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(更新: ORICON NEWS

宮藤官九郎『“当たり前”という言葉が嫌い』

2013年、お茶の間で『あまちゃん』がアイドルを目指していた頃、映画館の暗闇では、SMAP草g剛扮するアナーキーなヒーローに憧れた『中学生円山』こと中2男子・円山克也が、妄想真っただなかで孤軍奮闘していた!? 宮藤官九郎監督第3作『中学生円山』待望のDVD化を記念して、本作の魅力を再び!!

映画を観るたびに「間違ってない!」と思えた

――昨年5月の公開当時には、前2作以上に宮藤監督の覚悟が感じられたのですが、公開後、どんな反応が届きましたか?
宮藤観客にどう届いたのかは正直よくわかりませんが、自分の映画をこんなに何度も映画館で観たのは初めてでした。お客さんと一緒に観ながら「ここで笑うんだ」とか「ここはピンと来ないんだ」とか気づきました。そんな小さなことも含めて、ちょっとした不満はあるけれども「この映画、やって良かったな」と思いました。完全にお客さんに届いた! という手応えを感じたのは、韓国で上映したときです。最初っからずっと笑いっぱなしで観てくれて。韓国のお客さんの反応がダイレクトで「あ、届いてる!」って。上映後のティーチインでも核心をつく質問が多くて「あぁ、笑ってるだけじゃなかったんだ!!」と。草gくんと一緒に行ったから、あんなに受けたんだと思いますが(笑)。公開して改めて感じたのは、下ネタだと日本人はみんなで映画館に行かないんだなってことですね(笑)。でも僕自身は、映画を観るたびになぜか「俺は間違ってない!」と思えた。それは不思議な感覚でした。

――たしかにど真ん中に下ネタがあるものの、青春ありLOVEあり、アクションに韓流メロドラマ!? 笑いも涙もてんこ盛りの、宮藤監督にしか描けない世界。未見の方はぜひDVDで堪能していただきたいものです!
宮藤脚本家として依頼を受け、監督やプロデューサーの期待に応える形で(映画に)携わるときとは違って、監督として関わる映画には、言葉にできないものが詰まっているぶん、自分のパーソナルな部分がより強く出ていると思います。これまで撮った3本とも、脚本を読んだ役者さんから「よくわからない」って言われることが多かったけど(笑)脚本の段階でわからなくても、映画になったときにわかってもらえればいいわけで。先日DVD特典の音声コメンタリー収録で、坂井真紀さん、仲村トオルさんと一緒に本編を観る機会があったんですけど、ふたりしてしみじみと「おもしろい映画だったんですね!」「脚本を読んだときはここまでおもしろいとは思わなかった。正直、わからないところがあった」と言われて、なるほどそうだったんだって(笑)。本当はデカいスクリーンで観てほしかったんですけど、DVDなら気に入ったシーンを何度も観たりすることもできるので、そういう意味ではより楽しんでもらえるんじゃないかと思います。

自分で全部やってみたくなる(笑)

――本作で妄想劇のテンションを高めたのが、向井秀徳の音楽。向井の曲が効いた前作『少年メリケンサック』との2本立ても、個人的にオススメです。音楽もステキですけど(本作に)パンク爺役で出演し、圧倒的なパフォーマンス&小さなラブロマンスを披露したエンケンこと遠藤賢司氏が絶賛する、宮藤監督の言葉の力も冴えわたっています。改めまして、思考停止に陥りがちな大人に対して、本作の惹句「考えない大人になるくらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」に込められた思いとは?
宮藤昔から「当たり前」って言葉が嫌いなんです。「これはこうで当たり前」と言われると「ホントに?」って疑ってしまう。当たり前と思わずに考えていくと、壁が動くというのか、何かが見えてくるような気がする。世の中が便利になって、いろいろなものがあふれる一方で、好奇心がなくなっているような感じがあって。自分の手の届くところしか見ていないし、自分が知らないことは「マイナーなんだろ?」と切り捨ててしまう世の中の雰囲気には、ものすごく反発を覚えますね。でも自分も時々考えない大人になっていて。子どもが疑問に思ったことを適当に流しちゃったときとか、大人とか子どもとか以前に“今のは良くなかったな”と反省することがあります。子どもに「何で?」って聞かれて、時間がないとか理由はなんであれ、ちゃんと説明しない自分って、考えることを止めてしまっているんじゃないのかって。

――本作が下ネタに終始していないことを、重ねて力説したい! 最後に『中学生円山』のヒーローや『あまちゃん』のアイドルなど、子どもたちが憧れるヒーローやアイドルとは、妄想もとい想像力をかき立て肯定してくれる大事な存在。いまの宮藤さんにとって、ヒーローとは?
宮藤自分にはない発想を持っている人に憧れますね。僕の場合は、その人を見ているだけで嬉しい! というのではなく、自分もやってみたい!! って方向に喜びを見出していくので、妄想とはちょっと違うんですが。例えばカッコいいバンドを見たら、俺もやりたいって思う。おもしろいものに出会うと、このCGはどうやって作るんだろう? とか、その仕組みがどんどん知りたくなる。グッズを集めたいとかその人を見ていたいのではなくて、最終的に自分で全部やってみたくなるんです(笑)。最近会った人のなかでいちばん衝撃を受けたのは、ポン・ジュノ監督。なんでこんな映画(2月7日公開予定の『スノーピアサー』)が撮れるのか、いろいろと聞いてみたけど、結局よくわかりませんでした(笑)。予想を裏切る、見た目のデカさからして憧れましたね。いやーすごい人でした!
(文:石村加奈)

『中学生円山』ブルーレイ&DVD


 団地と学校を往復するだけの中学2年生の円山克也。思春期真っ盛りの克也は、頭の中ではエロいことばかり考え、ある目的のために自主トレと称して身体を柔らかくする努力をしている。ついに、限界まで背骨を折り曲げて妄想の世界にトリップするようになってしまう。
 その頃、上の階に下井辰夫という男が引っ越してくる。シングルファーザーで、妙に団地の主婦たちの間に溶け込んでいる。そんなある日、団地の近所で殺人事件が起こり、克也は謎が多い下井が殺し屋ではないかという妄想に取りつかれてしまう……。

監督:宮藤官九郎
出演:草なぎ剛 平岡拓真 遠藤賢司 ヤン・イクチュン

【ブルーレイ&DVD詳細はコチラ】
2014年1月15日ブルーレイ&DVD発売
(C)2013「中学生円山」製作委員会

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