、どれだけわずかなことに感動することができるか、そこではメンターの感性が問われます。
委任する
──相手の判断で自由にやらせる
目標と期限を明確にして、その上ですべてを相手に任せることを、委任と言います。
そして任せるということは、たとえうまくいかなかったとしても、そのことを相手のせいにせずに受け入れることです。
「任せる以上は、うまくいくことを保証せよ」というものではありません。
失敗してはいけないから、できるようになるまで任せない、というのではなく、メンターはどんどん相手に任せていきます。
この場合、はじめは小さなことから任せ、次第に大きなことを任せるようにしていくようにしましょう。
やらせてみせて、自分で体験を積み重ねさせるのです。失敗してもかまいません。
大切なことは、失敗した時に、それをどのように受け止め、次にそれをどのように活かしていけばいいのかを、まず自分が見せて、そして教えていくことです。
そうすることで、相手はどんな失敗があったとしても、それを糧にして成長し続けていく「自立型の人材」になっていくことができます。
もちろんこの時、失敗は何でも容認するわけではありません。
お客様に迷惑がかかるような失敗や、多大な損失が出るような失敗は避けるように、最大限の対策をした上で任せるようにしましょう。