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教養を「知っているだけの人」と「使いこなす人」決定的な差


国際社会へ出ていくと「教養が大事」とよく言われる。教養がなければ、世界の人たちと世間話もできない。そんな話も耳にします。しかし、一言で「教養」と言っても、何を知り、何を語れるようになっていればいいのかイマイチよくわからない。今回は、そんな疑問を『ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』の著者であり、外交官としても活躍された山中俊之さんに話を聞いた。山中さんは世界96カ国に滞在した経験を持ち、さまざまな国や地域の人とも渡り合ってきた。そのなかには、自分の知識や教養が不十分で「ヒヤリ」とした経験もあると言う。そんな生々しい話も含めて、「日本人に求められる教養」について語ってもらった。(取材・構成/イイダテツヤ)

「最低限の教養」のレベル感とは?

――国際社会でビジネスをしたり、コミュニケーションをとるときに「教養が必要」とよく言われるのですが、日本人が持っておくべき「最低限の教養」と言うと、どんなものになるんでしょうか。

山中俊之(以下、山中):まず、ごく当たり前のところで相手の国名を聞いて「あれ、どんな国だっけ?」となった瞬間にその人との関係はほぼ終わると思います。

「国名そのものがわからない」ことはなかなかないと思いますが、世界には似ている国名もありますから、「モルドバとモルディブ」とか「アルジェリアとナイジェリア」など一瞬「あれ、どっちだっけな?」と思うことはあります。

「1対1」で相手国の人と話しているときはまだいいのですが、外交の現場では複数の国、それこそ10カ国、20カ国で話すこともあるので、一瞬混同してしまうんですよ。

ある国の人が普通に英語で話しているのでネイティブだと思っていたら「たしか、あの国はフランスの植民地だったから公用語はフランス語だっけ?」なんてことを話した後に気づいたりもします。

そうしたことで関係が崩れてしまうこともあるので、注意が必要です。アフリカの国のなかには公用語が変わっているところもありますから。

また私の経験で言えば、ヨーロッパにアルバニアという国があって、ここはイスラム教の人が多いのですが、そのことを一瞬失念していて青ざめたこともあります。

「イランはアラブ諸国のひとつ」ではない

――基本的なことを知らないために、大きな失敗やトラブルになることも多そうですね。

山中:それは本当に多いです。たとえば日本人には「イランはアラブ諸国のひとつ」と思っている人がけっこういますよね。イランとアラブを混同して話した瞬間、そこでのやりとりは十中八九うまくいかないでしょう。

そもそもアラブ人とは「アラビア語を母国語として話す人」という意味なので、中東でもアラビア語を話さないイラン、トルコ、アフガニスタンはアラブではありません。

イランは特に混同されやすいですが、イランの人たちはアラブ人とは違うインド・ヨーロッパ系の民族です。

実際、イランの人たちには「自分たちは古代ギリシャ時代からの大帝国であったペルシャの末裔。イスラムが生まれるはるか昔からある歴史ある民族だ」というプライドがあります。

ちょっと大げさかもしれないですが、「イラン人に『アラブの一部ですよね』なんて言った瞬間、口をきいてくれなくなる」と私は思っています。

そういった国民感情、民族感情を理解しておくのは、教養以前の問題ですが、国際社会で交流するためには必要です。

2019年に刊行された『ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』にも書いたのですが、以前私はアゼルバイジャンで講演する機会がありました。

最初に私はロシアのバレエの話をしようと考えていたんです。アゼルバイジャンはロシアに近く、かつてはソビエト連邦の一部でしたからロシア文化の影響も大きく受けています。たまたま私がロシアのバレエが好きだったので、導入のトークとしてはもってこいだと思ったのです。

でも、直前になって「いや、待てよ」と思い直しました。旧ソ連の一部だった国々の多くはロシアを嫌っています。アゼルバイジャンの文化についてはそれほど詳しくなかったのですが、国民の多くはトルコ系、イスラム教徒だということは知っていました。

そこで私は「アッサラーム・アライクム」(あなたの上に平和を)というイスラム教徒なら誰でも通じる挨拶をアラビア語でしました。これで一気に会場の雰囲気がよくなりました。

本当のちょっとした瞬間の出来事ですが、知識や教養を持っているかどうかで相手との関係が大きく変わってしまうことは国際社会ではよくあることです。

外国人は「日本のどこ」に関心があるか?

