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上戸彩『器用になることなく…気持ちに集中することを大切に』
身の引き締まる思いがしました
上戸今年は、明るく元気なイメージを裏切るような、意外性のある役どころに引かれた年でした。『武士の献立』の春も、時代劇らしからぬキャラの立った女性像が新鮮で。時代劇というと、男性の三歩後ろを歩くような女性像が浮かびますが、春は言いたいことはきちんと言い、男性に逆らったり、引っ張ったりする女性。旦那様に包丁勝負で発破をかけるシーンの撮影では「新しい時代劇を作っているんだ!」という緊張感に、身の引き締まる思いがしました。
――『あずみ2』以来、8年ぶりに訪れた京都の松竹撮影所では、懐かしいスタッフとの再会が刺激になったとか?
上戸10代のころにお世話になったスタッフの方々が大勢参加してくださって、すごく心強かったです。京都の撮影所には独特の雰囲気があって、それぞれの持ち場が納得できるまでみんなで待ってくれるし、ほかの現場ではちょっとありえないことですが、専門の垣根を越えてダメ出しし合っても、決してケンカにはならない。まさに家族のような雰囲気の現場で「映画っていいな」と感じました。スタッフの方々の情熱に刺激を受け、改めて女優として、これからも器用になることなく、役の気持ちに集中することを大切にしていきたいと思いました。みなさん、時代劇が専門の辛口の方ばかりですが(笑)撮影が終わったとき「もっと時代劇に出てほしい」と言っていただけて、本当にうれしかったです。
――『釣りバカ日誌』シリーズの後期を担った朝原雄三監督の味わい深い演出で、モダンなヒロインの魅力がさわやかに描かれた、新感覚の時代劇に仕上がりましたね。
上戸監督もスタッフの方々と同じく辛口の(笑)「悪いものをいい」とは絶対に言わない方なので、信頼していました。滅多に「いい!」とも言わない監督で、唯一ちゃんと誉められたのは、春が安信を守りたい一心で行動するクライマックスのシーンでしたね。台本を読んでいて自然と涙がこぼれた、私にとっても思い入れのある場面でした。現場で監督から、台本に書かれていたふたつの台詞を「ひとつに絞ってシンプルに伝えた方がいいと思うんだけど?」と言われて変えてみたら、すごく気持ちが入りやすくなって。やっぱり現場の雰囲気で感情って変わるものだから、新鮮に演じることができてありがたかったです。
シンプルな風通しのいい一年にしたい
上戸夫の秘密を知ってしまい、寝つけない春が夜中にいとこ煮を作るシーンは、心にしみました。普通なら、翌朝なにも知らない家族が食べて「今日のカボチャは何だかしょっぱいわね」「おいしくないね」って流れになりそうなところを、(この映画では)「いつもよりほっこりしていて、おいしい!」となる。あんなに切ない気持ちで作ったのに、いつも以上においしいものを作っちゃった!! という春の良さと、この映画の温かさのよく出た大事なシーンだと思います。撮影のときも、春ならきっと何も言わず、にこーっとして座っているのだろうなと思い、わざとらしい芝居は止めたんです。それだけで十分切なく、哀しいので。
――長年、主役を張ってきた経験に裏打ちされた安定感と、育まれた感受性の豊かさが、伝統のある時代劇に新たな一筋の光をもたらしました。役と重なり合うように、何事にも一生懸命でひたむきな上戸さんを支えるおふくろの味は?
上戸風邪をひいたとき、よく母が作ってくれたとろろスープです。すったとろろに卵の黄身を混ぜたものを、だし汁に落として、刻んだネギを乗せるという簡単なメニューなのですが、ごはんにかけるとさらさらっと食べられて、すごく元気が出るんです。このあいだ体調を崩したときも、母が用意してくれていて! 感激して、食べたらすぐ治りました(笑)。
――最後に、充実した2013年を経て2014年の抱負を聞かせてください!
上戸来年のテーマは“シンプル”です。もともと心のストレスはあまり溜まらないタイプですが、考えてもムダなことっていっぱいあるから、あまり深く考え込まずに風まかせでいこう! くらいの大らかな気持ちでいたいなって(笑)。心に捕らわれるのではなく、むしろ体のストレスを溜めないようにした方がいいような気もするんです。マッサージに行って体がリラックスすると、なんだか幸せな気分になれるじゃないですか? 体がすっきりすれば、心も軽くなる。そんなシンプルな風通しのいい一年にしたいですね。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:鈴木一なり)
映画『武士の献立』
関連リンク
・夫婦愛と家族の絆を描く映画予告編
・映画『武士の献立』公式サイト