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【『Gyutto(ギュット)】髪の“うねり戻り”に朗報、SNSの“裏ワザ”がヒントに? 『デオコ』開発者が挑んだ業界の常識

髪のうねりに悩む女性は多い(写真はイメージ)

髪のうねりに悩む女性は多い(写真はイメージ)

 最近、SNSでは商品の“意外な使い方”が拡散され、メーカー側が注意喚起を行う事例が増えている。注目は浴びても、意図しない使用法は思わぬ影響や危険を生む可能性があるため、メーカーとしては悩ましいところだ。だがそんな中、“ユニークなクチコミ”をあえて大真面目に受け止め、大ヒットへと繋げた異色の企業があった。ヘアケアのヒットブランド『Gyutto(ギュット)』新作開発の舞台裏に迫る。

『肌ラボは髪にもいい?』意外な噂がヒントに、ヒットシリーズ第2弾誕生の背景

  • ヒット作『ギュット コルセットヘアマスク』

    ヒット作『ギュット コルセットヘアマスク』

 昨年発売され、「日経TRENDY×日経Woman 2025コスメ大賞(ヘアケア部門)」を受賞したロート製薬『ギュット コルセットヘアマスク』(外部サイト)。発売直後から大きな反響を得て、計画比の4倍もの販売数を達成し、幅広い年代から支持を得た。そしてこのほど、同ブランドから『ギュット コルセットヘアミルク』(外部サイト)が発表された。

 このヘアミルク誕生のきっかけは、同社の営業部がSNSや店頭などで見つけた、とあるクチコミだったという。「スキンケア商品の『肌ラボ』を髪に塗ると、なぜか髪が自然に落ち着いて指通りがよくなる」という声が、1人だけではなく複数から上がっていたというのだ。だが、なぜそんな変化が起きるのか? 開発部の平塚裕実さんは、「営業部から、『本当に髪にいいんですか?』『髪の何にいいんですか?』と聞かれたものの、科学的なロジックを説明できなかった」と当時を振り返り、苦笑いする。

 もちろん、商品ごとに指定された用法・用量を守ることは大原則。ロート製薬も、本来の用途と異なる使い方では安全性を保証できないため、注意喚起を行ってきた。しかし『肌ラボ』に関しては、ヒアルロン酸をキー成分とする化粧水であり、「全身に使える」ことを公式HPで謳ってもいた。

 とはいえ、メーカーが想定していたのはあくまで保湿目的で、指通りがよくなるとは思ってもいなかったそう。それでも、SNSの噂を単にスルーするのではなく、「説明がつかないからこそ、うやむやにしてはいけない。実験してみよう!」と、開発陣の研究魂に一気に火が付いたという。

まさに“棚ボタ”的な超展開、ユーザーの声が業界の常識を覆すきっかけに

  • うねり悩みが高い30〜60代女性の82%が、日中の“うねり戻り”を実感(ロート製薬による調査)

    うねり悩みが高い30〜60代女性の82%が、日中の“うねり戻り”を実感(ロート製薬による調査)

 そもそも、「髪の毛自体にはヒアルロン酸が存在しないため、ヘアケア研究においてヒアルロン酸は完全にノーマーク」というのが業界の“常識”。さらに「一般的なヒアルロン酸は分子量が大きく、髪の内部には浸透しない」という科学的な認識もあった。そのため、「髪の内部に浸透し、髪に影響を与えるわけがない」と、それまで開発陣の誰もが考えていたのだ。

 従来の“常識”に挑む研究をスタートする下地となったのが、ヒアルロン酸への強いこだわりだった。目薬の会社として知られる同社は、目の研究を通じて、角膜細胞の自然治癒力を高めるヒアルロン酸に長年着目。2003年頃からはスキンケアにおける作用研究もいち早くスタートさせるなど、独自の知見を積み重ねていたのだ。

 そんな疑問やこだわりから、平塚さんはヒアルロン酸と毛髪の研究に没頭。社内にある分子量や構造の異なるたくさんのヒアルロン酸を集め、毛髪に塗っては乾かす地道な実験を一つずつ繰り返したそうだ。

 ヒアルロン酸は肌に塗ればモチモチするが、髪に塗るとベタつきやすい。その中で「ヒアルロン酸カリウム」という成分が、使用感が良く、ダメージによる髪のうねりを補修することで扱いやすく素直な髪に導く製剤が作れる可能性を持つことが判明。しかし、それを証明する文献はどこにもない。半信半疑だった開発陣は、仙台市にある3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(以下、ナノテラス)へと出向いた。髪がうねる原因や、ヒアルロン酸カリウムが毛髪内部へもたらす効果など、メカニズムの解析に取り組んだという。

 夜を徹した地道な作業だが、平塚さんはその時間を「とても楽しかった」と振り返る。

「誰も解明していない事実を今、自分たちが暴こうとしている。その知りたい欲求がとにかく大きくて、眠さなどよりワクワク感のほうが勝っていました(笑)。あの時間はとてもエキサイティングだったことが強く印象に残っています」

 こうして、ヒアルロン酸カリウムが髪をベタつかせずに内部へ浸透、ユーザーの悩みにアプローチできるメカニズムを確認。そのときの喜びを、平塚さんは「ユーザーのお声は開発陣にとってすごく貴重だと改めて感じました。我々にとってまさかのご意見からメカニズムを解明できたことは、まさに“棚ボタ”でした」と語る。

大ヒット作『デオコ』開発者が再び快挙、「厳しい言葉にこそヒントがある」

 ところで、この執念の研究をリードした平塚さんは、“デオコおじさん”という言葉が生まれるほど大ヒットした女性用体臭ケアブランド『デオコ(DEOCO)』の生みの親でもある。デオコ誕生のきっかけも、男性向けボディソープ『デ・オウ』を使っている女性からの「女性が使ってもいいんですか?」という声だった。「女性も加齢臭対策を求めているのかもしれない」と気づいた平塚さんは、研究を開始。10代から50代までのべ100人以上の女性の体臭を嗅ぎ分け、「女性は年齢とともに甘い香り(ラクトン)が減っていく」という事実を明らかにしたのだ。

「当社では私を含め、各事業部がSNSなどのお客様の声を熱心にキャッチアップしています。商品は発売して終わりではなく、育てていく必要がある。お客様の率直な質問や疑問をヒントに、『それを叶えたい』という気持ちで商品開発をしています」

 実はロート製薬は、70年以上前から目薬にアンケートはがきを封入。当時“当たり前”ではなかったそうした施策により、ユーザーの声を集めてきた伝統がある。「蓋が開けにくい」といった辛口な意見も真摯に受け止め、改良を重ねてきた姿勢は今も受け継がれている。

「厳しい言葉にはショックも受けますが(笑)、そこにこそヒントがあると思っていて。満たされていない部分をどう良くしていくか? 今はSNSなどでダイレクトな声を聞く機会が増えたため、実際の声をより商品づくりに生かせるようになっています」

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