――海外の人と話していて「よく話題になるテーマ」と言えば、どんなものが挙げられますか。

山中:たとえば、イギリスだとシェイクスピアの話題がよく上りますよね。30年ほど前、イギリスへ留学していた際に、シェイクスピアの話題になったことがありました。

一応いくつかの演目は観たことがありましたが、やっぱり知識が浅いんですよね。良いコミュニケーションがとれませんでした。相手も若気の至りとして笑い流してくれたと思いますが、そのあたりの話題をしっかり話すにはけっこうな教養が必要になってきます。

それと、日本人であれば日本のこともよく聞かれるので、そこはしっかりと答えられるようにしておくことは大切ですね。

――「日本のこと」というと、どんなことがよく聞かれるんですか。

山中:歴史から、芸術文化、経済情勢、政治体制などいろんなことを聞かれますから、幅広く答えられることがまず大切だと思います。

私の経験では「どうして経済発展したのか」という話がよく聞かれました。アジアの隅っこにある国で、ずっと鎖国をしていたのに、明治以降の数十年で経済大国になった。なぜ日本だけがそんなに急激に経済成長したのかという話は何度も聞かれました。

そのあたりを端的に答えるのはむずかしいですが、やはり説明できるくらいの知識や意見を備えておくことは必要だと感じます。

それと天皇制についてもよく聞かれます。答えにくいテーマでもあるんですが、天皇制はどのくらい続いているのか、どんな制度なのか、なぜ日本では続いているのか、日本国民は天皇のことをどう思っているのかなど、じつにさまざまな質問が飛んできます。

――そのあたりの話についても、自分なりにきちんと答えられるようにしておかなければいけないんですね。

山中:天皇制に関しては「なぜ男性だけなのか」ということもよく聞かれます。実際には女性天皇もいたわけですが、そういうことも正確に知った上で答えないといけません。

天皇制から派生して「日本は女性の地位が低い」という問題について意見や考えを求められることもよくあります。どうしてそういう状況になっているのか、それをどう変えていけばいいと思っているのか。

そんなことを聞かれたときにも、自分なりの思いや考えを述べられるようでなければ、十分なコミュニケーションやディスカッションができないケースがありますね。

知識だけでなく「つながり」を語れるかどうかがカギ

――こうしてお話を聞いていると、知識もたくさん必要だけれど、知識を蓄えるだけでは十分でないようにも感じます。実際、身につけた教養を国際社会の場で生かせる人と、そうでない人には、どんな違いがあると山中さんは感じますか。

山中:そうですね。たしかに知識だけでなく、どうやって「つなげていけるか」「つなげる力」みたいなものが必要だと感じます。

――それはどういうことですか。

山中:たとえば、ロシアの芸術文化についてとか、歴史について知識を増やすことはできると思うんです。

でも、そうした芸術文化が今のロシアの人たちにどんな影響を及ぼしているかとか、あるいは、ロシアの歴史的な背景を踏まえて、ロシアという国がどんな国民性になっているかとか、リーダーに対してどんな思いを持っているのか。ひいては、ロシアとウクライナの情勢にどんな影響を及ぼしているのか。そんなつながりを考えることができたり、考察できる人はやはり教養が高いと感じます。

逆に、これができないとせっかく学んだことが活かしきれないと思います。

だからこそ、私も『ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』を書くときには、単なる知識を語るのではなく、そこから見えてくるストーリーであるとか、現代の情勢にどうつながっているのかを意識しました。

それこそが国際社会で生きる教養だと私は思っています。

【大好評連載】
第1回【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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