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【My Melody & Kuromi】見里朝希監督×サンリオ対談 マイメロディ&クロミの課題に新たな可能性を提示
「マイメロディとクロミの新しい魅力を…」サンリオが感じていた課題
作品 『My Melody & Kuromi』
『My Melody & Kuromi』は、今年50周年を迎えたマイメロディと、20周年を迎えたクロミを主人公にしたストップモーションアニメ作品。監督は、『PUI PUI モルカー』を手掛けた見里朝希氏、脚本は数々の舞台・映画・テレビ作品で注目される根本宗子氏が担当。マイメロディとクロミが住むマリーランドを舞台に、ふたりが街の運命を揺るがす大事件に立ち向かっていく、1話約13分、全12話のオリジナルストーリーとなっている。
見里朝希 クロミがマイメロディに手を差し伸べたり、手を取り合って協力していく内容に、制作者の自分ですらウルッとしてしまいました。キャラクターをリスペクトしている脚本家・根本宗子さんによる説得力のあるセリフ、これまでにない展開もあって。新しい一面をお見せできた気がします。
山田周平 私は本来、台詞や造形物を確認しなければいけない立場なんですが、観た時には「あっ、動いた! 遂にできた!」っていう感動が大きくて。完全にお客さんとして観てしまいました(笑)。そこから2回、3回と観ていくと、背景でもいろんなキャラクターたちが動いていて、画面の隅々まで一切妥協せずに作ってくださったことを実感しました。
――そもそも、本作はどのような経緯で制作されることに?
山田周平 Netflixからお声がけいただいたのですが、当社としても「マイメロディとクロミの新しい魅力をどれだけ引き出せるか」という課題は感じていたところで。お話を聞いた際、かわいいだけではない、新しい魅力をもっと引き出せたらいいな、と思いました。
『PUI PUI モルカー』の監督にサンリオは期待、里見監督はプレッシャーも感じて…
山田周平 「『PUI PUI モルカー』の監督さんだ!」と驚きました。当時まだ小さかったうちの子どもが、モルカーが大好きで。きっと、言葉だけに頼らない演出ができる技術や知識をお持ちの監督なのだと感じていました。さらに、監督の他の作品にはダークな一面もある。それがマイメロディとクロミに付与されることで、どんなシナジーが生まれるのか期待感がありましたね。
――見里監督はいかがですか? 世界中で愛される有名キャラクターの作品ですが。
見里朝希 そのプレッシャーも大いに感じていましたし、まずはファンの方に納得いただけるようにと考えました。最初、場面をイメージしたイラストを何枚か描いたのですが、中にはマイメロディたちのピンチや挫折、アクションシーンもあって。でも、サンリオさんにお見せしたら意外と好評で、「思った以上にやりたい放題やっていいんだ!」と(笑)。Netflixの企画として、普段できないようなことにも挑戦できる楽しみもありました。
山田周平 めちゃめちゃ良いものが来た!と、すごくワクワクしたのを覚えています。
見里朝希 その時、「かわいい印象が強いからこそ、あえてその殻を破ってほしい」とおっしゃっていて。
山田周平 そうなんです。ただ、新しい一面を…と期待もありながら、ファンの方を裏切ってしまわないかと最初は不安もありました。しかし、監督や脚本家の方をはじめ、クリエイターのみなさんがキャラクターを理解しようと非常に努力してくださっているのが伝わってきて。その中から、「こういう一面を出すのはどうか」と提案してくださったので、とてもありがたかったです。
見里朝希 演出に関しては、好きなようにやらせていただきながらも、キャラクターのイメージを変えてしまうような、今後に影響する内容はあえて入れず。内面の魅力を探る作品にしようと挑みましたね。
“キャラもの”の先入観を裏切る物語、ストップモーションアニメならではの“手作り感”にこだわり
見里朝希 自分がやりたい演出をお渡しして脚本を作っていただいたのですが、根本さんならではの少し毒のあるセリフ作りと今回の世界観がすごくマッチしていて。根本さん自身がマイメロディたちのファンなので、キャラクター性を保って解像度を深めつつ、新しいことに挑戦してくれたと思います。単なる正反対の存在ではない絆の描き方が、より深いものになったなと。
山田周平 「キャラものってこういう感じだよね」という先入観を良い意味で裏切っていて。ドラマ性があるストーリーだなと思いました。
――物語やキャラクターの性格でこだわった部分は?
見里朝希 昨今はコンテンツの消費速度が加速しているので、とにかく視聴者を飽きさせないために、話数ごとにバリエーションを用意しました。また、サンリオの強みは“かわいい”ことだとは思うのですが、それだけでなく、お互いをリスペクトしあう関係性もいいなと思っていて。クロミにとってマイメロディはライバルだとしても、ちゃんとマイメロディのことを尊重している。そんなところに、今作のテーマの一つである“優しさ”が出ているのではないかと思います。
見里朝希 ほとんどが動物をモチーフにしたキャラクターなので、羊毛フェルトという素材で作りました。マイメロディとクロミのずきんの部分は、喜怒哀楽を表現するためにあえて柔らかいシリコンを使っていたり。かつ、マメロディのずきんは布っぽく、クロミはテカっとした質感を目指しました。ちなみに、クロミのずきんに描かれたドクロの表情も、クロミの感情とシンクロさせているんです。コマ撮りの際は、ちゃんと置き換えて撮影をしました。
山田周平 シリコンの尖りが出ないように、いろんな素材や作り方を実験されていて。本当にすごいと思いました。
見里朝希 ストップモーションアニメの魅力の一つは手作り感。噴水の水を全部ビーズで作ったり、煙は綿を使っていたりと、とことん手作り感のあるかわいい絵を目指しました。