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日本一「たばこ税」を還元する街? 地価のお高い東京・港区で“コンビニ内”喫煙所が増えたワケ、条例制定10年の試行錯誤
喫煙所はなくす? 増やす? 訪日観光客への対策には課題も
それから10年。ルールの周知徹底から路上喫煙する区民(在住者・在勤者)は、目に見えて減っている。一方で浮き彫りとなっているのが、年々増えるインバウンドへの対応だ。
「チラシやHP、ホテルに置く観光冊子などでルールの周知に努めているのですが、なかなか行き渡らないのが現状です。国によってはたばこは外で吸うのが“常識”となっているためか、路上喫煙、ポイ捨てが後を断ちません。ただ、外国人の方も『喫煙できる場所がわかればそこで吸う』と回答しています。訪日外国人の多いエリアでは多言語表記の喫煙場所マップの配布を進めています」(港区環境リサイクル支援部 環境課長・佐藤雅紀氏)
外国人だけでなく日本人でも喫煙所がないと我慢ができず、マナー違反を犯す人は出てくるもの。たとえば、企業が敷地内禁煙を打ち出したがために、喫煙する社員が近隣の公園などに溜まってしまう事例もある。そうしたことから、最近ではたばこを吸わない側からも「一概に喫煙所をなくすのは、逆に非喫煙者にも迷惑」「きちんとゾーニングしたほうがいい」という意見も増えた。
地価のお高い港区の特殊な事情、「たばこ税」活用する決断で2023年度7億円投入
「民間がビルの一角に喫煙スペースを確保するのは、家賃の面で大きな負担です。特にコロナ禍には多くのビルが3密回避のため喫煙所を閉鎖しましたが、その間、維持管理に手間や費用がかからなかったためか、コロナ禍が落ち着いてからも喫煙所を復活しないビルもありました」(環境政策係長・渡邉貴之氏)
そこで港区がとった対策が、たばこ税の活用だ。たばこは価格の61.7%%が税金で、2023年度には東京都全体で1244億円のたばこ税収があった(東京都たばこ商業組合連合会調べ)。中でも港区は53億円と23区で4番目に多く、そのうち14%の7億円以上を喫煙所整備などの「みなとタバコルール」の予算に充てている。
なお、同じく喫煙対策に熱心な千代田区のたばこ税収は約39億円で、12%以上を喫煙所設置対策に計上。60億円以上ものたばこ税収を得る区もあるが、路上喫煙対策の推進に充てているのが数%であることもある。
「何に使ってる?」疑問視されるたばこ税、「吸う人にも吸わない人にも還元を」
「たばこ税は目的税ではなく、使い道が自治体の裁量に任される一般財源に充てられます。それだけに『何に使っているのか?』と疑問を持たれる方もいるでしょう。『みなとタバコルール』の推進は、港区がたばこを吸う人にも吸わない人にもしっかりとたばこ税収を還元していることをお伝えするための取り組みでもあります」(佐藤氏)
「みなとタバコルール」の予算は、公共喫煙所の整備費用はもとより、近年注力している既存の喫煙所のパーテーション式から密閉式(コンテナ型、トレーラー型)への転換費用にも充てられている。これにより煙が外に出ることがほぼなくなり、非喫煙者にとって受動喫煙の懸念が軽減される。もちろん、がっつり税金を徴収される喫煙者にとっては、肩身の狭い思いをせずにたばこを吸える環境の整備に還元されれば納得感もあるはずだ。